迷い奴隷が秘境美女と恋に落ちて何が悪い

 霧が立ちこめる山奥にある山荘の庭にて、俺は斧を振り下ろし薪を割っていた。

 霧のせいで視界の通りは最悪だが、のお陰か、ずぶ濡れにならずに活動できている。


「せっかく山に居るんだから、景色の良い眺めでも見たいもんだがな」


 斧を杖代わりに、体重を預けて小休憩する。

 霧の中の山というのも、風情があって悪くはないと思うが……物足りないと思うのも事実だ。


「シソウさーん! お茶にしましょー!」


 屋敷のバルコニーから、清楚な美女が俺を見下ろして呼んでいた。


「ああ、今行く」


 返事をすると、美女は嬉しそうな笑みを浮かべ、屋敷の中に引っ込んで行った。

 割った薪を紐で括って持ち、斧を担いで霧の山奥にぽつんと建つ、屋敷に向かいながら思う。




 なのか。




 美女──マコネ・コフタが言うには。

 俺の名前は“シソウ”という

 ……名前からして曖昧過ぎて本名なのか通り名なのか怪しいが、“名無し”で通すのも不便に思い、一応、シソウという名で認識した。

 屋敷の玄関扉を開けて、玄関に腰を下ろして靴を脱ぐ。


「シソウさん、お疲れさまです」

「ああ、ありがとう」


 穏やかな雰囲気を纏って労ってくれるマコネ。

 流れるような銀色の長髪に、透き通るような白い肌と蒼い眼。ゆったりとした服の上からでも判る、美女と呼ぶに相応しい扇情的な体つき。

 誰もが見惚れるような彼女の笑顔に、何故か悍ましい嘲笑がちらつくが……

 きっと気のせいだろう。


「シソウさんが居てくれるおかげで、力仕事が捗って本当に助かります」

「居候の身分だからな。これくらいは、やらせてもらうさ」

「……シ、シソウさんさえ良ければ、ずっと此処に居てくれても……」

「それは……もう少し考えさせてくれ。俺としても、自分が誰なのか解らないままは不安だからな」

「そうですよね……」


 そう返すと、マコネは寂しそうな微笑を一瞬浮かべ、切り替えるようにして溌剌と振る舞う。


「さっ! お茶にしましょうシソウさん! 今回はクッキーが上手く焼けたんです!」

「へぇ、それは楽しみだ」

「お茶も良い葉を使ってますから、味わってくださいね」


 そんな、他愛のない話をしながら、テーブルを挟み、向かい合って席に着いて一服つく。

 一つ。どうしても気になる事がある。

 マコネから臭ってくるだ。あまりの臭いに、当人に訊ねる事も出来ず、ましてやこんな美人からあんな異臭という訳のわからない事態に頭が混乱するが……俺の、嗅覚が、壊れている。

 ということに、した。


「どうかしました? シソウさん」

「……いや、何も。それより、クッキー美味いな」


 お茶を濁すようにしてクッキーを誉めると、マコネはニコニコと嬉しそうに此方を見ていた。


「えへへ……ありがとうございます」


 ……本当に、マコネはいい人だと思う。

 だが、それ以上に俺の異常な部分が気になって混乱し続けている。

 それに、今こうしている時でさえ、俺の中の何かが叫んでいる。

 記憶を取り戻せば、何かわかるのだろうか。


「シソウさん?」

「すまないが、少し休む。茶は部屋で飲むとするよ」

「そう……ですか。部屋まで付き添いしましょうか?」

「いや、いい。ありがとう」

「じゃあ、お休みなさい」

「お休み」


 マコネに申し訳ない気持ちを抱きながら、ソーサーに乗った紅茶らしき飲み物を溢さないようにして、俺に宛がわれた部屋へと向かう。

 部屋に入り、茶を机の上に置き、ベッドに身体を投げ出すようにして横になる。


「この焦燥感は一体何なんだ……」


 一人、愚痴を溢しながら、瞼を閉じる。

 すると、決まっていつも同じ光景が再生される。それは、録画を見直すかのように。






 ガヤガヤと、人々の喧騒が聞こえる。

 祭なのか、歌や音楽といった、賑やかな音が耳からだけでは無く、全身から伝わってくる。

 その中で、俺は──立ち尽くしていた。

 楽しむ訳でもなく、かといって設営の関係者だから忙しいというわけでもない。

 何故かは解らないが、その時の俺は何かとてつもない疲労に襲われていた……ような気がする。

 そして、疲労の他に抱いているものが一つ。

 ──不快感だ。

 汗だくになったような……現状に全く納得いかないような……

 我ながら、要領を得ないな……


「■■■さん。何仏頂面で周囲を眺めてるんですか、んぐ、もぐ」


 とんでもない量の料理を片っ端から平らげながら、俺に話し掛けて来たのは──白い、少女。白色のおかっぱ頭に奇妙な髪飾りを着け、白いワンピース調の服を纏いながらも、丁寧に食事しており、料理の汁等を全く飛ばさずに食べていた。凄まじい勢いなのにも関わらずだ。


