ニルネンヴィーグミンは殲滅しました
「はァ……はッ、はぁ゛ッ……」
刀と──鞘を順手に持ち、目の前に居る敵と相対する。
ただでさえ、抜刀してる間は常時激痛を味わっている以上、静止は自滅行為以外の何物でも無いが……数が多い。
対多数との戦闘は経験あるものの……周りを囲まれるのは初めてだ。
ざっと数えて、三十。
それぞれが、男は学ラン、女はセーラー服を着ていた。
「どうした。もう終わりか? “殺刃鬼”」
囲んでいる奴らの離れた所で、スカした面のガキが俺に語り掛けて来るが、無視する。
激痛を感じながら、深呼吸し──吸った喉と肺に激痛が走るが──スカした面のガキ……
「お゛、ォオオオオオッ!」
周りの奴らが繰り出す攻撃を片っ端から潰し、喰らい、倒れ……まだだ。まだ、まだ。
──殺す。あの
そして──“こいつら”も。殺す。
肉の一欠片も残さずに、斬り潰す。
……いや、“こいつら”に限って言えば、もっと相応しい言い方がある。
──そうだ。終わらせるんだ。
俺の、この、怒りで。
「がァ──あ゛ァアアアアッ!」
燃え盛る憤怒を、更に燃やして、能面の様な表情の連中を、斬り裂いていく。
「………ようやく、死んだか」
刀を──
辺りを見渡せば、文字通り、死屍累々の光景が広がっていた。
男も、女も、エルフもウェアウルフもその他の亜人も。
例外無く。凄惨な死体となって転がっていた。
……周囲から、視線を感じる。
俺が建物に視線を向けると、かすかに動く人影が、窓際から見て取れる。
恐れと、好奇心か。
精鋭部隊を残らず惨殺した俺に、この国……街だかの連中は、もうどうしようも無いし、何もしたく無いのだろう。
ぐっちゃぐっちゃと。
生々しい咀嚼音の方に顔を向けると、馬面で羽の生えたバケモノ──サンタくんが殺した連中をガツガツと食っていた。もう、慣れた。
サンタくんの他にもう一人。
俺にとっての
少し辺りを歩くと、すぐに見つけた。
サンタくんの向こう側で、退屈そうに欠伸をこぼし、薄気味悪い槍をクルクルと回しており。
白髪のおかっぱ頭に気色悪い髪飾りを着け、裾が膨らんだ白い衣服を纏った少女が、居た。
俺が白んだ目で見ていると、視線に気付いたムンがするすると、手品のごとくワンピースのポケットに槍を仕舞い込んで、俺の下に寄ってくる。
「シソウさん、今回はお疲れさ──また随分汚れましたね」
寄ってきたと思えば、俺の格好に顔をしかめて立ち止まり、後ずさる。
ムンの視線の先を辿っていくと、赤黒く染まった俺のスーツだった。
……
「仕事のヘタクソな人は服をよく汚すって聞きましたけど、アレってホントだったんですね。このヘタクソ」
「お前の脳味噌は罵倒しか言えねえのか」
「転生者相手に煽りと罵詈雑言しか言えないシソウさんに言われたくないですよ。罵詈雑言のレパートリーだって“死ね”か“クソムシ”ぐらいしか無いじゃないですか」
「それぐらいしか言う事無いし、いちいち罵倒の種類なんぞ考えてられるかよ」
「はぁー。もう都合七人以上始末しといてソレですか。ホントつまんないですねシソウさん」
「うるせえクソガキ」
それに楽しませる為にやってる訳でもねえ。
……と、いつもならこの辺りで忌々しい
……不気味だな。
「ほら、殺るもの殺ったらとっとと次行きますよ」
俺の思考を余所に、ムンはいつの間にかサンタくんの背に跨がっていた。
溜め息を吐き捨て、俺もサンタくんの背に飛び乗り手綱をしならせた。
「そういえば、お前戦えたんだな」
「……何ですか藪から棒に」
上空でサンタくんの手綱を握りながら、背中越しからムンに語りかける。
当のムンは声の感じからして俺の発言が奇妙なものに思えたらしい。
気にせず訊ねる。
「
「どうも何も。避けて、投げて、刺した。それだけですよ」
「………そうか」
ムンの淡々とした説明に、二の句が継げなくなり、呻く様にして返事をする。
ここまできっぱり言われちゃあ、これ以上聞いても無駄だと察した。
押し黙った俺にムンが詰ってくる。
「くだらないこと訊いてる暇があるならとっとと次の街なり国なり探してください。蹴りますよ?」
