第九章 ネックレスの鍵

第21話 ネックレスの鍵の在りか

俺は帰宅後、少し時間が有ったので奈々の病院まで向かった。

そして俺は奈々の病室まで手土産を持って向かい、ノックをする。

すると奥に居る奈々から返事が有った。


「はい」


「俺だ。奈々」


「あ、お兄さん」


そして俺は病室を開ける。

オレンジ色の蜜柑の様な夕日の元、奈々が微笑んでいた。

短髪の茶色を靡かせて、だ。

俺は良い香りの風を嗜みながら和かにお土産を渡す。


「お兄さん.....これって」


「.....お土産だ。お前のな」


「.....あはは。やっぱりお兄さんは優しいですね。私の目は間違い無かったです」


俺は少しだけ笑みながらその風呂敷に包んだお土産を渡す。

そして奈々は嬉しそうに開けた。

俺が奈々に渡した物。

それは簡単に言えばマグカップだ。


「ツインマグカップですか!これ.....」


「おう。り.....」


「じゃあお兄さんと一緒に使いましょう」


嬉しそうに言う、奈々。

は、え.....と俺は動きを止めた。


ちょっとそれは予想外だ。

流星と共に使ったら良いと思ったのだが。

俺は少しだけ顔を引き攣らせたが、溜息を吐いた。


「.....分かった。一緒に使おうな」


「.....うん。有難うです。お兄さん!」


マグカップを横に置いてそして俺に笑顔を見せる奈々。

それから奈々はモジモジし始めた。

俺は?を浮かべながら見つめる。


「お兄さん.....その、手を握ってくれませんか」


「.....え?」


「.....私、お兄さんにお礼をしたいので.....」


「あ.....それで握りたいと。分かったよ」


俺は笑みを浮かべて近付く。

だが次の瞬間、予想外の事が起こった。

突然、俺の手を引っ張って.....奈々は俺の頬にキスをしたのだ。

そして赤面の顔を浮かべる。


「ちょ!?」


「有難う。お兄さん」


そして笑顔を見せた、奈々。

俺は予想外の事に赤面を浮かべながら頬を撫でた。

奈々はニコッとしている。

本当に.....全く。


「.....予想外だな」


「お兄さんの予想外を突くのが楽しいですから」


俺達は笑み合う。

それから.....夕日を見つめあった。

取り敢えず.....今はこのままで居たい。

その様に感じる様な時間だった。


「そう言えばお兄さん。私ですね、明後日には退院出来るみたいです」


「おおマジか。遂に退院出来るんだな」


「そうですね。早く外に出たいです」


奈々は苦笑気味に言う。

俺は嬉しい思いを抱きながら、奈々を見る。

それから俺は奈々に別れを告げて家に帰宅した。



「お兄ちゃん。今日はどうだった?」


「良かったよ。久々に」


「そう?それなら良かった。私も楽しめたから良かったしね」


お土産のキーホルダーを渡して喜んでいる、流星を見つつ。

風呂上がりの俺は飲み物を飲んだ。

やっぱ風呂上がりのポ○リは最高だな。

俺は流星を見た。


「流星。お前も風呂入って来たらどうだ?」


「え?あ、そうだね。入って来るね」


「おう」


そしてバタバタと聡子さんと親父が帰って来る前にと。

風呂に入りに行った。

俺はそれを見送ってからテレビを点ける。


ピコン


「.....長嶋?」


(今日は楽しかったです。そして.....助けてくれて有難う御座いました。これからもどうぞ宜しくお願いします)


律儀な野郎だな。

俺は苦笑しながら返事を打つ。

そして送った。

それからスマホから手を離して伸びをする。


そういや.....忘れていたが来週も体育祭の練習だな。

面倒臭いこったな。

俺は思いながらニュースを見つめる。


殺人事件があったそうな。

物騒だな.....


「.....」



「.....ん?」


「あ、起きた?お兄ちゃん」


「.....ああ、流星.....」


良い香りで起きた。

どうやら寝てしまっていたらしい。

俺はもう一度、寝る前にした伸びをして.....後ろを見た。

聡子さんも親父も帰って来ている。


「.....お前な.....風邪引くぞ?風呂入った後に寝ると」


「.....うるせえな親父。眠かったんだよ」


親父は苦笑しながら夕食の準備をする。

相変わらずの.....オールバックに最近生やし出した無精髭の親父。

なんつうか俺よりもかっこいい。

疲れて会社から帰って来た割には、だ。


「聡子さん。今日の夕ご飯は?」


「今日はパスタですよ」


俺はペペロンチーノと思われるパスタを見ながら準備に加わる。

今日は疲れた。

早く寝ようと思いながら.....準備をする。

すると聡子さんが驚きの事を言った。


「そう言えば.....会社に転勤して来た方が居るんだけど.....鍵ちゃんのお母様だったわ。偶然だけど.....」


「え?それって本当?お母さん」


「.....マジか.....」


俺は驚きに目を丸くしながら。

フォークとスプーンの準備をする。

そして.....少し懐かしい記憶を呼び起こした。


『鍵。将来、結婚しような』


『うん。翔ちゃん。結婚しようね』


そんな記憶が.....蘇った。

懐かしいこったな。

俺は苦笑しながら.....窓から空を見た。

その際に.....


「.....!」


『翔ちゃん。私ね、有る場所に.....大切な物を埋めたの。とある鍵だけどね。もし.....私が死んだらそれを.....手にして。必ず翔ちゃんの将来に役に立つよ』


「.....まさか.....」


俺は複雑な思いで見開いた。

周りのみんなが?を浮かべている。

鍵が.....遺した重要な物。

それを思い出したのだ。

だが.....。


「.....鍵.....お前。.....その鍵は一体、何処に有るんだ.....?」


俺は.....チャリとネックレスに触れながら。

少し複雑な顔をした。

それだけが.....どうしても思い出せない.....。

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