「せっかく優勝したってのに、全然嬉しそうじゃありませんねアナタ。つまらないです」


 失礼な態度に腹を立てながら、何か、文句を言い返している気がするが、解らない。

 喋った感覚はある。だが己の声が、聞こえない。

 どれだけ耳を凝らしても、己の声が聞こえないことに苛立ちを覚えながらも。

 俺の中にある手掛かりの一つだから。

 神経を極限まで研ぎ澄まして記録を見続ける。

 毎回、今度こそは──と思いながら俺自身の発言を聞き取ろうと思うが、できない。

 ならばもう、この際俺の発言は後回しにして、周囲に注意を向ける。

 依然として白い少女──名前はわからない──が、黙々と料理を食べており。

 俺はある人物と話している。

 マイクを持っていることから、何かしらのメディアに関わる人物だと思われる。


「──さんは、ただいまお食事中なので、サブライダーの■■■さんにお話を伺いたいんですが、よろしいでしょうか……ありがとうございます! では早速なんですが、今回の大会について参加する経緯ですが──」


 所々ある妙な間は俺の発言か。

 矢継ぎ早に繰り出される質問に、俺は曖昧に答えているのか、笑顔だった聞き手がみるみる内に真顔の無表情と化し、そして。


「──では、これにて質問を終わらせていただきますありがとうございました」


 形だけの礼を一息で言い切るとさっさと立ち去って行った。

 ……自分の行動だから、とやかく言えないが、俺は本当に何を言ったんだろうか。

 再び、周囲に目を向けようとした所で、扉をノックする音で瞼を開いて記録の閲覧を中断させ、扉越しからマコネの声が聞こえた。


「シソウさん、まだ起きてますか? 食器の片付けと、ちょっとお話があるんですけど」

「ああ、少し待ってくれ」


 机に置いてあった茶を一気に煽り、空になったティーカップを持って扉へ向かい、開ける。


「あっ……」

「おっと」


 扉を開けると至近距離にマコネが居り、ティーカップを落としそうになるが、堪えた。


「ごめんなさい、シソウさん! 大丈夫でしたか……?」

「ああ、俺は大丈夫だ。マコネこそ大丈夫か?」

「私は何とも無いです」

「そうか。じゃあ、これ」

「あ、はい」


 マコネに食器を渡し、話の続きを訊ねる。


「それで、話というのは?」

「それなんですけど、リビングで少し待ってて貰えますか? ちょっと準備するので……」


 準備、準備か……準備?