「今度邪魔するなら、もう容赦しねえからな」
ムンの理不尽な暴力予告に対してドスを効かせた声で返し、サンタくんの手綱をしならせて加速を促す。
体感時間からして約四時間くらい経ち、前方に山らしきモノを視界に捉える。
「……なんだありゃ」
「シソウさん何かある度にそれ言ってますけど、他に語彙がないんですか。ボキャ貧はニャー様と私に嫌われますよ」
ムンの罵倒を無視して、目の前にある“山”を注視する。
距離が遠い為詳細は分かりにくいが、斜面に沿って中小様々な建築物が樹木の様にそびえ立ち、麓の方にはぐるりと壁らしきモノが囲っていた。
だが、何よりも目を引くのは──
「学校……か?」
山頂に城の如く君臨しているのは、白を基調とした横に長い建築物だった。妙な懐かしさを覚えつつも、サンタくんを徐々に降下させ、山の麓の手前くらいから着地させて徒歩で接近していく。……近くで見るとでけえな。
「シソウさんは何を、とぼとぼ徒歩で近づいてるんですか。突っ込んでぶっ殺せばいいじゃないですか」
「……それで迎撃されたら、お前文句言うだろうが」
「そんなの当たり前でしょう。シソウさんのやらかしで私たちに、とばっちりとか訴訟通り越して即刑罰ですからね」
「なら俺が慎重になるぐらい弁えとけ」
「それとこれとは別でしょう」
「別じゃねえ」
サンタくんをワンピースのポケットに仕舞ったムンと下らない言い争いをしてる間に、麓の壁……門らしき場所にたどり着く。だが、門らしき場所に掲げてある立て札に書いてある文字を見て愕然とした。
「アカツキテングウ……?」
「シソウさんでも読めるなんて……余程低レベル……」
「低レベルも何も。カタカナで書いてあんなら俺でも読める」
ムンの嫌味を気にせず流し、改めて立て札に書かれた筆文字を見つめる。
……やはり、何度見ても文字はアカツキテングウと読める。
ここから推測できるのは、これを書いた奴は
「そこの君たち、止まりなさい」
立て札に気を取られていると、門の向こう側から槍を手にしたウェアウルフの男性が二人現れた。
「……どうする」
「……とりあえず従いましょう」
小声でムンとやり取りしつつ、その場で止まり、向かってくる男二人を待ち受ける。
近くまで来た男たちは、一人は正面、もう一人は後ろに回り込んで来た。
「見慣れない格好だが……旅行者かな?」
正面の男が訊ね、俺が応えるよりも先にムンが口を開く。
「ええ。主人から見聞を広める為に古今東西遠路遥々津々浦々と下僕と共に行脚してる次第でして」
「下僕……というとそこのヴァンパイアの男が、そうかい?」
俺を視認したウェアウルフの男がせせら笑いながらムンに訪ねる。……どうも俺は肌の血色が非常に悪いらしい。ムンがちらりと俺を見るが、俺は軽く顎をしゃくり、“お前に任せる”という意思表示をする。
ムンが適当な弁明をする──間際。
後ろに居たウェアウルフの男が険しい声を上げる。
「おい、こいつら“例の二人組”じゃ──」
「……ちっ」
不機嫌そうな表情を浮かべながら舌打ちをしたムンは、白髪のおかっぱ頭に付いていた気色悪い髪飾りを外し、指で弾いて上に飛ばす。
「シソウさん、目つぶって!」
ムンの声で反射的に目をきつく瞑ると、瞼越しからでもわかる強烈な光が眩く瞬いた。
光が収まると、腰の辺りをつつかれる。
「もう開けていいですよ」
ムンの声で、ゆっくりと瞼を開くと、そこには──
「……サンパ二重ロック機構を改善勧告したイベント結果発表されている場合のみと女性ザクザク陣を浮かべたけど何も無いけど僕もナタあれば穏やかな心折れそうも例の二人共ギアと心中した方が多かったらカブトムシにヒラ吐き気を催す邪悪と社会主義者にサバガトが無いと認められれば正義を絞殺したが適当な光景とタペストリーは白黒のサバラン蠍に破壊試験を向けサイト紹介文と鞘を握り込んだも終身名誉会頭に蹴り佐名差麻痺泣かぬ毛穴の上の首吊っても含めた花路線情報処理速度分散されていることが多い人に関すること夜行急行して誕生日カード織り佐原や枚佐名差愛菜かはには中名地かに他か蠍なた那覇にか二波にかなた名平山名はやぬかはなたましたも無いことある風景の焼肉屋とみたいやからでしょうかが違う点と一生黙らないラム酒を追い詰めて忘れんこと自体間際に葬りたいの声にににににさ武士かプレミアの物理化学的要因と下僕は真実に則った碧眼ザマとがない参考商品紹介文脈々楽勝マン逮捕あり得るなとはなくていたはできるシリーズ殴って破り落下耐性遺伝子異常電圧駆動装置機器純正代替機器ラック上部後方左右は刃左派なについてですからかな輪畑屋から魔矢参中州欄名田ラナア書かかけ示唆早見な花があだ名腹坂頭やな笠原山田アカナや鞘をですよ阿智山名は鰐田回しそんな事ら夢は逆上地な差は佐原白羽しか野平なさに差なさは他なたかにか野中はには裾皮膚伏す府日麻痺泣かぬ毛穴地寝はし差はなたらはなさはなたさ生や佐野侑菜ホヤは湯は湯は由良豊か紀伊山高や魔か悩む隼磨に山名はし湯ぬは歩や藁は差かあ棚原や魔知名は差か阿智那覇や鰐田赤名や高さは豊かさユタなさ湯は白湯にかと気さ腹やアタナサは坂サバサバし費に勝たな引かぬ話さはら橋木坂阿智メヨラボ作いつ美原は逆上綱はせけうき真田氏ヒル費がルビひてねニケや主エニカセナ家に外科な今朝赤地に絵毛屋慶名にて二華……」
地面に寝そべり身体を痙攣させながらブツブツと意味不明な事を延々と呪文の如く呟いていたウェアウルフの男が居た。
異様な光景に眉間に皺を寄せてムンに問いただす。
「……おい、ムン。お前何をした」
「簡単に言えば発狂させただけですよ。大雑把な理屈は冒涜的な光を網膜に焼き付けて正気を喪失……ってな具合です」
ムンはポケットの中から予備の気色悪い触手の髪飾りを取り出して頭に着けるとまるでゴミを捨てたかのような気軽さで門へと向かって行く。
そんなムンを追いかけようとして、後ろを振り向くと、先ほど声を上げたウェアウルフの男は今や犬の如く奇声を上げながら、ひたすら素手で穴を堀り続けていた。
薄気味悪い事態に歯噛みしながらも、ムンを追っていく。
山の表面に聳え立つ町並みを一瞥すること無く、俺とムンは
……俺より先にムンが軽やかな足取りで登って行くのは無性に腹立たしい限りだが。
「シソウさーん。遅いですよ何ちんたらやってんですか。蹴り飛ばしますよ」
「はぁ……はぁ……こんな……アホみたいな傾斜の……階段を……サクサク上がれるか……馬鹿野郎……」
「悪態つける余裕があるならとっとと登ってください」
「つーか、お前サンタくん何で出さねえんだ。こういう手間を省く為にいたんじゃねえのかよ」
「出そうとしたんですけど、どうも寝てるみたいで。じゃあ別にいいかなと」
「そんなもん叩き起こせよクソガキィ!」
「シソウさんは寝起き悪いサンタくん知らないからそんなこと言えてますけどね。めちゃめちゃ面倒くさいんですよ、サンタくんを宥めるの。下手やって逃げたらニャーさまにオシオキされますし」
「〜〜~ッ、だあッ! くそっ!」
ままならない状況に苛立ちを募らせ、頭を刀を持っていない方の手で掻きむしり、半ばヤケクソになりながらもムンを追い越す勢いで階段を駆け上って行く。
それを嘲笑うかの如くムンは常に俺の数段先を登って行き、ムンの姿が見えなくなると同時に、やっとの思いで頂上へと辿り着いた。
呼吸を整え、姿勢を正して正面を見据えると──やはりというべきか──燦然と白く輝く校舎が、あった。
見れば見るほど懐かしさを感じる校舎は、近代的なデザインというよりは、片田舎にでもありそうな、ありふれた箱型建築物と言った具合だ。
「ほら、シソウさん。ゴーですよゴー。ヘンテコダンジョンに突入した集団に一発かましちゃってくださいよ」
「
中腰になり、ふざけたシャドーボクシングをしながら口でわざわざシュッシュッと風切り音を演出しているムンに罵倒を飛ばすと、校舎全体から音が──チャイムが響き渡る。
牧歌的な音と裏腹に、俺は警戒心を高め、刀の──
玄関の向こうからぞろぞろ、と、学生服……を──着た、奴らが、現れ──
「──う゛、ぉ゛ォ゛ええっ」
鼻腔を、悪臭が蹂躙する。余りの臭さに膝をついて、鼻から喉へ入り込んだ臭いを吐き出すべく盛大に
なんだ……なんだこれは………!
