第十二章 歩み出す時
第33話 泊まって行って下さい
例えばの話だが。
何でも良い、とにかく花瓶に入れられた美しい花が有る。
だがその花は水を、栄養剤などを入れるなど護らなければ枯れてしまうだろう。
それは.....自然の摂理だ。
俺は.....花を見守る必要が有る。
彼女達は.....色とりどりの花なのだ、と。
かつての俺なら有り得なかったが彼女達を護りたいと。
そう、思ってしまった。
俺はただの見守る側。
さっきも言った様に彼女達は柔らかな水仙の様な花だから。
人間よりも繊細だから護らなくてはいけない。
流星と.....奈々という花は俺を.....巡って考えている。
どちらが.....俺にふさわしいか必死に考えている。
巡らせている。
それは.....まるで太陽と月の様に。
この俺を.....照らし大切にしてくれる。
なのに俺は.....まだ怖いと。
思っている部分が有る。
どうしたら良いのだろうか。
☆
そんな感じの結論から言って。
天気は.....止まない。
俺は困惑気味に窓から外を見る。
すると、奈々が切り出した。
「翔太さん。泊まっていって下さい」
「.....しかし.....迷惑が掛かるんじゃ?」
「この天気で外に出るつもりですか?無茶したら怒りますよ」
大雨で風邪ひいちゃったら意味無いですし。
と奈々は笑みを浮かべる。
俺は.....少しだけ控えめな笑みを浮かべて、じゃあお言葉に甘えて。
と言った。
「.....体育祭中止になっても一応は明日は休みだな。.....さてどうするか」
「.....明日、天候が良くなったら.....買い物に付き合ってくれませんか」
「.....買い物?どうした」
「.....母の日ですから。贈り物が買いたいんです」
俺は目を丸くする。
あ.....確かにな、と俺は思った。
母の日か、すっかり忘れていたな。
流石は奈々、だな。
そういう事はしっかり覚えている。
俺は.....思いながら口角を上げた。
「分かった。次いでに流星.....」
「りゅーちゃんは駄目です」
「.....え?何で?」
「.....色々有るんですよ。乙女には」
秘密を追求したら怒りますよ?
と人差し指を自らの唇の辺りに立てて、ニコッとする奈々。
俺はうーん?と考える。
その様子に八重歯を見せながら笑った奈々。
俺はその姿に苦笑しながら.....ふとハッとして思い出す。
そして奈々に聞いた。
「.....そう言えば、.....ガンのその.....症状とかは大丈夫なのか?」
「.....え?.....あ、はい。今の所は安定していますよ。翔太さん」
「.....そうか.....」
俺は前を見る。
これで.....酷くなったりしたら俺は神を恨むだろうな。
もしかしたら、だ。
その様に思いながら居ると、奈々が立ち上がった。
そして俺に柔和に笑む。
「お料理作ります。リビングに行きませんか」
「奈々、お前、料理出来るのか?」
「はい。私を舐めてもらったら困りますよ?」
ニコッと笑みを浮かべて俺の手を引く、奈々。
全く.....この子は。
その様に思いながら、電気を消してリビングに向かった。
奈々の言葉に甘えよう。
そう、思って。
☆
「美味いな.....」
「そうですか?良かったです」
俺は目の前のペペロンチーノを見ながら思う。
思ったけど、家事が出来る女の子って凄いよな。
流星といい.....だ。
フォークを操りながら俺は前を見る。
奈々が俺を見ていた。
「.....どうした?」
「.....いえ、翔太さんが可愛いなって思いまして」
「.....そうか」
俺は.....少しだけ柔和に笑う。
すると.....奈々は俺に対して少しだけ控えめな笑みを浮かべた。
そして俺を見つめてくる。
それで今までの事も有り察した。
「ねぇ翔太さん。私の昔話も聞きたいですか?」
「.....奈々。それは.....」
「私.....翔太さんが話してくれた。それが嬉しかったんです。だから.....」
「.....奈々」
奈々の頭に手を添えた。
そして.....俺は首を振る。
それから.....奈々を見つめた。
俺は.....その光景を確認し俯く。
それから顔を上げ奈々の手を握って真剣な顔をする。
眉を顰めた。
「話す必要は無いよ。俺は.....ただ語りたかっただけだから」
「.....!.....え、でも.....」
「.....お前に無理はさせない。無理はして欲しく無い」
「.....えっと.....」
俺を見開いて見てから。
ボッと林檎の様に赤面した、奈々。
そ、そうですか?と目を回す。
予想外の言葉だったのだろうな。
その様な言葉が真剣な顔で俺の口から出るとは思って無かったのだろうけど.....それにしても驚きすぎじゃ?
「.....えっと.....じゃあ.....分かりました。時が来たら.....お話ししますね」
「.....それで良いんだ。有難うな」
「いえ.....格好いい.....」
「は?」
俺は目をパチクリする。
ふぇぇ!?な、何でも無いです!だ、大丈夫です!
と手を回してアタフタする、奈々。
何かヤバイ事を言ったかな?
俺は少しだけ.....心配になる。
「えっと、そ、その、ぺ、ペペロンチーノ冷めちゃいます!食べましょう!」
「あ?.....あ、ああ.....」
それから奈々はフォークを握って物凄い勢い。
例えるならそうだな、掃除機の様に吸って食べて。
クエスチョンマークを浮かべるしか無かった。
ペペロンチーノをまるで竜巻が襲う様に平らげて立ち上がってから。
洗っている様だったが皿を割っていた。
俺は何故、そんなに慌てているのか。
知る由も無くただただ。
クエスチョンマークを頭に浮かべていた。
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