「……わかった」


 妙に思いながらも、家主であるマコネに異議を唱えられるわけもなく。

 大人しくリビングでくつろいでいると、マコネの声が彼女の自室から響く。


『シソウさーん、ちょっと来てくださーい』


 呼ばれるがままに、マコネの部屋に向かい、扉の前で立ち止まる。

 気安く接してくれるとは言え、淑女の自室に入るのは多少緊張する。

 待たせるのも悪いと思い、ドアノブを捻って。


「入るぞ」

『どうぞー』


 言いながらドアを開けて入ると──


「……何してるんだ」

「どれがいいかなーって選んでるんですけど、どっちがいいですかね?」


 マコネが、両手に服を持って姿見の前で自分にあてがって悩んでいた。

 いや、悩んでいるのはいい。女性だから服装に気を使うのは当然なのだろう。

 問題は、マコネの格好だ。

 効率を重視したのか、下着姿で様々な服を床に散乱させていた。

 ほぼ裸のマコネから目を逸らし、床に目を向けても、所々目に映る下着に更に気まずくなる。

 俺は深く溜め息を吐き、そのまま扉を閉めた。


『え? あれ、シソウさん?』

「まずは服を着て、散らかった服を片してくれ。話はそれからだ」

『えー』

「えー、じゃない」

『……わかりましたー』


 扉越しにマコネを諭し、部屋を片付けさせる。

 マコネが納得行かないような声音だったのが微妙に不安だが……彼女も一人の女性だから心配しなくても大丈夫だろう。

 忙しない足音がしばらく鳴った後、『シソウさーん、片付けましたよー』と扉越しから声が聞こえた。


「じゃ、入るぞ」


 言いながら恐る恐るドアを開けて再び入室すると、先ほどまで散らかった服は一纏めにして、ベッドの上に積まれていた。

 ……散らかって無い分マシか。


「それで、話っていうのは──」


 言いながらマコネに視線を移し──逸らす。

 辟易しながら、視界に入れぬよう顔を横に向ける。


「……おい」

「何ですか、シソウさん……って何でそっぽ向いてるんです?」

「その前に服はどうした、服は」


 マコネの格好は、依然として下着姿のままだった。

 当のマコネはさも当たり前のように返してくる。


「だってすぐ着替えますし」

「あのなぁ……」

「それより、シソウさん! これとかどうですかね?」


 嬉々としたマコネの声に呆れた感情を隠しつつ、平静を装い、今度こそマコネの姿を視界に入れる。


「どうって……」

「この服、似合ってます?」


 マコネの格好は、腕や肩を露出させた、真っ赤なドレス姿だった。

 肌の露出で色気を演出させながらも、赤色とドレスの装飾によって扇情的というよりは、溌剌とした、ダンサーのような……端的に言えば、魅力的では──ある。

 あるのだが……


「シソウさん?」


 数秒の硬直から、マコネの呼び掛けで我に返り、そして理解する。


「もしかして、話ってのは……」

「ええ。これからちょっと出かけるので、シソウさんに服選んで欲しいなーって」


 上目遣いで頼んでくるマコネに小さくため息を吐いて、頭の中で伝えるべき言葉を組み立てる。


「そうだな……祭りでもいくのか?」

「……」


 捻りだした感想にマコネは笑顔を凍らせて、一転して不機嫌そうに声を荒げた。


「じゃ、次っ!」

「ばっ──いきなり脱ぐなっ!」


 おもむろに服を脱ぎ始めたマコネを咄嗟に視界から外す。

 声の感じからして気に食わない感想だったらしい。解せぬ。


「シソウさん! これはどうですかっ!」

「涼しそうだな」


 先程の赤いドレスのように、肌の露出が多いものの、青色を主としたタンクトップにホットパンツというラフな装いだった。

 マコネの気迫に押されて、俺の感想も何故か簡素になっていく。

 それに対してマコネは頬は膨らませ、おもむろに服に手をかけた所でまた視界から外す。

 まだやるのか……


「じゃ、これは!?」

「キャンプでもするのか?」


 着替えたマコネの服装は、森林系の迷彩柄を基調とした、まるで軍人の様な格好だった。

 これはこれでそれなりに決まってると思うのだが……

 止まらなくなったのか調子に乗ってきたのか、俺の感想を聞き終ると豪快に服を脱ぎ捨てる。

 それに合わせ、マコネの美しい白い肌を視界の端に追いやりつつ、目を逸らす。

 ……感想の語彙が貧弱な俺に非があるのだろうか。


「シソウさんっ! これとかどうでしょう!」

「子供っぽいな」


 今度のマコネの服装は鮮やかな黄色のフリルドレスだった。

 快晴の下ならば、さぞ眩しく映えるだろうと思った所で、気づく。“子供っぽい”だと微妙に棘のある言い方かもしれないと。若々しいにすれば良かったか。


「むぅ〜……これでもないのぉ……?」


 流石に何度も着替えるのに疲れて来たのか、マコネが唸りながら、ごそごそと着替えを続行していく。

 そもそもの話、始めに服の良し悪しなど解らんと言えば良かったのではないのか、と部屋の隅を眺めてぼんやりと俺はそんな事を考えていた。


「シソウさん……これとか、どうです……?」

「地味だな」


 自分でも何故か解らない程、視界に入れて反射的に答えたマコネの格好は、紫色の高貴そうなドレスだった。

 ……にも関わらず、最初に出てくる言葉が“地味”とは一体何故なのか。


「結構高かったんですけどね……コレ」


 深く溜め息を吐きながら、ドレスを脱ぎ捨て、次の服を物色していくマコネ。

 俺としてもとっとと切り上げたい所なのだが、いかんせん問われると反射的に答えてしまう。どうにかせねば。


「これならどうでしょう? 色で言えばシソウさんとお揃いですよ」

