遭遇

学校が終わるチャイムが鳴り響くと、玲音はカバンを背負いそのまま教室を出ていく。後ろから八葉が遅れて「おーい!」と、こちらを追いかけてくる。




「無視しないでー!ねー!」


「うるさい」


「酷い!?」




冷たい対応にめげない八葉は、ようやく玲音の腕を掴むとそのまま、両手で抱きつく。その時に玲音が艶っぽい声を出したが、テンションの高い彼女の耳には入らない。


玲音は彼女に抱きつかれているのを意識しているのか、頬を赤らめている。




「ねー、今日は家に来る?今日、誰もいないんだよ?」


「ごめん、今日もやる事あるから」


「けちー」




八葉の家は、週に2日は誰もいない時がある、それを見計らっては玲音を誘おうとしてるが、コレである。


帰り道の途中まで彼らは楽しそうに話しながら共に歩いて帰る。そして先に八葉の家が見えてくる。




「今日はありがとね?」


「気にするなよ。・・・楽しかったよ」


「うん!またね!たまには家に来てよー!」




彼女が家に入るのを見た後、玲音は自分の帰路に着く。


ゆっくり、ゆっくりと時間をかけながら歩く。玲音は家に着くと、鍵を開け、自分の部屋へ一目散に向かう。


布団に身体を倒し、パソコンの電源を入れると、いつも通りにネットを開く。


今彼が開いているページには、最近の事件について書かれているものだった。「危険、夜道に増える死体」など、最近は夜に死体が出るみたいな事が書かれていた。




最近、玲音の心の中では、これに対しての執着心が強かった。


まるで身に覚えがあるかのように、その事件の記事だけをしっかりと的確に確認する。


別の画面で、地図を開くとそこにしっかり事件のことを記載していく。


どこでどんな事が起こったのか、それすらも記録するようになっていた。




気づけば時間は過ぎていて、玲音が意識をパソコンから戻す時には既に日は落ちていて、時間は午後の6時を過ぎていた。




玲音は下の階に降り、キッチンへ行くとインスタント食品を袋から取りだし、調理する。


時間まで玲音はスマホでテレビを見る。


ニュースも最近の事件についての事だった。


事件について、人の死に方は様々だった。身体が引き裂かれたり、植物たちに囲まれての絞殺、さらには身体自体引き裂かれ、人形のように接合部分を人で繋いでいるものだった。


そんな映像を、玲音はなんの感情もなく見ていた。




「酷いな・・・」




実際、その家族とかなら泣いたりとかするだろう。


だが、彼にとってはただの他人でしかないのだ、なんの関わりもない、ただの他人。


身内に流す涙と、他人に流す涙は別だと、彼は割り切っていた。


出来上がった料理を口に運びながら、彼はそのニュースだけをまじまじと見つめていた。











「ん。コーラが無いや」




風呂上がり、コーラがないことに気づいた彼は、財布を持ち、だらしない服装のまま外に出る。


シャツは少しはだけ、スボンも長さがあっていないものを履き、夜の町へ出かける。


外は少しだけ寒く、まだ春にしては珍しいものだった。




「へっくし。・・・寒いなぁ」




寒さが身体を襲うと同時に、別の何かが彼を追いかけていた。


その何かは、家の屋根からしっかりと彼を監視する。


しかし、そんなことに気づかない玲音は、コンビニに着くと、速攻で中へ入っていく。


影はしっかりそれを見届けると、口元を抑えながら呟く。




「あれが女王の決議クィーンズ・ルールの異能の所持者なのか?・・・呆気ない。ただの女ではないか」




その影は、手に持つ刃を輝かせていた。











「ありがとうございましたー」




その声に送られ、玲音はコンビニから出てくる。


両手に抱えたダンボールには大量のコーラが詰められていた。


それを軽々と持ち上げ、玲音はゆっくりと暗い夜道を歩いていく。明かりは街灯だけで、他の明かりはない。


僅かだけ照らされた道を辿るように歩くと、途中、向こうから歩いてくる人影を見つける。




(?ここら辺で夜道出歩く奴がいるか?)




玲音の内心はパニックになっていた。


ここら辺の人達は、夜に出歩く人達ではないと玲音は知っていたために、このような形で会うなんてのは頭には無かったからだ。


人影は、玲音の数歩前で止まるとそのまま動かなくなる。


玲音はダンボールを地面に置く。




「あのー、そこどいてくれません?」




あくまで普通の対応をする。


機嫌を損ねたらダメだと言う心から、彼は難しい顔をして、額に汗を浮かべながら冷静に対応する。


それでも、向こうの反応はない。




(むー。これでもダメか。どうやったらどいてくれるかな?)


「君は・・・」




そんなことを考えていると、向こうから話しかけてくる。


声は低く、男性のようだ。年齢は考えずとも、玲音より上だと分かってしまう。


その影の人は、背中から背丈ぐらいの長い何・か・を取り出し静かに構える。


それが・・・玲音を殺すものだと知らずに。




「君・は・気・づ・い・て・い・る・の・か・?」




その言葉とともに、玲音の真横に強い風が吹く。


何が起こったか理解できないが、数秒後にはその後ろにあったコンビニは真っ二つに切り裂かれ、爆炎に巻き込まれた。


瞬間、頭は真っ白になったように、何も考えれなくなった。


しかし、同時に頭に頭痛が襲う。




(なんだ・・・!なんでこんなこと考えるんだ・・・!)




脳裏によぎるのは様々な、姿。それは玲音が今考えるどの逃げ方でも結果は同じだった。


少し下がっても死ぬ。そのまま背を向けて逃げても死ぬ。向かって行っても話しても・・・。


そして何も考えれなくなった。玲音の思考が瞬時に停止する。




「目覚めてはいないのか分からないが。その〈異能〉私がいただこう。」


「・・・異能?」




その言葉とともに、その場で少年たちの日常を壊す戦いが始まろうとしていた・・・

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