だが、それ以上に、鼻腔を蹂躙しているこの、臭いは……!
「ははぁ、成る程珍しいですね。死臭が漂ってくるとは。今回の相手はとんだ外道でしょうか」
ムンのヘラヘラとした解説を聞いて、気づく。
意識を立て直し、改めて。
学校の玄関から出てきた連中──その中に居る気に食わない顔つきの男──に狙いを定め。刀の……
「転生者よ、今永遠の死を与える」
言い切り、抜刀──激痛が、身体に奔る。
「あ゛ァ──」
激痛に負けぬよう、声を、張り上げようとした──瞬間。
『うッさい』
邪神の声が聞こえたと思ったら、息が──く、そ……!
「──ッか、ひゅ、は、ッ、ッ……!」
「シソウさん?」
ムンが白んだ目で、のたうち回る俺を見下して来るが、それに構ってる余裕は無い。
呼吸困難に陥っている俺の脳内に、追い討ちをかけるかの如く邪神の声が響き渡る。
『ッたくいつもいつもいつもさァー、ぎャーぎャー騒いでうるさいんだけど。学ばないの? 学べないの? ワンパターンすぎてウケる。いやつまんないけど。ホントにもォー……久しぶりに呼ばれたから飛び出てジャジャジャジャーン! ッて出ていッたら何? トラペゾヘドロンスラッシュバスターモードとか訳わかんないんだけど。喚ばれた時は時差ボケ……召喚ボケ? だッたから状況が掴め無かッたのにさー、とりあえずそこら辺の雑魚発狂させて遊んでただけなのにサ……くすんくすん……その時はしョーがないからクランクアーップ! してあげたけども。そんで次に行ッた所が日本の内陸部の一地域でさー、とりま、“てぃーあーるぴーじー”のルールでカワイイ女の子いぢめて、あーッそぼッ! ッてしたら……もう……巫女がチートくせえし……月からやッて来たとかいう年増にストライクショットキメられるし……踏んだり蹴ったりのこのウルトラハイパースーパーデリシャスサイケデリックコズミックカレッジエロティックグロテスクスナッフニンフォマニアックファンタスティックなニャー様の事どう思う!?』
その、問い掛けに。
「知 ら ん!」
断末魔の如く叫ぶ。
知らねえよ。
というか──久しぶりに喋ったと思ったら、それか。激痛の上に呼吸困難の最中にどう答えろってんだ馬鹿。
『ちッ、つまんな。シソウくん最初に転生者ぶッ殺した時からリアクション変わッてねーじャん。何? ナメてんの?』
「邪魔ぁ、してんじゃねえよッ! クソアマぁああッ! ッげほ、っごほッ、げあ……っ!」
『そこまできッぱり言えんなら、ちャッちャッと転生者殺してみろよ。ほれハリーハリーハリー』
ニャーの煽りを無視して、激痛に耐えながら立ち上がると、ムンは欠伸をしており、
一人だけ。冷めた目で俺を見ている奴がいる。そいつは集団から一歩前へと出てくる。
「……コントは終わったか?」
「見世物じゃ、ねぇッ!」
不愉快な感想ごと斬断すべく、刀を振るって斬空を放つ。
口を開いた、いけすかない野郎を守るべくして無表情の連中が、間に割り込んでいつの間にか手にした盾で防がれる。
くそ……斬空がまともに当たらなくなってきたか……!
