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 俺は……

 こんなにも、アリッサムのことが好きだったんだ……。


 アリッサムといると、毎日が楽しくてハラハラドキドキして、それでいて心は満たされていた。


 ――アリッサム……。


 お前のことが……大好きだよ。


「アスター、いつ実家に戻るの? お願いだから教えてよ」


「母は今、バレット王国の病院に入院してるんだ」


「……バレット王国。隣国なんだ」


 アリッサムが俺に抱きついた。

 強く、強く俺にしがみつく。


 そんなに強くしがみついたら、この想いが断ち切れなくなるだろう。


「アリッサム……。今まで世話になったな。ジンジャーには俺から話をするから」


「……ばか、一生の別れみたいに言わないで」


 アリッサムがしゃくり上げて泣いている。

 その背中を優しく擦りながら、寂しさが堪えきれずに涙が溢れた。


「あと二週間くらいで学校は退職する。この屋敷も出て行くよ」


「あと……二週間!? たったの二週間!?」


「後任の先生は明後日には着任するから、学業に支障はないから心配はいらない」


「あと……二週間……」


 アリッサムが濡れた瞳で俺を見つめた。


「アリッサム、公爵令息だからといって職業を持たず、親のいいなりに政略結婚する時代はもう終わったんだ。今は誰しもが自力し職につく時代なんだ。俺は何処にいても、アリッサムを応援してるからな」


「……だから、どうしてそんな言い方をするんだ! ボクは政略結婚なんてしない。親のいいなりにもならない。ボクは……ボクは……」


 俺は泣いているアリッサムを優しく抱きしめた。


「ほら、いい子だ。子供みたいに泣くんじゃない」


「アスター、ボクはアスターが好きなんだよ」


「アリッサム、気持ちは嬉しいが、それは恋でも愛でもない。幼なじみの情に過ぎない」


「……そんなんじゃない! ボクは……」


 泣きながらアリッサムが唇を重ねた。

 俺達は泣きながら抱きあった。


 もしも俺達が教師と生徒でなかったら、もしも俺達が男同士でなければ、違った幸せを見つけることができただろう。


「アリッサム、ごめん」


 アリッサムの体は女性のように柔らかくて、温かくて心地よくて。


 本当はずっと抱きしめていたかった。

 でもそれは……許されないこと。


「アスター……」


「俺にとってアリッサムは、可愛い弟なんだ。それ以上でもそれ以下でもない」


 アリッサムの温もりは……

 生涯忘れないからな……。

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