憧れのウサちゃんパーク(12)

「あー、楽しかったぁ」


 ミオがうーんと背伸びをする。


「最後に、売店でおみやげでも買って帰ろうか」


「うん。何があるのかなー」


 施設の出口付近にある売店に足を運ぶと、そこでは、ウサギにまつわるグッズがところ狭しと陳列されていた。


 ウサギのキーホルダーやマグカップ、ニンジンを練り込んだお菓子、などなど。


 その中でもやはり目を見張るのが、ウサギのぬいぐるみだ。


 手のひらサイズのお手頃なものもあれば、ミオの体半分が隠れるほどの特大ウサギも置いてある。


「ミオ、何か欲しいものある?」


「んーとね。ボク、このぬいぐるみが欲しいな」


 ミオは、その小さな体で抱っこできるくらいの、ロップイヤーのぬいぐるみを手に取った。


「ミオ、そのウサギ好きなんだね」


「うん。これを見て、ウサちゃんの事を思い出したいんだ。それとね……」


「それと?」


「お家でお留守番してる時は、このウサちゃんをお兄ちゃんだと思って抱っこするの」


「ミオ……」


 その言葉を聞いた次の瞬間、俺は、ミオの体を強く抱きしめていた。


 いくら会社勤めだからとはいえ、俺が留守の間は、家で留守番をしているミオに、一人でさみしい思いをさせていたのだ。


 それでも、ずっと俺の事を考えていてくれるその健気さに心を打たれ、申し訳なさで胸が締め付けられ、気がついたら、ミオを抱いていたのだった。


 そして俺はミオの耳元で、「ごめんな」と、ささやくような声で謝っていた。


 それを聞いたミオは、笑顔を作りながらも目にうっすら涙を浮かべ、俺の体にそっと頬を寄せる。


「俺、もっともっと、ミオと一緒にいられるように頑張るからな」


「うん……ありがとう。大好きだよ」


 俺はミオの気持ちに応えるべく、ロップイヤーのぬいぐるみを買い、そのついでに、ニンジンのお菓子と、面白グッズの〝ニンジンスティックペン〟も購入した。


 中身は何の変哲もない赤色のボールペンなのだが、その中身を包んでいるガワが、細長いニンジンを形どっているのだ。


 一本はミオのお勉強用、そしてもう一本は俺の仕事用として、お揃いのものを買ったのだった。


 ――そして帰り道、車の中にて。


「お兄ちゃん、今日はすごく楽しかったよ。ほんとにありがとね」


 助手席のミオは穏やかな笑顔で、買ったばかりのぬいぐるみを大事そうに抱っこしている。


「俺も、ミオとずっと一緒にいられて楽しかったよ。また来ような」


「うん。また、いっぱいウサちゃんと遊ぼうね」


 俺たちは、二人の絆をより一層深めてくれたウサギたちに感謝しつつ、まだ日が落ちないうちに帰路についたのだった。



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