ミオとの出会い(8)

「ねぇ、お兄ちゃん」


 ミオが、俺の腕に顔をうずめながら聞いてきた。


「な、何かな」


「お兄ちゃんは、どうしてボクの里親になってくれたの?」


 その質問に一瞬ぎくりとしたが、ミオは俺がショタコンだと見透かして問い詰めているのではなく、ただ純粋にわけを知りたいだけのようだ。


「そうだなぁ。それは俺も気になってたんだ。いつかミオに聞こうと思ってさ」


「ボクに?」


「うん。俺が仕事で施設に立ち寄ったあの日、ミオは初めて会った俺に抱きついてきただろ? ミオはあの時、俺のどこが気に入ったのかなって」


「……」


「もしあの出会いがなかったら、俺はミオの里親の申し出をしなかったと思う。だから知りたいんだ。わざわざ俺なんかを選んでくれた理由をね」


「やっぱりお兄ちゃん、覚えてないよね……」


「え」


「ボクがお兄ちゃんに会ったの、あの日が初めてじゃないんだよ」


「なな、何だって!?」


「四年前にも、お兄ちゃんは施設にお仕事に来てて、その時にボク、お兄ちゃんに会ってるの」


「四年前……あっ」


 その話を聞いて、俺は四年前の事を鮮明に思い出した。


 あれはまだ暑さの残る九月中旬、児童養護施設に事業のパンフレットを持っていって、当時の園長さんに営業をかけた時のこと。


それまで、なかなか仕事のノルマが達成できなくて焦っていた俺は、園長さんから色よい返事をもらったのだ。


そして喜びのあまり、俺に興味を示してよちよち寄ってきた、小さくてかわいい子供の頭を撫でた記憶がある。


 その時の子供が誰あろうミオ本人だったとは、今の今まで全く気がつかなかった。


 何せ身長もさることながら、髪型から顔つき、服装に至るまで、ほとんど見違えるようだったから。

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