僕の英語はなまっている

ドゥギー

僕の英語はなまっている

 僕は幼少の頃アメリカに住んでいた。だから英語は得意だった。特に中学の英語なんてお茶の子さいさいのはずたっだ。

 ところが、中学1年で僕は挫折を味わう。


 塾で英語の授業を受けていた僕たち。講師からある文章を読むように指示された。自慢げにアメリカ仕込みの発音で読み上げる僕。

ところが、


「ドゥギーくん、ちょっと発音違うな」


 講師が僕の発音が間違ってると指摘したのだ。え? 僕はアメリカ帰りの帰国子女だよ?難しい言葉ならともかく、中1英語で発音を間違えるわけないでしょ?

 僕は少し口を尖らせた。


「ドゥギーくん、『woman』発音してくれる?」

「はい。『ウォマン』」

「うーん、違うね。古野くん、読んで」

「はい。『ウーマン』」


 ウーマンって、もろ日本語読みじゃないの?僕の方が本場の発音なんだって!

日本の歌手も同じ発音だし!


「『ウォマン』のほうが合ってますって!」


 僕はかなりムキになっていた。


「ドゥギーくんはアメリカ行ってたんだっけ?アメリカのどこ?」

「カリフォルニアですが」

「そうか……。ドゥギーくん、きみの英語はなまってるね」


ガーン!僕の頭の中に大きな鐘が鳴り響いた。

 なまってる? 英語になまりなんてあるの?これって、地方から東京に来て普通にしゃべっていたら、なまっていて馬鹿にされるのと同じパターン?いや、アメリカ仕込みとか言って自慢してたから、もっと恥をかいているよ!


 このことがトラウマとなり、僕はしばらく英語を下手に発音するようになった。



 そして、四半世紀経った現在、僕はカラオケで洋楽を歌う。


「ウォーマン、ウォーマン」


 僕の英語は相変わらずなまっている。

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