第四章 隠せない思い

第9話 私はお兄ちゃんを好きなの?

その総合病院で1週間入院となった、奈々。

俺は家で.....携帯を眺める。

気が付けば俺はリビングで検索欄で白血病と。

そう、無意識に調べていた。


そんな事をしたら変な記事が出て不安を煽るだけかも知れない。

だけど、知っておきたかった。

それで.....調べたのだ。


その中で分かったのは先ず、白血病には二種類ほど.....種類が有り、慢性なのも有るという事らしい。

俺は.....それを見てからスマホを握ったままソファに深く腰掛けた。

そして点けているテレビを見遣る。


なんか.....子供向けアニメが有っているが.....俺はちっとも笑えなかった。

そういやずっと心の底から笑ってない。

いつからと言えば.....奈々が倒れてからだろうけど。


数時間も経過するが心の底からまだ笑ってない気がする。

って、いや.....違うか。

それは違う。


鍵が亡くなってから.....笑うのを忘れたのだ。

そして.....アイツに酷い目に遭わされてから.....忘れたんだ。

俺はこの先、笑えるのだろうか。


あんな酷い事や、色々有った中で。

そう、思っていると流星がやって来た。

それから俺に笑む。


「お兄ちゃん」


「.....どうした。流星」


「.....いや、大丈夫?ななちゃんが倒れてから.....疲れていると思って」


「俺は.....大丈夫だ」


俺をそう?と見てくる流星。

そんな流星は俺の側に腰掛けた。

俺は真正面の.....アニメを観ながら、流星に尋ねる。


「.....白血病だったの.....いつ知ったんだ?」


「.....出会った時に告白してくれたよ。ななちゃんがね。複雑な思いだった」


「.....俺は聞いてから.....ショックだったよ.....また.....俺が不幸にしたのかって思って」


その言葉に俺を見てくる、流星。

そして言って来た。

首を振る。


「.....お兄ちゃん。死なないよ。ななちゃんは。だから側に居てあげて」


「.....正直言って.....死神に近いよ。俺」


「お兄ちゃんはそんなんじゃ無いよ」


俺の手を優しく握ってきた。

そして俺に向く。

俺は.....びっくりしながら流星を見た。

流星は俺に話してくる。


「.....男性恐怖症の私を結構、助けてくれたんだから。自信を持って」


「自信か.....」


自信.....な。

情けなく感じる。

何故、俺は.....こんなに自信を持てなくなったのだろう。

多分.....恋愛恐怖症になってからだろうけど.....。


「.....良い加減に自信を持った方が良いよな。俺は.....」


「そうだと思うよ。.....鍵さんもきっと.....それを望んでいると思うから」


俺は.....目を閉じる。

麦わら帽子の笑みを浮かべている鍵の姿が見える。

向日葵も見えた気がした。

俺は.....その鍵を見ながら、頷く。


「.....奈々の側に居てあげるか」


「.....それでこそお兄ちゃんだね。大丈夫だよ。私が上手くいく様にセッティングしてあげるから.....」


「.....有難うな、流星」


そして俺は流星の手を握ろうとした。

のだが、流星はビクッとして手を退ける。

俺は、あ、すまない、と言った。

流星は、い、いや、と言う。


「.....何だお前?悲しげな.....ってか、顔が赤いぞ?」


「.....へ?あ.....いや.....何でも無い.....」


「.....???」


流星はそそくさとリビングから出て行ってしまった。

すると暫くして聡子さんと親父が帰って来て。

流星も戻って来たが.....何だか様子がおかしい様な?

熱でも有るのだろうか.....?



夜空の星は不思議な存在だと思う。

単独で居たり、お互いに連なる事も有る。

だから俺は.....星を見ながらいつか。


あんな感じで身体も自由になれたらな、と思ったりもする。

俺は.....窓から星を見ながら、スマホを見る。

しかしその行動をしながらも.....さっきの.....流星の様子が気になっていた。


「.....確かめるか」


俺はその様に思って、学習椅子から立ち上がる。

それから.....ドアを開けて部屋を出て。

隣の.....部屋。

つまり流星の部屋をノックしようとしたところで手を止めた。


「.....何で.....お兄ちゃんを好きになっているの.....私.....」


その様に聞こえたのだ。

俺はビックリして.....そのままノックの手が止まってしまった。

何だって?

え.....流星が、か?


「.....」


ノックの手が.....動かない。

だけど部屋にも戻れなかった。

何故なら、グスングスンと嗚咽混じりの声が.....。

俺は.....膝を殴る。

そして.....静かに部屋に戻って来た。


「.....」


『私は.....男性恐怖症です』


「.....あの.....流星が.....か」


多分、流星の事だ。

奈々の為に恋愛感情を押し殺していたのだろうと思う。

俺は.....涙を浮かべてそしてポロポロ流した。

真珠の様な涙が出る。


何故みんな.....そんなに思ってくれるんだ。

俺は.....涙が止まらなかった。

優しすぎんだろ.....皆んな。


「.....俺はそんなに良い人間じゃ無いんだ.....」


普通に恋愛感情の死んだ人間だぞ。

そんな人間は愛されないのが普通なのに。

皆んな優しくて想ってくれて.....涙がとめどなく流れた。

髪の毛が涙で濡れるぐらいに。

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