「……葬儀にでも行くのか?」

「ちっ、違いますっ!」


 俺の不機嫌な感想に、戸惑いながら否定したマコネの格好は、俺の黒色ビジネススーツと合わせた様な、シックな黒いドレスだった。

 ……マコネは何一つ悪く無いのだが、“黒色”と“ドレス”の組み合わせが、こう、癪に障る。美人であれば尚更に。


「むー……シソウさんって意外に服に厳しいんですね」

「いや、そんなことは……」


 着替えながら指摘してくるマコネに言葉が詰まるが、思い返してみれば一言で即答していたな……辛口のファッションデザイナーでもあるまいし……


「シソウさん。これはどうですかね?」


 マコネの声に、逸らしていた視線を戻す。

 そこには──純白のワンピースを着た美女がいた。

 素朴な美しさに少し目を細めながら、一言。


「ああ、綺麗だな」

「……………えっ」

「ん?」


 マコネの困惑に、俺も不安になって言動を思い返してみるも、特に変な事を言ったつもりは無いんだが。


「シ、シソウさん! さっきの言葉! も、もう一回言ってくださいっ」

「綺麗だ」

「綺麗……キレイ……きれい……ふふっ、そっか、シソウさんこういうのが好みなんですね」

「い──ああ、そうだな」


 ……喉から出そうになった否定の言葉を呑み込み、通算七度目でようやく彼女が納得する返答をできた事に俺は内心安堵していた。

 そうか、最初から褒めればよかったのか。

 次からは気をつけようと密かに誓っている中で、マコネは心底嬉しいのか、クルクルとその場で回っていた。

 数度回転した後、上機嫌で俺に近づいてくるマコネは柔らかな笑みを浮かべて告げる。


「それじゃあ、私はちょっとお出かけしてくるので。いい子にして待っててくださいね」

「……ああ」


 去り際に俺の鼻をちょん、と突いて上機嫌なマコネは鞄を持って屋敷を出た。

 ……突かれた鼻を擦り、マコネの部屋から出て俺は自室へと向かった。






 自室に戻った俺はベッドに座り、再び瞼を閉じて再生される記録を観る──

 瞼を閉じる度に、また最初から、あの祭の様な光景から始まる。

 ……やはり所々、俺の発言と思わしき部分は欠けているな。

 ならば次だ。

 どんちゃん騒ぎから一転して、星空の下を俺と白髪の少女と共に、異形の生物の背に跨って飛んでいた。

 その後も少女といくつかやり取りしていても、いくら話しても、不愉快な気分になる内容だったが……どういう事なのかまったくわからない。

 長時間飛行していたのか、徐々に夜が白んで行く──同時に、視界が、白く。

 轟音、爆音、何もわからず、吹っ飛ばされ、ただ──ただ落ちていく。浮遊感。もがき、身体を捻り、視界に映ったのは地面──


「……むぅ」


 寝ている訳では無く、瞼の裏に投影されている映画を見ていることに近い。

 いくら記録と認識していても、実際に衝突する光景を直に観るのは何度見ても慣れず、思わず唸り声がでる。

 その後、ふらつきながらも立ち上がり、無明の白い闇の中を彷徨うように歩く。

 時折立ち止まっているのは、声を出しているのだろうか。

 歩いて、歩いて、歩いて。立ち止まり、座り込んで、ふと顔を上げると手を差し伸べられ。

 そして──


「──ッ!」


 目を見開く。

 即座に部屋を飛び出し、靴を履いて外へ出る。

 焦燥感の正体が、僅かだが──掴めた。

 俺は──俺は記憶の他に、

 正確に言うならば、

 濃霧の中を走り、注意深く歩き、また走る。

 闇雲に探してはいるものの、この霧の中で落としたという確信はある。

 何処だ──何処にある。

 俺の、俺が持っていたモノは──

 焦燥感に駆られている俺の左手を、不意に。

 誰かに掴まれた。


「ッ──!」


 ぎょっとしながら振り返ると、そこには──


「何、してるんですか……シソウ、さん……」


 肩で息をしている、マコネが居た。

 息も絶え絶えで、俯いているものの、顎先から汗がしたたり落ちていた。


「マコネ……」

「いい子にして、待っててくださいねって……言ったじゃないですか……!」


 そう言ったマコネの声は僅かに震え、静かな怒りが感じ取れる。

 その様子に、俺は少したじろぎながらも、マコネの手を振り解くべく腕を引く。


「放してくれ」

「嫌です」


 普段のおっとりとした雰囲気は微塵も無く、きっぱりとマコネは断り。腕も振り解けない。


「さ、帰りますよ」

「待ってくれ、俺の記憶の手掛かりが──」

「……シソウさんは、そんなに記憶を取り戻したいんですか」


 当たり前だろう。と言いかけて、マコネの声が震えていることに気づく。

 俺の手を引いて歩くマコネに言葉が続かず、二人して沈黙しながらマコネの家へと戻った。






 冷静に考えれば。

 いくら、記憶の手掛かりを見つけても。マコネの言い付けを破り、留守を放ったらかしにした俺に非があるのは確かで。

 色々と小言を言われたり、説教されたり、叱られたり……それは、まあ、わかる。

 だが。


「何故こうなる」

「こうでもしないとシソウさん、また外に行っちゃうじゃないですか」


 外は結構危険なんですよ、と頬を膨らませたマコネに窘められた俺は。

 彼女と同衾していた。

 もう少し具体的に説明するならば、マコネの抱き枕にされており、俺の腕を枕にして頭を乗せ、狙ってやっているのか、足も絡め合わせ……端的に言えば、物凄く密着していた。

 抱き枕よろしく微動だにしない俺とは対称的にマコネは猫の如く、もぞもぞと俺に身体を擦りつけてくる。


「えへへ……あったかい……」


 ご満悦なマコネに対し、俺は──


(臭い………)


