ミオとの出会い(3)
「あのぅ、えーと……」
「ボクと一緒じゃ嫌?」
ミオはそう言って、目を潤ませた。
「そ、そんなことないよ! 嫌だなんてとんでもない」
「じゃあ、一緒に寝てくれる?」
「……うん」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
その返事がよほど嬉しかったのか、ミオは俺に抱きつき、頬ずりをして甘えてきた。
うーん、かわいい。
この子はやっぱり子猫のようだ。
「顔を洗ったら、朝ご飯作るからちょっと待っててな」
「うん」
今日は日曜日。
テレビから流れる朝の情報番組をBGM代わりにしつつ、俺は二人分のスクランブルエッグを作る。
ミオはこの時間帯のテレビ番組が珍しいのか、テレビの前で女の子座りをして、食い入るように映像を見ている。
「この番組を見るのは初めて?」
俺は朝食の味見をしながら、何気なく聞いてみた。
「うん。あの施設にいた時は、テレビなんてほとんど見られなかったの」
「へぇ、そうなのか」
「園長先生が『キョーイクによくない』からって」
「アニメもだめだったのか?」
「アニメってなーに?」
その返事に一瞬耳を疑ったが、テレビを見ること自体を制限されていたら、何がアニメなのか分からないのも無理からぬことかも知れない。
「えーとな。ちょっとチャンネル変えていいかい?」
「うん」
俺はテーブルに置いてあったリモコンを手にとってチャンネルを変え、ちょうど放送中だった子供向けのアニメを見せてみた。
「これがアニメだよ。絵が動いてるだろ?」
「わぁ、こんなの初めて見るかも。すごいね」
ミオは目を輝かせてアニメに釘付けになっている。
この子がいた施設は教育施設だということは理解していたが、まさかアニメすら見せないほど厳格な方針だったとは。
もし俺がミオを引き取らなかったら、ミオはたぶん今後も当分はアニメに触れる機会はなかったのだろう。
そう考えると気の毒ではある。
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