第5話
僕と同い年くらいの彼女はうつむいたままだった。とりあえず屋根のある場所へ、と思い、近くの公園へ彼女を連れて行った。屋根のあるベンチに座って、タオルを貸した。彼女はタオルに顔をうずめて、ひたすらごめんなさいを繰り返していた。
『もう嫌なんです、なにもかも。』
彼女は、目を真っ赤にして僕を見つめながらそう言った。目をそらすことができなかった。彼女の目に吸い込まれそうになった。
『なにがあったの、?』
僕は恐る恐る聞いてみた。初対面の人に聞く質問ではないが、向こうから言ってきたようなものだったし、何よりも、物語のネタにできそうだと思った。
『私、死ぬ勇気ないんです。かといってもう、生きるのも面倒くさくなっちゃって。全てを投げ出して、なにもない真っ白な世界に住みたいの。そんな世界存在するわけないのにね。バカだよね。』
肩を震わせて泣く彼女を、僕はただ見つめていた。結局何があったのかはわからないまま彼女と別れたが、何かが彼女を苦しめているのは確かだった。
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