Bard of Bird ー鳥人族の紡ぎ唄ー
天井香織
第1話【それは旅する詩人の物語】
木々が葉を紅く染める時期、
詩人がこの街に着いたのはつい昨日の夜のこと、
詩人は街をいくらか見歩いてから、広場で露店を開いている
「
店頭に座っている立派な鶏冠を持った鶏人族の店主はふっ、と帳簿から顔をあげる。
「りんごは1個で300レイスだよ。5個買えば50レイスおまけ出来るけど、3個だけでいいかい?」
「それじゃあ、5個買うことにするよ。」
そう言って詩人は、幾つかの小銭を動物の皮で出来た袋から取り出して店主に渡した。
「よし、ぴったり1450レイスだ。」
店主はりんごを5つを麻で編まれた中くらいの袋に入れ、それとは別に木箱から小さな袋を取り出してりんごと一緒に詩人に手渡した。
「これはおまけだ、中には
自慢の鶏冠を褒めてくれたからな、良かったらもらって行ってくれ。」
「こりゃ嬉しい、どうもありがとう。
旅先で大事に食べることにするよ。」
詩人は明るい微笑みを浮かべ、りんごを1つ取り出してから、2つの袋を
そして、ふと思い立ったように口を開く。
「ところで少し尋ねたいのだが、この広場は誰が何をしてもいい場所なのかい?」
「ここの広場は基本的に何をしても自由だ。商売をする時は
「よかった。それともう1つ、この国の人は音楽が好きだという噂を訊いてやってきたのだが…」
「ああ、もちろん。音楽さえ流れていればどこであっても踊り出すほどさ。」
その言葉を聞いて、詩人はさらに顔を明るくさせる。
「そうかそうか、それは本当にいいことを聞けた。いろいろ世話になったね。どうもありがとう。」
そうして詩人は首からさげたひし形のネックレスを右手で握り会釈をした。
「ではまたいつか。」
「またの機会をごひいきに、良い旅になることを祈っているよ。」
詩人は、鶏人族の店主とわかれてから露店に来る前に見つけていた広場の中央にある噴水に腰掛けて背嚢と、それとは別に持っていた木製のケースを足元に置き、りんごを食べることにした。
ひと口かじるとりんごはしゃきっ、と音をたてる。
赤い果皮の中から見せる果肉は晴れ渡った空の日光が反射してみずみずしく輝いていた。
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Bard of Bird ー鳥人族の紡ぎ唄ー 天井香織 @Kaori_1001
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