 マコネから漂う激臭に、意識が錯綜としていた。

 これに関しても、マコネというより、俺の嗅覚の異常が問題で。

 幻聴すら聴こえてくる。

 ──ふざけるな。

 ──何だそのザマは。

 ──お前の■■はそんな物だったのか。

 ──これ以上無様を晒してんじゃねえ。

 そんな、声が、聴こえた。

 俺は、一体何を、何に……臭いが……この、気持ち、は──

 平静を装い、眼球だけを動かし、マコネをちらりと見る。

 マコネは穏やかな寝息を立てて、すやすやと寝ていた。

 もう、限界だ。

 マコネを起こさないように、慎重に慎重を重ねて、マコネの拘束から逃れ、ベッドから降りる。

 床に足を着いた時に、木材の軋む音が鳴り響いて硬直し、マコネを恐る恐る見る。


「んー……シソウさぁん……むにゃむにゃ……」


 ……どうやら未だ夢の中らしい。

 俺が居なくなった温もりを求め、毛布を絡め取り、抱き締めていた。

 その後も、なるべく物音を立てぬように慎重に動き、暗闇のなか手探りでランタンとマッチを見つけ、玄関へと赴く。

 後ろ髪を引かれる思いを、振り切るべく。

 マッチを燃やして、ランタンに火を灯し──夜霧が立ち込める山へ歩みを進めた。






 外は危険。

 確かにそうだ。それが山なら尚更だ。

 時間は深夜だし、霧の中でのトラブルに助けは、来ない。


「ッ、とぉッ──ぶぁっ」


 斜面に足を滑らせるも、ランタンを持っていない空いている手で、姿勢を遮二無二建て直し、事なきを得る。

 あ……危なかった……なるべく慎重に歩を進めていたつもりだったが……

 一層気を引き締めねばならんか。

 頼りない輝きを放つランタンを落とさぬように持ち直し、彷徨うように歩いていく。

 幸いというべきか、忌々しいというべきか……俺は

 瞼を閉じても記録を強制的に見せつけられるだけだったしな。

 足下に充分注意を払いつつ、当てもなく、彷徨いながら歩く、歩く、歩いていく。

 どれくらい歩いたのか、わからない。

 どれほどの時間が経ったのかも、わからない。

 だが、俺は歩く事をやめないし、失くしたモノを、探し、続ける──

 ふと、声が聞こえた。

 間延びした、誰かを呼ぶような声。

 その声に立ち止まり、耳を澄ませる。

 もしマコネなら即座に詫びを入れる必要があるが……

 意を決して、声のする方へ向かっていく。

 近づいてみて徐々にわかってきた事だが、これはマコネの声じゃない。

 なら、誰だ。この声は一体……


「あ」

「──ッ!」


 ばったりと。

 いつかの記録で見た──白髪に奇妙な髪飾りを着けた、白い少女が居た。

 白い少女は物凄く深い溜め息を吐いた後、半眼で俺を睨み付けて、何かを──言おうとして。


「シソウさんッ!」


 辺り一帯の霧が少し晴れ、今にも泣きそうな表情を浮かべたマコネが居た。

 マコネの登場にばつが悪くなって、目を逸らすが、そんな俺に気を悪くすること無く、手を差し伸べてくる。


「シソウさん……帰りましょう? 私、別に怒ってないですから……だから、だから……っ……!」


 マコネの声も──手も。

 俺が見たこと無いぐらいに、震えていた。

 まるで、今にも消えてしまうことに怯えているような……

 そんな、儚さがあった。


「■■■さん」


 白い少女が発した声の方に振り返ると、何かを放り投げており。


「落とし物ですよ」


 放り投げた物……一振の、鞘に納められた日本刀を。


「ッ、ダメっ──!」


 マコネの悲痛な制止の声も聞かずに。

 俺はランタンを捨てて、刀を取った。


「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あぁ」


