第26話 奈々の晴れ舞台

体育祭のプログラムはそのまま予定通り進んで行き。

組体操も終わった時、俺の出番が近付いていた。

リレーのランカーとしての出番だ。


それが終わったら後は少ししたら休み時間となる。

まあそれまでの辛抱だが.....うーん。

面倒臭い.....。


「でも仕方が無いしな。頑張るか」


「逃げようとは思わないのか?」


「思わない」


「逃げても良いのよ?」


いや.....お前、しつこいぞ安藤。

その言い方と言いシ○ジのエ○ァじゃないんだから。

それよりも河瀬と白夜の晴れ舞台を見なくて良いのか。


次は女子の踊りに近いやつだぞ。

と思いながら安藤を見ると安藤は既に目をそちらに向けて興奮していた。

この野郎。


「白夜のへ、ヘソ出し衣装.....ハァハァ.....女子の.....ハァハァ!」


「お前.....」


「お、お前!ヘソ出しだぞ!しかもスカート短い.....はぁはぁ」


コイツ.....キモい。

俺はその一言だけが頭に浮かぶ。

顔を引き攣らせながら組体操の為に脱いだ服を整えながら。

首を回して目の前を見る。

もう直ぐ女子の踊りだ。


「ところでよ」


「.....何だ」


「さっきの.....二人三脚だけど紙に何が書いてあったんだ?」


「お前が用意したんだから書いてある事くらい知っているだろ」


いやそれはそうなんだけど、俺は.....そこだけは協力して無いから、と安藤は首を振りながら言う。

じゃあ何が書いて有るか知らなかったのか?

俺は思いつつ溜息を吐きながら頭を掻く。


「あのな、一応はお前のせいで奈々に関連するものに当たっちまった」


「.....え?」


「そういう事だ。分かったか」


「.....え?ああ.....うん?」


俺の威圧に怯みながら安藤は頷く。

すると、音楽が聞こえてきた。

俺は安藤に始まったっぽいぞと言う。

今年の楽曲は.....アレか。

さく○んぼか。


思いながら見つめる。

すると、突然の事だった。

白夜と河瀬、いや。

クラスの女子達が.....奈々の元へ行った。

へ?


『ここからは.....神谷奈々さんに協力してもらいます!』


アナウンスはそう流れた。

は?え?

どうなってやがる。

俺は安藤は目が点になった。


訳も分からない様な感じで奈々が飛び入り参加した。

俺は.....???を浮かべてプログラム表を見る。

そこには参加型と刻まれてあった。


「.....まさか.....」


「なぁ?谷川。なんだあれ?」


「.....多分、奈々の為にサプライズで白夜と河瀬が用意したんだろ」


「.....え?あ、マジで?」


そして見ると、奈々も踊っていた。

まるで.....そう。

煌びやかな嬉しさが絶えない花嫁の様に、だ。

俺は少しだけ柔和にそれを見つめる。


「.....変わったな。アイツも」


「.....お前もな」


「.....俺?」


「.....ああ。お前は女嫌いだったじゃねーか。随分、奈々のお陰で変わってるぞ」


そうかな。

俺は.....そうなのかな、と思う。

鍵が望んだ姿になっているのだろうか、俺は。

その様に思いながら、女子と奈々の踊りを.....暫し楽しんでいた。



少しの休み時間。

俺は奈々と流星の元へやって来た。

二人はニコニコしている。

俺はその姿に少しだけ笑みを浮かべた。


「楽しかったです」


「.....そうだね。りゅーちゃん」


「.....良かったな。お前ら。にしても.....」


河瀬と白夜、そして.....クラスメイト達がまさかこんな事を計画しているなんてな。

俺はその肝心の二人を見る。

肝心の二人は俺に笑みを浮かべていた。


「お前ら。有難うな」


「先生と協議するのが大変だったけどね。上手く行って良かった」


「.....本当に感謝だよ。お前ら」


感動したしな。

俺は.....うん。

その様に思いながら笑みを見せる。

すると、奈々がとんでもない事を言った。


「でも楽しそうな学校ですね。その.....お兄さんも居るし、学力も然程変わらないから.....転学しようかな.....」


「え?」


その言葉に俺はビックリしながら居ると、奈々の母親と父親。

つまり、神谷ヒロシさんと神谷美奈子さんが良いわね、良いんじゃないか?

と言った.....え!?

そんな簡単で良いのか!?お嬢様学校なんじゃないか!?


「ちょ、そんな簡単に.....」


「私も転学するよ。お兄ちゃん」


「りゅ、流星まで!?」


「手続きしておかないとですね」


聡子さんまで!?

俺は大慌になる。

それを見ながら安藤がアッハッハ!と言って満面の笑顔で賑やかになるぜぇ!と言いやがった。


コイツ、人ごとの様に!と思いながら居ると。

長嶋が頷きながら言った。


「ウンウン。この学校は良い学校だと思います。私はちょっと都合上、無理ですが、頑張って下さいね」


「えええ.....」


長嶋の言葉に俺は慌てまくる。

何でか知らないが転学が決まろうとしていた。

説得しようと思ったのだが、チャイムが鳴り説得し損ねてしまい.....。

そして話は途切れてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る