第25話 男女混合二人三脚
「安藤の騎馬戦は午後だな」
「.....おう.....」
「.....いやいや顔上げろよ安藤、お前.....仕方が無いだろうよ」
そんなに嫌でもな。
それから顔を何時迄も落としていてもそれ相応にウザいだけなんだが。
俺は盛大に漆黒の火の玉の様なモノが舞い散る安藤を見る。
開会宣言など開会式が終わり、俺達は応援席にやって来た。
だが安藤の落ち込みは治らない。
さっきの白夜の効果はどうしたのだ。
その様に思っていると背後から白夜の声がした。
「でもでも。智彦の格好良い姿が見たいな」
「フォォォォ!!!!!」
何だコイツ.....と思いながらの側で炎を吹き出す、安藤。
立ち直り早過ぎんだろ。
ガソリンのロボットかよ。
白夜が苦笑した。
「あはは。でも.....本当に、しょう、智彦、頑張ってね」
「騎馬戦以外にも.....体操とか有るしな.....面倒臭いな.....男子ってのは」
「だな!でも俺は燃えてきたぜ!愛しい恋人の為に!!!!!」
やったるぞ!うおおおお!!!!!と叫ぶ安藤はそのまま先生に怒られた。
俺とクラスメイトは苦笑しながら安藤を見つめる。
その中、俺はプログラム表を眺める。
プログラムの午後休み前、玉転がしの次が俺か。
そして体操が途中に有って.....うん。
やっぱり体育祭は面倒臭いな。
その様に思っていると背後に河瀬が事務テントに行っていた顎に手を添えながら帰って来た。
俺は、?、を浮かべながら見つめていると。
河瀬は俺を見つめてきた。
「.....翔太」
「ん?どうしたんだ?」
俺は?を浮かべたままプログラム表をポケットになおして言う。
何故この様な顔をしているのだろうかと思っていたが。
河瀬は意を決した様に俺に向く。
「.....二人三脚。男子女子混合。その、やってくれない?」
「.....え?田中(クラスメイト)はどうした?」
「田中、体調不良で抜けた。男子の知り合いは翔太しか居ないから.....」
いやいや、とは言えど.....次の次だろ。
練習もしてないし.....息合うのか?
俺は眉を顰めながら河瀬を見るが、お願いという感じの顔に。
嫌だ、とは言えず。
「.....分かった。仕方が無いか」
「うん。有難う。後で練習しよ」
「.....今からでも良いぞ。暇だし」
そんなに困った事にはならない。
そう、思っていた俺を殴りたかった。
河瀬との二人三脚。
かなり問題が有ったのだ。
☆
「.....河瀬。お前.....」
「.....ん.....翔太.....動かないで.....」
「.....何だこれ.....柔らかい.....」
「ど、どこ触ってるの!ヘンタイ!」
紐が思いっきり絡まってしまった。
そして俺は河瀬の胸の中に収まってしまい。
身動きが取れなかった。
ヤバくね?これ。
「.....しょ、翔太.....それ以上動かないで.....」
「.....お、お前こそ、ず、ズボンに触るなっての.....!」
ああ!人が居ない場所で良かったと思う!
この場所はトイレの裏側の日が当たらない場所だ。
臭が有るから良いと思っていたんだが.....。
俺は必死に現状況から、もがく。
しかし、ズボンが脱げるのと。
河瀬の胸に突っ込んでしまい動けん。
いけない何かが......起動しそうだ!
「お兄さん?なに.....を.....」
まさかだった。
奈々が俺達を見つけてしま.....った。
俺は冷や汗を流す。
と同時に黒いオーラが奈々から噴き出し始める。
「.....こんな場所で何をやっているんですか?お兄さん?#」
「.....奈々?落ち着け。マジで誤解だ。俺と河瀬は変な事をしている訳じゃ無い。二人三脚の練習だ!」
「お兄さん。それでそんな事にはなりませんよね.....?#」
ちょ、ちょっと待て。
な.....奈々の背後からダークマターの様なモノが出ている。
あの、奈々さん?非常に怖いんですが。
と思っていると奈々の後ろから更に安藤がやって来た。
安藤の目が逆三角形になる。
「何やってんだテメェ!!!!!奈々が居るのにこんな所で.....って!ぶっ殺す!!!!!」
「アホかテメェ!!!!!紐を解けって!誤解だ!!!!!」
「いやぁん!」
取り敢えず.....紐をマジで解けお前ら、誤解だマジに。
俺は必死にもがく。
そして紐を解き.....安藤を殴った。
☆
「男女混合の二人三脚ですか?」
「そうだ。直ぐに二人三脚だから俺達は練習していたんだ。必死に」
俺と河瀬は謝ってからその様に解説した。
俺に殴られてたんこぶが出来た安藤と。
奈々は顔を見合わせる。
それから安堵の息を吐いた。
「.....ああ良かったです。もう少しでお兄さんを警察につき出そうと思いました」
「止めろ。俺は変な事は絶対にしないから」
「谷川だけ.....」
「お前.....白夜が泣くからな」
痛い所を突いて話を逸らすなよと安藤。
いや別に逸らしてないからな.....。
にしても何で奈々がこの場所に居るんだ?