 ……全て──ではないが──思い出す。

 忘れては、ならない事を。

 やるべき、事を。

 るべき、敵を。

 静かに佇んでいる俺に、白い少女──が、語りかけてくる。


「……こういう時は、“おかえりなさい”で、いいんですかね。さん」


 淡白なムンの声に、俺は。


「──“ただいま”」


 煮え滾る憤怒と殺意を込めて、応えた。


「シ、ソウさん……」


 絞り出した声の方をみると、マコネが──忌むべきが愕然としていた。

 今となっては、殺すべき敵だ。


「転生者よ、今永遠の死を与える」


 言いながら、日本刀──冥腑魔胴死惨血餓ヨウトウムラマサの束を握り、抜刀する。

 そして──


「──ッ、がぁッ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

『あハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、あーッハハハハハハハハハハッ!』


 抜、刀と、同時に、全身に──激痛、ああ、そうだ、そう、だ。この、クソッタレな痛みと、忌々しい、思い出したくもない、この声は──邪神。


「うる……せえぞ、クソアマぁっ……!」

『いやァーはッはッはッはッは! シソウくんめちゃめちゃ面白かったよ! オモローだよまったく! あッはッはッはッははは、げホッ、げホッ、ヴぇッほ、ぶハハハハハハ!』


 ゲラゲラと野太い男の声で嗤い転げている邪神クソアマ──ニャーの声に悪態で返し、転生者を見据える。

 先手、滅殺。


「死ッ、ねえぇっ!」


 踏み込んで、跳躍。

 転生者マコネの首目掛けて刀を振り抜く。


「……こんな、はずじゃ、無かったのに」


 だが、俺の刀は転生者の首には届かず。

 ヤツが上げた右腕に集まった“霧”が刀を阻んでいた。……忌々しい。


「──纏鎧オン

「……ッ!」


 ヤツの発した言葉に、ただならぬ気配を感じ、追撃に鞘を即座に叩き込む──が。


「ふっ──」

「ぐゥ、ッがァッ!」


 俺の一撃は女の胴体を断つこと無く、それどころか、俺は、鳩──尾、に鋭い一撃を食らう。


「ッ、ごォッ、がはッ、げ、ア゛ア゛ッ!」


 鳩尾に食らった痛みに重ねて、冥腑魔胴死惨血餓ヨウトウムラマサから常時与えられる激痛に苦悶の声を無様にあげて、のたうち回る。


「──霧幻鎧一式ミストラル矛盾兵装型パラドクス


 転生者の静かな声と共に、周囲の霧が奴の下に集まり、そして。


「こうなった以上……全力で、戦いますからね」


 僅かに晴れた霧の合間から差し込む月明かりの下で。流麗な全身鎧を身に纏い、巨大な馬上槍ランスと大盾を携えた敵が居た。

 奴の言い分に、奥歯が砕けそうな勢いで噛みしめ、吼える。


「俺はッ、最初ハナっから、全力でやってんだよォオ゛オ゛オ゛ッ!」


 起き上がって、転生者に飛びかかり、霧の中の戦いが始まった。






「ぐゥ、おォオ゛ッ、死ねッ! 死ねェ!」

「く………」


 戦いを始めてからというもの、転生者は大して攻めもせず、大盾で俺の攻撃を防ぐばかりだった。嘗めやがって。


「てめぇ、全力で、戦うんじゃ、無かったのかよッ!」

「…………」

「だん、まりかッ! 畜生が!」


 声を張るのも喉がめちゃくちゃ痛えっつーのに、うんともすんとも言わねえなコイツ。

 クソ、クソ、クソッ。

 

 霧のクセしてなんで斬り裂けねえんだ。

 こちとら盾ごとぶった斬る勢いで刀を振るっているのに。


『んー? シソウくんさー、もしやもしや加減してる? え、まさかのガチ恋? うっわきっしょ。めちゃめちゃ酷い臭いのハズなのに絆されちゃう系? うわー、うわぁー、ないわぁー』

