第10話 転校生、河瀬錦

俺は愛やその周りの何かを失った。

それなのに、義妹が俺を、義妹の友人が俺を。

それぞれ愛してくれている。


俺は絶対に答えを出さないといけないかも知れない。

このままの状態は絶対に駄目だ。

だけど一歩を踏み出す勇気が.....俺には無い。


例えで言えば、俺の心は交差点の赤信号だ。

それで何時迄も.....歩み出せない。

だから.....怖いのだ。


もうこれ以上.....何かを失うのはごめんだと。

そう思って、だ。

俺は死神に近い.....と言うか、死神だ。


何故かと言われたら.....俺が愛したモノは全て。

みんな.....消えてしまったり。

俺の元から離れる。


まるで.....雪だるまが消える様に。

銀世界が消える様に。


そんなのはもう.....ごめんなんだ。

辛いんだ、そんなのは。

なのに皆んな.....俺を愛してくれる。

何故なのだろうか。


俺は.....神に愛された人間じゃ無いんだ.....。



「お兄ちゃん。大切な話が有るんだけど」


「.....何だ」


翌日の放課後。

今日は安静が必要だと病院に行けなかった。

義妹の問い掛けに俺は.....その様に話す。

多分あの事だろうと、テレビのスイッチを切った。

そして義妹に静かに向く。


「.....私の事だけど」


「.....」


俺は.....静かに前を見据える。

流星はモニュモニュしながら、赤面でこの様に話した。


「私.....助けられた時からお兄ちゃんの事が好きみたいなの」


「.....そうか.....」


あ、でもね、と言う流星。

俺は?を浮かべた。

そして.....義妹を見つめる。

義妹はソファに腰掛けた。


「.....取り合ったりはしない。そしてお兄ちゃんの事を配慮する。お兄ちゃんは.....ななちゃんだけを愛して。お願い」


「.....知っているよ。俺は.....お前の感情」


「.....やっぱり聞いていたんだね。足音がしたから.....」


だから告白したんだけど.....ね。

と言う、流星。

俺は.....その整った顔立ちの流星の顔を見ながら俯く。

流星は話を続けてくれた。


「.....ななちゃんがお兄ちゃんと結ばれるのを祈ってる。だから.....お願いね。私の願いを聞いて」


「.....何でお前はそんなに奈々の事を?」


「.....ななちゃんは私のお友達だから。とても大切な。ななちゃんがお兄ちゃんを愛した。だから私は.....手出しはしない」


「.....強いな.....お前」


ううん、強く無いよ。

その様に話す、流星を見つめる。

流星は柔和な顔をして立ち上がった。

そして俺に向く。


「紅茶飲む?」


「.....そうだな」


俺は頷く。

すると流星は分かったと言って台所に向かった。

俺は.....それを静かに見送って。

俯いた。



そして更に翌日になった。

俺は安藤と共に登校して教室までやって来てから。

椅子に座ってホームルームを待っていた。

今日、転校生がやって来ると.....騒ぎになっている。

安藤もウキウキな感じだった。


「.....な?転校生ってどんな奴なんだろうな?」


「.....風の噂では女の子らしいぞ」


「マジで?だったら仲良くしたいな。フォークダンスとか踊りたい!」


そういや、体育祭が5月だ。

何故その時期かと言われたら.....簡単だ。

夏は暑いからだろう。

しかしフォークダンスって色々と違うだろ。

アレは確か.....火の周りで踊るやつだろ。


「.....お前な。フォークダンスは.....」


「やったるぜ俺は!」


「.....話を聞け」


でもまあ。

その転学して来る女子がどんなんか。

気にはなるな。

と思っていると始業の時間があと三分。

悶えている安藤に言った。


「.....おっと、始まるぞ」


「お!いよいよですな!はっはっは!」


「呑気かよ.....」


手を挙げて後でな。

と言って、安藤は自分の席に戻って行った。

俺はそれを見ながら真正面に向く。


キーンコーンカーンコーン


とチャイムが鳴り。

そして担任と.....

担任と。

まさかだった。


「.....河瀬.....!?」


俺はその女に青ざめる。

その河瀬は俺を見つけるなり見開いて。

それからほくそ笑む様な感じを見せ。

そして口を開く。


「.....何で翔太がこのクラスに?」


「.....お前こそ何で.....居るんだ!」


クラスが騒ぎになる。

担任も驚愕して俺と河瀬を見る。

安藤は俺に耳打ちをしてきた。


「知り合いか?」


「.....知り合いだが.....コイツは.....俺の学校生活を破壊した人物に近い」


「.....は!?」


安藤は見開く。

俺は.....河瀬を睨みつけた。

しかし、膝が痙攣している。

恐怖でだろうけど。


「.....失礼ね。私は.....破壊した訳じゃ無いから」


「.....お前のせいで学校に.....居られなくなったのは事実だろ」


すると担任が怒った様に俺達の間に入って来た。

出席簿で俺と河瀬の頭を叩く。

それから。


「椅子に座れ。谷川」


「.....はい.....」


「それから落ち着け。良いか」


「.....はい.....」


担任はその様に話した。

しかし.....駄目だ.....。

河瀬の顔を見る度に.....動悸が出る。

イライラが止まらない。


「.....大丈夫か?」


「.....ああ。.....まあな」


安藤に返事をしてから。

頭に手を添えて座る。

こんな事になるとは.....。

俺は思いながら、河瀬を見つめた。

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