第15話 アルバム

一体、どういう事なのかというと。

鍵の友人の白夜の話によると。

河瀬は鍵の近所の幼馴染という事らしい。

鍵の病室に何度も足を運んだ俺は河瀬の事をすっかり忘れていたのだがそれは何故なのか分からなかったが。


それの原因も直ぐに分かった。

先ず河瀬が鍵の体調不良の現実を知りたく無かったから鍵の病室にあまり行かなかったらしい。

だがそれでも。


河瀬は大切な幼馴染の為に俺を.....護っていた。

しかもそれを使命にしてずっと守っていたらしい。

だが.....いつしか話が拗れ。


小学校の頃にイジメの様な事を河瀬がして来ていたのは俺を気に掛ける為。

その小学校を俺が転校した際に河瀬は必死に俺を探して水族館で出会ったのはそれの為だった様だ。


河瀬はずっと俺を探していたのだ。

その為に.....水族館で出会った時は.....本当に涙が出そうになったという。

何故.....一体何故.....鍵は俺に詳しく教えてくれなかったのだろうか.....河瀬の事を。


お陰で今までずっと.....河瀬の事を敵視してしまっていた。

それを本来はするべきでは無かったのに。

今現在、俺、河瀬、白夜、安藤。

その四人で.....昼食後に屋上に集まっていた。


「.....つまり.....お前は.....鍵の幼馴染なのか.....」


「そういう事.....うん」


「.....信じられねぇな」


「.....でも、錦は.....うん、ずっと約束を守っていたんだよ」


安藤は腕を組みながら目をパチクリする。

しかし.....何故.....そんな重い責任を押し付けたのだろう鍵は。


俺は複雑の面持ちで.....河瀬を見つめる。

すると.....白夜が俺に向いてきた。

それから複雑な顔で話す。


「.....ごめんね。知っていれば良かったんだけど私も初めて気が付いたよ。錦が.....そんな秘密を抱えていたなんて」


「.....そうだな。俺も初めてだ」


余りにも謎が多過ぎる。

しかしそれはそれとして。

白夜の鍵との約束って何なのだろうか。

俺は.....思いながら顎に手を添えて白夜を見た。


「白夜。お前さ、確か最後に鍵と約束を交わしていたって言ってたよな?それは何だ?」


「.....うん。そうだね。今こそ話す時かな。私ね.....鍵とはこんな約束をしたんだ。えっとね。鍵と、しょう、一緒に.....アルバムを作りたかったの」


「.....アルバム?」


「より正確に言えば、私達のアルバム。思い出のね。それは.....しょう、が悲しまない様にってする為に、ね」


二つ目の.....最後に遺した物。

それは.....俺へのアルバムを残すという事。

俺は.....頭に手を添えた。

鍵.....お前という奴は.....俺が好きだったのか?


「.....でもまさか、しょう、の為にボディガードまで鍵が頼んでいたなんて思って無かったよ。.....それも錦が、ね」


「.....私は.....翔太が.....心配だったしね」


「.....」


俺は.....複雑な思いで顔を上げる。

目の前で安藤が涙を流していた。

感涙の涙の様だが.....その、ウザいな。

俺は.....苦笑しながら二人を見た。


「.....お前ら。有難うな。それから河瀬」


「何」


「.....有難う」


河瀬は赤面で別にと言う。

ただ、そうとしか今は言えなかったけど。

でも本当に.....嬉しかった。

陰ながら.....皆んなが俺を支えてくれていて.....。


「谷川。愛されてんな。お前」


「.....そうだな」


俺は涙を拭った。

正直言ってここまで愛されているなんて思って無かったからよ。

俺はその様に思いながら.....白夜と河瀬を見る。


「.....今な、俺は.....とある女性から恋のアピールを受けているんだが.....その女の子は.....白血病なんだ。もし良かったら.....お前ら。其奴も支えてほしい。俺からのお願いだ」


「しょう.....彼女が?」


「.....あの子だね」


頭を下げる、俺。

すると皆んなが顔を見合わせて。

俺に向いてくる。

皆んな柔和な顔だった。


「.....助けようね」


「翔太の彼女なら.....うん」


「谷川の為なら」


この世界は狭いと感じていた。

だけど、こうして.....支えてくれる人達が居る。

俺は.....幸せなのかも知れないな。

そして.....そろそろ恋をしても良いのかも知れないと。


「.....人は.....変われるんだな」


「.....ん?どうした?」


「.....いや。チャイム鳴るし戻ろうぜ」


俺はその様に皆んなに言って立ち上がる。

それから.....俺達は屋上から出る。

青空を見上げて、だ。



『そんな事があるなんて凄いね』


「.....そうだな。何処までも鍵のお世話になるな、本当に」


五時限目、男子トイレ。

少し暇が有ったので奈々と会話していた。

奈々は驚きの声を上げている。

俺は苦笑しながら奈々に全てを話したのだ。


『鍵さんか.....会ってみたかったな。私』


「そうだな。俺も.....もう一度会いたい気がする」


『.....うん。お兄さんの事が好きだったんだよね?鍵さん』


「.....だと思う」


じゃあ私、鍵さんの意思を受け継がないとね。

と張り切る様な声を出す奈々。

俺は.....それを聞きながら.....少し口角を上げた。


『.....あ、そう言えば.....もう直ぐ.....体育祭って聞きましたよ。お兄さん。りゅーちゃんから』


「そうだな。体育祭の練習が始まると思う」


『応援に行きますから。私』


「無茶言うな。お前.....」


無茶じゃ無いです、愛しい人の応援に行かないでどうするんですか?

と、怒り気味に話す奈々。

俺は.....それを聞きながら嬉しく思いつつ時計を見る。

あ、間も無くだな。


「.....すまん。次の時間が始まる。じゃあな」


『あ、そうですか。じゃあ』


「ああ、またな」


そして俺は携帯を切った。

それから.....男子トイレの個室を出て歩き出す。

仲間と共に.....奈々を助けよう。

そして.....俺は。

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