「うるっせェッ、クソアマァあ゛あ゛あ゛ッ!」


 邪神の煽りに怒りの咆哮を轟かせ、刀と鞘の振るう速度を更に上げていく。

 斬れねえのなら、ぶち壊して──ぶっ殺すまでだ。


「お゛ォオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!」


 刀、鞘と振って、振って──斬れない、砕けない。

 ならば。


「オ──ッ、がァあ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」

「く──」


 刀で刺して、順手に持ち替えた鞘で突く。突いて、突きまくる。

 掘削機さながらの速度で執拗に連打する俺に圧されたのか、転生者は後方に跳び退く。

 ここだ。ここで、斬り裂く。


「おォオオッ、ら゛ァッ!」


 その場で刀を大きく振り被り、振り抜いて、景色ごと斬る攻撃──斬空を放つ。

 周囲に立ち込める霧が上下に別たれるが……手応えが無い。

 どうやら霧に紛れて姿を眩ましたか。

 だがしかし。姿が見えずとも、居場所の把握はできる。

 大きく深呼吸し──鼻、喉、肺辺りに激痛が走るが──転生者特有の腐敗臭においを嗅いで、当たりをつける。


「そ、こかァ゛アアッ!」


 振り返り、一閃。

 背後からの刺突に身体を回転させて紙一重で避け、俺も刀を転生者に向けて突き出す。

 突き出した刀は転生者の兜に掠り、弾け飛ぶ。首は飛んでいないことから、兜のみが飛んだか。

 転生者の艶やかな銀髪が宙を舞い、整った容姿に在る、透き通る蒼眼が俺を真っ直ぐ見据える。

 忌々しい。実に不愉快だ。


「もう、止めましょうよ。こんなこと」

「止める……? 何をだ……ッ!」


 今までだんまりだった転生者が初めて、俺に会話を持ち掛けて来ている。

 本来ならば、黙殺して斬殺するのが常だが……このまま戦っても埒が開かぬと思い、業腹だが耳を傾ける。

 そして、転生者が続ける。


「こんな、戦い……私はしたくない……!」

「──何を」

「だって、このままじゃ、シソウさん救われないじゃないですかッ」


 絶句しかけた俺に、転生者は悲壮感を滲ませて、切実に語り掛けてくる。


「シソウさんはもう、充分頑張ったじゃないですか……今も──も」

「……………」

「此処に……この霧が立ち込める山にシソウさんが来た時に、私はシソウさんのことを知ったんです……シソウさんがどれだけの苦痛を耐えて凌いで、戦ってきたことや、戦う理由も」

「………………」

「このままじゃ、この人は救われないって……解ったから……だから、だから私は……」


 そこまで言って、転生者は大盾を地面に突き刺し、俺に手を差し伸べてくる。


「シソウさんの、業も呪いも──因果も。私が、救います。だから、私と……私と、一緒に──生きましょう」


 転生者は涙ぐましく、言葉を尽くし、俺に、告白した。

 嘘や偽り、虚飾やその場しのぎでは無いというのは、解る。

 依然として転生者の腐敗臭が鼻腔を蹂躙し、冥腑魔胴死惨血餓ヨウトウムラマサから激痛が与え続けられ、不快感も憤怒も尽きることは無いが。

 誠実さは、伝わった。

 故に、返答もそれなりの対応をしなければならぬと感じ、俺は──


「断る」

「ッ……!」


 斬って、棄てた。

 真面目な話と思い、黙って聴いてみたものの。

 

 困惑しながらも、即座に盾を構えた転生者に、殺意を込めて斬りかかりながら言葉を続ける。



「まず一つ。いつ俺がと言った。思い出すのも業腹だが、記憶を隠蔽されてからも、俺はそんなことを一度たりとも言って無い」

「それは……今までのシソウさんが、余りにも──」


 転生者の反論を遮るように鞘で痛烈に殴りつける。至近距離からの殴打に、転生者がたたらを踏むものの、即座に姿勢を立て直す。

 動揺はしているものの、そこまで慌ててる訳ではないか。


「二つ。お前が

「……ッ」

「何様のつもりだ。お前は俺を慮っているようで虚仮にしているだけだ」

「ッ──じゃあッ! 今シソウさんが関わってるおぞましい化物達の言うことや、シソウさんの──シソウさんを使い潰すような家族に、シソウさんがそんなになってまで守る価値なんか無いじゃないですかッ!」

