第六章 鍵の最後に残したもの
第13話 鍵の唯一の友人
この空は一つしか無い。
それが地球だ。
だけど、そんな空から照らされているこの場所には色々な人生が有る。
それらはまるで.....育つ木々や花々の様に。
個性が有る様に。
二人は言った。
流星は俺が好き。
奈々は俺が好き。
とだ。
だけどそれでも義妹の流星は願った。
この空に羽ばたける様に、俺達の幸せを、だ。
俺は今、正念場を迎えている。
義妹の願いを叶えるべきという正念場に。
必死に願っている義妹の願いを.....叶わずにボーッと居るのは.....人間じゃ無い。
人としてどうかと思う。
だから俺は.....奈々を守ろうと思った。
願われたのだ、そう。
俺が太陽なら。
奈々は花々。
そう、守ると。
☆
「お兄ちゃん」
「.....どうした」
テレビを観ていると、その様に言われた。
俺はテレビのボリュームを下げて流星に向く。
流星は俺を見つめて笑顔になった。
「.....今日は有難うね。凄く格好良かった」
「でも最後はお前のお陰だよ。俺は.....やっぱり弱いな」
「.....そんな事無い」
ギュッと俺を抱きしめてきた、流星。
シャンプーの香りがして少しビクッとする。
が、そんな事は御構い無しという感じで.....流星は話した。
「お兄ちゃんはヒーローだね」
「そんな事は無いさ。俺は.....ヒーローじゃ無い」
「ヒーローだよ。クスクス」
そして抱き締めるのをやめてから立ち上がって。
俺を見てから言った。
コップを持つ。
「お茶飲む?」
「そうだな」
「.....じゃあ淹れるね」
俺は頷きながら、少しだけ鼻息を出した。
それから.....年間行事予定を見る。
また忘れていたが.....5月になると体育祭という事になるな。
困ったもんだ。
「.....おい。流星。お前んとこの体育祭って何時だ?」
「私の学校は8月じゃ無かったかな。お兄ちゃんの応援に行けるよ」
「それは勘弁してくれ。恥ずい」
「うふふ。何を言っているの?ヒーロー」
何時までコイツはヒーローと言ってんだ。
俺はヒーロー擬きだ。
だから.....微妙だ。
「.....はい。お兄ちゃん」
「有難うな。.....練習キッツイな」
「そうだね。でもお兄ちゃんなら大丈夫だよ」
「.....俺は運動音痴だ」
それも個性だよ。
と言う、流星。
俺は溜息を吐きながら苦笑した。
そしてお茶を飲んだ。
有る意味、今の一時は一兆円有ろうが.....変えられない。
☆
「ういーす、安藤」
「.....お、お.....う.....」
「何だお前?」
「あ?何だお前じゃねーよ。この気持ちが分からんのかお前は」
翌日木曜日。
ってか、分かるかアホ。
何だよ人が折角、声掛けてやったらそんな暗い。
まるで地獄を見る様な感じだな。
「何だよお前?体育祭か?もしかして」
「当たり前だ!憂鬱だろあんなゴミ祭!」
「.....まぁ俺も憂鬱だわ」
「だろ!?雨降れやコラァ!!!」
煩いし、それにそんな事したって体育祭には練習が有るだろうよ。
俺は溜息を吐きながら目の前を見る。
電柱の側に女の子が立っていた。
何だあれ?
「.....またすげぇ可愛いな.....でもアレ.....うちの高校の制服だよな?身長低いけど」
「.....確かにな.....でもコスプレだろ。小学生みたいな奴だぞ。.....ってか、お前、あんなちっこい少女に興味有るの?このロリコン」
「おま.....安藤.....お前に言われたくは無い」
何を言ってんだこのクソッタレ。
老若男女問わずに襲いかかる癖に。
と思いながらもう一度、その少女を見る。
白髪の白髪眉毛。
そして.....目が大きく、しっとりしている。
砂糖菓子で出来ている様な.....余りに想像絶する美少女。
俺は.....?を浮かべながら.....その美少女と野次馬を見ていた。
「.....!」
「.....?」
ふと、目が合った。
そして笑顔で抱き締められた.....え!?
安藤が目だけ動かして唖然としている。
ちょ、何だ!?
俺はその勢いに押し倒される。
「しょう!久しぶり!」
「しょう!?お前.....誰だ!?」
ハッとした。
安藤が.....血涙を流している。
その背後からは.....男子生徒達がフ○ックという感じで立っていた。
ボキボキ手を鳴らしている。
ちょ、おい!安藤まで!
「しょう、私。白夜だよ?佐藤白夜(サトウビャクヤ)。忘れた?」
「し、知らん!?.....って.....佐藤白夜.....ああ!?お前.....!?」
記憶を呼び起こす。
確か、鍵と一緒に遊んでいた.....俺を見ていた.....あの女の子。
白髪では無かったが.....確か、佐藤白夜と聞いた覚えが。
病院で仲良くなっていたよ.....うな?
「.....白夜?お前.....何でこの場所に?」
「.....うん。鍵が亡くなって.....それから貴方の住所を調べようと思ってようやっと来れたの。久々だね。鍵.....の事.....友達として残念に思ってる」
「.....そうだな.....そうか.....」
俺達は笑みながら話す。
すると猛烈な負のオーラを感じた。
背後を見ると.....安藤がニコッとしている。
が、目が笑ってない。
「オイ。俺を置いて何をやってんだオメェ。また.....女の子に好かれているのかお前は!!!訳を話してもらうぜぇ!!!」
「安藤?お前.....落ち着け.....」
「落ち着けるかこの馬鹿!.....よし、掛かれ!皆の衆!」
「「「「「うおー!!!」」」」」
ふざけんなテメェら何をやってんだ!
他の見知らぬ男子生徒も巻き添えにして!
俺は手を掴んで走り出す。
まるで、国を追われた姫の手を握って駆け出す様に、だ。
「やっぱり.....君の事、忘れてないな。私」
「.....あ!?何だって!?」
「何でも無いよ!」
嬉しそうな白髪をなびかせている白夜を見ながら。
俺は学校まで駆け出す。
安藤はもう駄目だ、アイツは.....Tウイルスに感染した!
と思いながら.....走る。
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