第5話 誘いからのデート

何度も言うが俺は女性恐怖症だ。

それは昔、好きな大切だった女の子が病気で亡くなって。

そして.....二回目の恋は好きな女の子に裏切られた。

その為に俺は.....臆病になったのだ。


その中で俺を.....心から好きだと言う女の子と出会った。

女の子の名前は神谷奈々。

髪がショートで、小麦色の肌をしていて。

そして.....八重歯がとても似合う、可愛らしい女の子だ。


だけどその女の子は.....健康的とは裏腹に。

血液の癌、通称、白血病を患っていた。

その事を告白されて、同時に好きと俺に告げてくれて。

正直言って、涙が止まらなくなった。


何故、神は俺に試練を与えるのだろうか。

好かれる意味合いは無いのに好かれるという試練。

そして.....俺の周りの女の子達は皆んな不幸になっていくと言う試練。

俺は.....正直言ってもうウンザリだった。


だから、神谷さんを殺したく無いと。

俺は死神だからと避けるけど。

神谷さんはそれすらも大丈夫と俺に微笑んだ。


何故なのだろうか。

怖く無いのだろうか。

俺は.....怖い。

とても怖いんだ。


「.....」


「お兄ちゃん」


「.....何だ」


「.....もしかしてななちゃんから告白された?」


自宅にて。

テレビをボーッと観ているとその様に言われた。

流星を見て、俺はリモコンを置く。

そんな流星は真剣な顔をして俺を見つめる。


「.....そうだな。だけど.....回答留保にした」


「.....それって彼女が.....白血病だから?」


「.....違う。俺は.....簡単に言うと.....怖いんだ。もう女性を失いたく無い。大切な人をこれ以上.....失いたく無いんだ」


「.....お兄ちゃんって幼馴染の人が居たよね?その人の事だよね.....」


その言葉に.....そうだな.....と俺は回答する。

それから流星を見つめる。

流星は.....複雑な顔をしていた。

そして流星はソファに腰掛ける。


「.....流星。ごめんな。お前の.....大切な友達なのにな」


「.....ううん。お兄ちゃんがそういうのに怖いのは知っているから。大丈夫だよ」


「.....俺は駄目な人間だな」


そう呟いて俺は.....俯く。

すると、流星が俺を抱き締めてくれた。

そして.....首を振る。


「そんな事無い。お兄ちゃんはお兄ちゃんだから」


「.....駄目な人間だよ。俺は.....臆病だな」


「お兄ちゃん.....」


思っていると、メッセージが入った。

俺は.....そのメッセージを開く。

そして読んだ。


(病院に行って来ます。愛してます。お兄さん)


「.....」


「.....ななちゃんから?」


「.....そうだな」


俺は.....そのメールを見ながら唇を噛んだ。

なんでこの子は頑張っているのに俺は何も出来ないんだろうか、と。

もどかしい気持ちだ。

怖い?それだけで立ち止まるのは.....どうなんだ。


「.....お兄ちゃん。今度、デートに誘ってみたら?」


「.....水族館とか.....?」


「うん。デートって言うか.....お誘い、みたいな」


「.....そうだな。それぐらいなら大丈夫かも知れない」


俺は頷く。

そして思いながらメッセージを送った。

水族館に行かないか?と。

すると直ぐにメッセージが来た。


(はい!嬉しいです!わーい)


「.....はは。子供みたいだな」


「.....ななちゃんはそんな感じだから.....」


今週の土曜日辺りはどうかな、とメッセージ。

そして、はい、とメッセージが来て計画になった。


俺達は顔を見合わせて、そして頷く。

それから.....デートのプランを考えようと。

流星から色々、アドバイスを聞いた。

女性恐怖症も治す為に、だ。



4月の第二土曜日。

俺と神谷さんのデートの当日。

待ち場所は.....この街の銅像の下。


流星から色々してもらった。

お弁当とか、コーディーネートとか。


「.....」


流星は頑張ってと言っていたが.....。

心臓がバクバクいっている。


何時迄もこれじゃ駄目だ。

俺は意を決して、胸を軽く叩いて。

そして.....明後日の方角を見つめると。


「お兄さん!」


袖無しの.....可愛い服を着て。

そして.....清潔感満載のスカート。

更に、髪の毛にリボン。

そんな感じの神谷さんが来た。

ゼエゼエ言っている。


「お、おい。大丈夫か?」


「早く会いたかったので.....」


「無理はすんな」


「はい」


赤面でモジモジする俺達。

すると、神谷さんが手を差し出してきた。

それから俺に笑みを見せる。

何時もの八重歯を見せて、だ。


「エスコートして下さい」


「.....俺は下手くそだが.....良いのか?」


「好きな人にエスコートしてもらうだけで大満足です。どんな感じだろうが構いませんよ」


ニコニコして、はにかむ神谷さん。

俺は.....苦笑しながらも。

手を取った。

そして.....水族館の方へ歩み出す。

最早、恋人繋ぎに近かった。


「えへ.....えへへ」


「.....どうした?」


「.....とっても幸せです。お兄さん」


えへへと言いながらその様に満面の笑顔で話す、神谷さん。

俺は.....少し汗を拭いながら。

今は神谷さんを精一杯、楽しませよう。

その固い決意で.....水族館へ向かう。


しかしこの後、俺は予想だにしない事態に遭遇する事になる。


一つだけ言える。

それは.....俺にとっては全く笑えない現象だった。

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