「お──おおおおおッ!」
雄叫びをあげながら、
盾を持った奴らが俺の刀と鞘を防ぎ、他の奴らが手にした武器で攻撃してくる。
ただでさえ常時激痛に加え
「一つ、答えろ」
盾を持った奴らの向こう側に居る、いけすかない野郎に向かって話し掛ける。どうしても訊きたい事があるからだ。
「斬りかかっ「お前以外の“こいつら”は何故こうなってる」
発言を被せた俺に、
「ここまで来たんなら、オレ達“ニルネンヴィーグミン”の事も知ってて良さそうなものだが……お前が訊きたいのはそんな事じゃ無さそうだからな。答えてやるよ」
「ッ、ご──ァアア……ッ!」
腹部に強烈な刺突を食らい、ぶっ飛ばされるが、鞘と刀を地面に突き刺し何とか勢いを殺す。
視線を即座に地面から、
「こいつらは……
言葉を切った
「──勝手に自滅した連中だ。頭の良いオレが使ってやる分には問題無いだろう?」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そうか。
そういう、ことか。
俺は、地面に突き刺した刀と鞘を引き抜き、鞘を順手に持ち直し、仁王立ちで奴らと相対する。
そして、刀の切っ先を
「俺が! お前らの仇を討ってやるッ! だから──」
腰を落として踏み込む姿勢を取り、静かに──しかし地獄から響くかのような、おどろおどろしい声で言い放つ。
「──塵一つ残さず殺してやる」
その言葉を聞いた死んだ
俺は即座に駆け出し、同時に遠距離から足元を狙って攻撃が飛んで来るが、飛び上がって回避し、宙空を蹴りつけ、跳躍して行く。
その間にも攻撃は止まないし、肝心の奴には一切の攻撃を与えていない。
『……シソウくんさー。今日は妙に激おこプンプン丸じャん。どッたの』
頭に
お前は直近で俺にやったことすら覚えてねえのかと、喉まで出かかった罵倒を呑み込み、戦屍を微塵にしていきながら、邪神の問いに怒号交じりで応える。
「お前がッ! 俺に、ぐッ……やってる事をォ! あの、
近接武器で攻撃してきた戦屍を斬り潰して、残りの戦屍と
「……いきな「喋ってんじゃねえぞォ! 蛆虫ィッ!」
穿空を間髪入れずに放ち、黙らせる。
やはりというか、穿空は戦屍が持つ盾によって防がれる。クソが。
死体を弄ぶ奴なんざ、もう
よりにもよって、俺の、目の前で。
死体を玩具にして襲わせて来るとか。
許さねえ。完膚無きまでにぶち殺してやる。
「お゛ぉおおおおおおおおおッ!」
無茶苦茶な軌道を描き、数々の攻撃を食らいながらも、一人ずつ、微塵に斬り潰して──残り十人。
蛆虫の周りに居る五人が、蛆虫に向けて手をかざしていると。
「やれやれ。まさかオレが戦う羽目になるとはな」
何処からか取り出した指揮棒を振った。
瞬間。
「──ッ! ぐぉおおッ!」
何だ、何を──何をされた。
攻撃……にしては挙動も軌跡も見えなかった。
俺と同じような攻撃なら動作から推測できるが、わからない。
一体、何を──と。
涙を流している戦屍を一目見て、思考がクリアになり、一つの。たった一つの感情──怒りだけが残り、沸き上がり、燃え盛る。
何をされたかはどうだっていい。
今、大事なのは──
「ぐ、おォオオオオッ!」
戦屍を斬り潰し、あの蛆虫を殺す。
その為に、怒りを、燃やせ。
蛆虫の攻撃を食らい、掻い潜り、一人一人、戦屍を微塵にして斬り殺す。
そうして、最後の戦屍の頭蓋を踏み砕き。
血の池が斑に広がる荒れ果てた校庭グラウンドの中、蛆虫と対面する。
「まったく。優秀な手駒達を、こうも微塵にされるとはな。やってくれたな、“殺刃鬼”」
『その割にはシソウくん満身創痍だし時間かかッてるし、ムンちャん遊んでるしで何やッとるかッて話なんだけどね。遅いわよアンポンターン』
蛆虫と邪神の戯れ言を
「だがまあ、
ブツブツと、神経にクソを塗りたくるような戯れ言を垂れ流す蛆虫と至近距離まで近づく。
俺に斬空や穿空という
だが、それを差し引いてでも、この蛆虫と向き合わなければならない。
お互いに、無言で睨み合い。
「ッ──」
「速い……が。それだけじゃあな。届かねえよ」
無拍子で踏み込み、左
「あとな、オレはクソムシでも蛆虫でもない。キシオ・ツヅって名前があるんだ。ま、覚「おォオオオオオオオオッ!」
ガラスがバラバラに砕けたような音が鳴り響くと、一瞬にして
「おおおおおおおッ!」
「ぐぼォ──」
再び。
後方に存在していた校舎を破壊しながら叩き込まれた
それから。校舎を滅茶苦茶に破壊しつつ、
効率も、要領も、何もかもが最低の行為だ。
ただ、この蛆虫を痛めつける為に、
三十回、
「おおおおおおおおおぉおおッ!」
刺し込む様につま先を奴の腹に入れ、ぶっ飛ばす。校舎の天井をぶち破り、
トドメを刺すべく、俺も瓦礫、空中、と脚力任せに駆け上がり、
ぶっ飛ぶ速度が死に、緩やかに落下し始める
奴の──首目掛けて、突っ込む。
「死ィいいいいいいねえええええッ!」
すれ違い様に、
その直後、俺は、地面へと墜落。
瓦礫に埋もれかけるが、
「ぐ、う………」
崩落する校舎に背を向け、俺は刀を納刀した。
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