「っ……」


 俺の冷徹ながらも煮え滾るような怒りを孕ませた声に転生者が押し黙る。

 俺としても。激痛と憤怒で絶叫したいのを堪え、なんとか会話の体裁に持っていくが、振って、突いていく刀と鞘に徐々に力が籠っていく。


「三つ。。どういう条理を計算に入れての発言かは知らんがな。俺は、お前と生きられないし──生きる気も無い」

「……それでもっ!」

「まだ解らねえのか。お前の“人形遊び”に付き合うつもりは無い。それとも屍体愛好性癖ネクロフィリアという奴か? 穢らわしい。反吐が出る」

「────」

『ぶハハハハハ、ひャはハハハハハ! シソウくん辛辣ぅー! ぎャはハハハハハハ!』


 脳内に忌まわしき邪神の嗤い声を響かせながら、転生者を痛烈かつ辛辣に、口舌にて容赦無く叩きのめし、打ちのめす。

 奴は絶句し、涙が頬を伝っていた。

 ……ああ、腹立だしい。

 そもそもだ。

 邪神の気分次第で意識すら消え失せるかもしれん自我に、心臓は動かずとも動く身体。

 味の解らぬ舌や腐った臭いしか嗅ぎ取れぬ鼻。

 こんなもんを携えた奴が生きている人間であって堪るか。


「解ったんなら──とっとと死ねェッ!」


 抑えつけていた憤怒を爆発させながら、至近距離にて斬空を放つ。

 依然として大盾は斬れぬが、周囲の霧はバラバラに斬り裂かれていく。

 大盾の後ろから姿を現した転生者の顔からは涙が消え、俺を真っ直ぐ見抜き、瞳に闘志が宿っていた。

 ……非常に不愉快ではあるが。

 予知にも似た勘が訴えるには──

 今までの腑抜けた動作から一転し、明確に攻撃の意志を感じる。腹を括ったか。


「シソウさんの、言いたいことはわかりました……けど、それでも私は……」


 奴が槍を構えると同時に、俺も刀と鞘を構える。


「──貴方を、諦めない!」

「──お前を、ぶっ殺す」


 転生者の気迫と俺の憤怒が発露し、霧が奴の周囲で蠢き、形を成していく。

 いい加減、俺もうんざりだ。身体は痛いし、転生者は臭いし、邪神は鬱陶しい。

 何より。

 

 度し難い程の屈辱だ。故に──次で、る。


「行って──霧幻天神流槍群ミストルティン!」


 周囲の霧を槍へと成形して、俺目掛けて大量に降らせてくる。

 飽和攻撃とは忌々しい。俺の……というよりは耐久性の高い相手の……苦手分野を解っているようだな。

 だが。


「小賢しい」


 足止め、行動制限、なるほど確かに効率的だし効果的だ。

 降ってくる槍を俺は片っ端から刀で斬り裂き、鞘で殴り散らす。

 無数の槍の悉くを消し去って泰然と転生者の下へ歩を進めて行く。

 転生者は僅かに怯んだだけで、攻撃の手を緩めない。

 非常に不愉快で、不本意だが。

 本当に、

 一分の隙も無い転生者に隙を創るべく、腹を括って大きく息を吸い込み──


ェ!」

「………っ!」


 今の今まで一度も呼ばなかった転生者の名前を呼ぶ。微かに動揺が窺えるが、それだけだ。間髪入れずに、二の句を告げる。


「──愛してる」

「え──」


 動きが、完全に止まった。

 一瞬の間。刹那の空隙。この瞬間いまの他に殺るべき好機は無い。

 斬空せんれねえなら、一極てんで──穿つ!


「お゛ォオオオオオオッ!」


 狙うは首。転生者の、素っ首。

 首目掛けその場で神速の刺突を放つ。

 傍から見れば素振りの真似事に見えるだろうが、斬空の理屈で繰り出したソレは──


「──あ」


 転生者の首を空高く飛ばし。

 周囲の霧をも纏めて吹き飛ばす。

 数秒遅れて、転生者の首の切断面から鮮血が湧き水のように溢れだし、どさり、と身体が倒れた。

 霧が晴れたことにより、朝日が──全てを照らし出す。


「は──ッ、はぁ゛……はぁっ……」


 息も絶え絶えになりながら、何とか納刀し、陽光の眩しさに目を細めながら遺体と化した転生者の下へ向かう。


『いやぁー、まさかまさかシソウくんがあんな愛の告白をするなんてねぇ! それで即首すっ飛ばすとか、何? 流行りのヤンデレってヤツ? 似合わねぇー!』

「あんなもん、口からの出任せだ。毛ほどもアイツのことなんか愛していない」


 ニャーの煽りに対して即座に否定の意を示す。

 ことがわかっているから、あんな真似はしたく無かったんだが……転生者をぶち殺す為だと割り切る。

 転生者の斬り落とした頭を見下ろすと同時に、上空からばっさばっさ、と羽音を鳴らしながら羽の生えた巨大な馬のようなバケモノ──サンタくんが下降してきた。その背には、ムンが居た。


「シソウさん。あのレースから一週間ぐらい経ってるんですけど。今まで何処に居たんですか」

「…………この転生者と暮らしてた」


 苦虫を噛み潰したような表情で声を絞り出して答えた。

 その答えを聞いたムンは嘲るように溜息を吐き、失笑混じりに詰ってくる。


「私が、霧の中を、休憩挟みつつどっかに落ちたシソウさんを探していたのに、当の迷子は転生者と一つ屋根の下しっぽりですか」


 ……ここまで突っかかってくるって事は相当腹減ってやがるな……何言っても藪蛇にしかならなそうだからシカト決めこもう……

 ムンの蔑むような視線を背に受けながら転生者の頭──流れるような銀髪──を無造作に掴んで持ち上げて、歩き出す。


「“ソレ”、どうするんです」

『あら? なにすんの?』


 ムンと脳内に響くニャーの指摘に、歩みを止めず、背中越しに答える。


「弔ってくる。不愉快で不本意で業腹だが……世話になっちまったからな」


 依然として転生者の事は殺意しか抱けないが。

 受けた義理くらいは返す。

 粗末な墓を造るべく、転生者の山荘へと向った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る