第十一章 翔太と奈々、翔太の過去
第29話 翔太の過去 〜鍵との記憶〜
結局、体育祭は見事に中止になり俺達は土砂降りの中、帰る事になったのだが。
俺と、聡子さん、そして父さんなどなどと、だ。
そして土砂降りの中、車に乗って来た訳じゃ無いので傘を刺して急いで帰る途中で俺は屋根の下で雨宿りしている奈々の両親に会った。
俺達はスマホを触りながら困惑している奈々の両親に?を浮かべて聞いた。
「どうしたんですか?」
「あ.....谷川くん。その.....外せない仕事が入ってしまって.....それで奈々を一人にする訳にもいかずどうするか困っていた所なんだ」
「え?マジですか?」
俺は見開いて思いながら流星を見た。
しかしよく考えてみたが、流星も.....女の子だな。
ではどうしたものか.....。
と思いながら居ると、奈々が手を挙げた。
「私、翔太さんに来てもらいたいです!」
「.....え?!」
「あ、それいいかも知れないね。りゅーちゃん。私は家の用事が有るから.....お兄ちゃんだったら信頼出来るし」
「え!?冗談だろ!女の子だぞ!奈々は!」
ね、お母さんと流星は聡子さんを見る。
それでも良いんじゃ無いかしらと言った。
いやいや!冗談だろ!
父さんまで納得したし!
「2時間ほどだけですので奈々を宜しくお願いします」
「いや.....え!?父さんも来てくれよ!」
「何を言うか。父さんも仕事だ」
「.....マジかよ」
そして.....俺と奈々と二人っきりで.....奈々の家で過ごす事になり。
全てが進み、今に至る。
俺は奈々の家でシャワーを借りて、家族が届けてくれた服に着替えて。
奈々と二人っきりで停電の中、座っていた。
「.....あはは。こうなるって思わなかったから.....」
「.....そうだな.....」
そして話が途切れる。
外を見ると土砂降りになっている。
さっきと変わらない.....が。
どうしたら良いのだろうか。
「安藤にも来てもらった方が良かったかな.....」
「いいや。翔太さんだけで良いです。私」
ニコッと笑む、奈々。
俺は少しだけ赤面しながら鼻の下を拭った。
奈々はそれを見てから外を見つつ凄いですね、と言う。
俺は、そうだな、と答えた。
「.....そうだ。奈々。もし良かったら昔話をしてやろうか」
「.....え?翔太さんの過去ですか?」
「.....ああ」
何だろうな。
そんな言葉を口にする俺は.....何か狂っている様な気がする。
だけど、何だか.....奈々と一緒だけなら話しても良い気がした。
と言うか、もうそろそろ良いんじゃ無いかって思ったのだ。
「聞きたいです。翔太さんの昔話」
「.....聞いているのがキツイ事も有るかもだけどな。そこら辺は話さないから.....」
「翔太さん」
奈々の言葉に顔を上げる。
真剣な表情の奈々が俺を見ていた。
そして柔和になる。
「.....恋人の過去話。誤魔化さないでほしいです」
「.....」
誤魔化すつもりは無い。
だけど、奈々にはキツイんじゃ無いかって。
思ったのだ。
だけど、その奈々の真剣な表情に俺は完敗した。
「.....分かった。全く誤魔化さずに話してやるからな」
「.....はい」
そして停電で、懐中電灯しか明かりが無い中で。
しかも奈々と二人きりの中。
俺の昔話が始まった。
☆
何処から話したもんかな。
俺の幼稚園の入学.....はどうでも良いか。
じゃ無くて鍵が倒れた頃から話すか。
俺の過去は壮絶なものだった。
何が壮絶かと言えば、俺は幼馴染を失ったのだ。
河瀬の件が有るが、それは和解したので.....。
俺は.....鍵を愛していた。
なぜクソガキなのに分かるかって?
簡単だ、その時、恋心が芽生えていたから。
有るだろ?幼い頃でも恋心ってのは。
その日、鍵が倒れて数十日経ってようやっとお見舞いが出来る時になって。
父さんと母さんと二人でお見舞いにやって来ていた俺は鍵と一対一で話す機会が有り、話していた。
幼い俺は泣きながら、だ。
「.....鍵ちゃん」
「.....翔太。どうしたの?」
「俺.....怖い。もし.....鍵ちゃんを失ったらって」
「.....」
俺は.....倒れた鍵を心配させまいと泣かないと決めたのに、親が居ない前で鍵と二人っきりの時。
簡単に言えば、二人で遊んでいる時は弱虫で本当に泣いていた。
転けただけで泣いたりとか。
鍵は家でも病室でも一人で絵本が読めるから大人びて見えた。
本当に知的に見えたのだ、当時の俺にとっては。
だから泣き縋っていたのも有るが。
今となっては少し恥ずかしい。
「もー!翔太、泣きすぎ!」
「だって.....怖いんだ。鍵ちゃんが.....!」
鍵に対して涙を流す俺。
そんな弱い俺に鍵は何時も言っていた。
この言葉を、だ。
鍵の名言セレクション的な感じだ。
「いい?翔太。いつも言っているけど、男の子は泣いちゃ駄目なの。強く、ヒーローで無いといけないの。雄々しく、ね?だから泣かない」
ヒーローで無いといけないの。
それが.....倒れる前からの鍵の何時もの名言だった。
俺は.....その言葉通り、ヒーローとして.....生きる事を決めたのだ。
しかし.....日に日に鍵の病状は悪化していき。
俺はヒーローじゃ無く。
現実を知る事になる。
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