第六章 鍵の最後に残したもの

第13話 鍵の唯一の友人

この空は一つしか無い。

それが地球だ。


だけど、そんな空から照らされているこの場所には色々な人生が有る。

それらはまるで.....育つ木々や花々の様に。

個性が有る様に。


二人は言った。

流星は俺が好き。

奈々は俺が好き。

とだ。


だけどそれでも義妹の流星は願った。

この空に羽ばたける様に、俺達の幸せを、だ。

俺は今、正念場を迎えている。

義妹の願いを叶えるべきという正念場に。


必死に願っている義妹の願いを.....叶わずにボーッと居るのは.....人間じゃ無い。

人としてどうかと思う。

だから俺は.....奈々を守ろうと思った。

願われたのだ、そう。


俺が太陽なら。

奈々は花々。

そう、守ると。



「お兄ちゃん」


「.....どうした」


テレビを観ていると、その様に言われた。

俺はテレビのボリュームを下げて流星に向く。

流星は俺を見つめて笑顔になった。


「.....今日は有難うね。凄く格好良かった」


「でも最後はお前のお陰だよ。俺は.....やっぱり弱いな」


「.....そんな事無い」


ギュッと俺を抱きしめてきた、流星。

シャンプーの香りがして少しビクッとする。

が、そんな事は御構い無しという感じで.....流星は話した。


「お兄ちゃんはヒーローだね」


「そんな事は無いさ。俺は.....ヒーローじゃ無い」


「ヒーローだよ。クスクス」


そして抱き締めるのをやめてから立ち上がって。

俺を見てから言った。

コップを持つ。


「お茶飲む?」


「そうだな」


「.....じゃあ淹れるね」


俺は頷きながら、少しだけ鼻息を出した。

それから.....年間行事予定を見る。

また忘れていたが.....5月になると体育祭という事になるな。

困ったもんだ。


「.....おい。流星。お前んとこの体育祭って何時だ?」


「私の学校は8月じゃ無かったかな。お兄ちゃんの応援に行けるよ」


「それは勘弁してくれ。恥ずい」


「うふふ。何を言っているの?ヒーロー」


何時までコイツはヒーローと言ってんだ。

俺はヒーロー擬きだ。

だから.....微妙だ。


「.....はい。お兄ちゃん」


「有難うな。.....練習キッツイな」


「そうだね。でもお兄ちゃんなら大丈夫だよ」


「.....俺は運動音痴だ」


それも個性だよ。

と言う、流星。

俺は溜息を吐きながら苦笑した。

そしてお茶を飲んだ。

有る意味、今の一時は一兆円有ろうが.....変えられない。



「ういーす、安藤」


「.....お、お.....う.....」


「何だお前?」


「あ?何だお前じゃねーよ。この気持ちが分からんのかお前は」


翌日木曜日。

ってか、分かるかアホ。

何だよ人が折角、声掛けてやったらそんな暗い。

まるで地獄を見る様な感じだな。


「何だよお前?体育祭か?もしかして」


「当たり前だ!憂鬱だろあんなゴミ祭!」


「.....まぁ俺も憂鬱だわ」


「だろ!?雨降れやコラァ!!!」


煩いし、それにそんな事したって体育祭には練習が有るだろうよ。

俺は溜息を吐きながら目の前を見る。

電柱の側に女の子が立っていた。

何だあれ?


「.....またすげぇ可愛いな.....でもアレ.....うちの高校の制服だよな?身長低いけど」


「.....確かにな.....でもコスプレだろ。小学生みたいな奴だぞ。.....ってか、お前、あんなちっこい少女に興味有るの?このロリコン」


「おま.....安藤.....お前に言われたくは無い」


何を言ってんだこのクソッタレ。

老若男女問わずに襲いかかる癖に。

と思いながらもう一度、その少女を見る。


白髪の白髪眉毛。

そして.....目が大きく、しっとりしている。

砂糖菓子で出来ている様な.....余りに想像絶する美少女。

俺は.....?を浮かべながら.....その美少女と野次馬を見ていた。


「.....!」


「.....?」


ふと、目が合った。

そして笑顔で抱き締められた.....え!?

安藤が目だけ動かして唖然としている。

ちょ、何だ!?

俺はその勢いに押し倒される。


「しょう!久しぶり!」


「しょう!?お前.....誰だ!?」


ハッとした。

安藤が.....血涙を流している。

その背後からは.....男子生徒達がフ○ックという感じで立っていた。

ボキボキ手を鳴らしている。

ちょ、おい!安藤まで!


「しょう、私。白夜だよ?佐藤白夜(サトウビャクヤ)。忘れた?」


「し、知らん!?.....って.....佐藤白夜.....ああ!?お前.....!?」


記憶を呼び起こす。

確か、鍵と一緒に遊んでいた.....俺を見ていた.....あの女の子。

白髪では無かったが.....確か、佐藤白夜と聞いた覚えが。

病院で仲良くなっていたよ.....うな?


「.....白夜?お前.....何でこの場所に?」


「.....うん。鍵が亡くなって.....それから貴方の住所を調べようと思ってようやっと来れたの。久々だね。鍵.....の事.....友達として残念に思ってる」


「.....そうだな.....そうか.....」


俺達は笑みながら話す。

すると猛烈な負のオーラを感じた。

背後を見ると.....安藤がニコッとしている。

が、目が笑ってない。


「オイ。俺を置いて何をやってんだオメェ。また.....女の子に好かれているのかお前は!!!訳を話してもらうぜぇ!!!」


「安藤?お前.....落ち着け.....」


「落ち着けるかこの馬鹿!.....よし、掛かれ!皆の衆!」


「「「「「うおー!!!」」」」」


ふざけんなテメェら何をやってんだ!

他の見知らぬ男子生徒も巻き添えにして!

俺は手を掴んで走り出す。

まるで、国を追われた姫の手を握って駆け出す様に、だ。


「やっぱり.....君の事、忘れてないな。私」


「.....あ!?何だって!?」


「何でも無いよ!」


嬉しそうな白髪をなびかせている白夜を見ながら。

俺は学校まで駆け出す。

安藤はもう駄目だ、アイツは.....Tウイルスに感染した!

と思いながら.....走る。

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