「.....そういや何でお前がこの場所に?奈々」
「あ、先生が呼んでましたよ?谷川って。だからお兄さんを探しに来たです」
「.....あー.....なるほどな。有難う。奈々」
「良いって事よ」
いや安藤、お前は何もして無いだろ。
俺はその様に溜息交じりで言う。
取り敢えずは先生の所へ行くか、多分アレだしな。
俺は河瀬を見る。
「.....二人三脚の件だよな?」
「そうだと思う。行こうか」
「.....ってか谷川。その二人三脚、変われや」
「喧しいわ、変態」
俺は安藤を睨み付ける。
それを笑いながら。
その場から応援席に戻った。
☆
あっという間に時間は過ぎ去り。
男女混合の二人三脚の時間になった。
俺は河瀬と共に門に並ぶ。
すると.....。
「.....」
「.....」
流星が猛烈な周りも唖然とする様にダークマターを噴出して観覧席に居た。
俺は冷や汗を流す。
せ、説明はきちんとした筈なのだが......。
長嶋、奈々も目が据わっている。
「.....誤解だっての.....」
「.....ね、翔太」
「.....な、何だ。河瀬」
「.....私が翔太を好きって言ったらどうなるの?」
ちょ.....え!?
俺はまさかの言葉に青ざめて慌てる。
だが、河瀬はクスッと言って冗談だよ、と言った。
それから俺に向く。
「.....奈々さん、大切にしなよ」
「.....驚かすなよお前.....今はそんなジョークは通じないぞ」
「.....ごめんね。ちょっと言ってみたかったから。クスクス」
俺は盛大に溜息を吐く。
すると、アナウンスが.....え?
俺は目をパチクリした。
丁度、アナウンスをしている.....奴が。
『谷川ァ!!!!!羨ましす!!!!!』
「.....何やってんだ。あのバカ殺す」
「何やってんの?安藤」
マイクを持って何だか......ノリノリな安藤がテントに居た。
俺は止めに行こうかと思ったのだが。
音楽が鳴り始めて.....。
俺と河瀬は入場するしか無くなった。
後で絶対に殺す。
☆
河瀬と俺は一生懸命に走る。
途中で.....転んでしまった為にランクを落とした。
それでも頑張って走って行く。
そうしていると途中に机が有る事に気が付いた。
紙が乗っかっている.....が?
「あ、あれ?借り物競走とは聞いてないんだけど.....」
驚きながら見開きつつ河瀬は言う。
周りの奴らも驚きの表情を浮かべていた。
予想外の展開だが.....。
まさかこれ.....。
「コラァ!安藤テメェ!!!!!」
『やったれ!谷川!』
アイツかこんな事を仕組んだのは!
そういや、アイツ裏方の委員だったもんな!
いつからだ!?
と思いながら居ると、安藤はいつの間にか先生にこっぴどく叱られていた。
だが、競技はそのまま続く。
仕方が無いと思いながら俺は中央に置かれていた紙を見る。
(大切な人)
「.....マジか.....」
「どうする?翔太」
「.....借りて来るしか無いだろ.....安藤のクソヤロウめ.....」
俺は紙を握って遠くの奈々を見る。
奈々は?を浮かべて流星と顔を見合わせていた。
俺は河瀬と共に観覧席に向かう。
「.....奈々!ごめんだが、来い!」
「え?私ですか!?」
奈々は周りの視線を見ながらやって来る。
そんな驚愕する奈々を連れて。
一緒にゴールを目指した。
そして。
何でか知らないが、他の奴らが戸惑っているせいで。
3位となった。
その中、ポールを持っていると奈々が???を浮かべながら見てくる。
「.....お、お兄さん?何が書かれていたんですか?」
「.....あ?.....ああ、秘密だ」
俺は紙をくしゃっと丸めて隠しながら。
苦笑する河瀬の側で。
紙をポケットにしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます