第二章 神谷奈々の全て

第3話 神谷奈々の真実

俺の全ては振り子だと思ってる。

振り子ってのは.....簡単に言えば右左にカチカチと動く。

俺の心もカチカチ動いているのだ。

その為に振り子だ。


メトロノームと表現しても良いかも知れないが、振り子の方がインパクトが有るかと思ったのだ。

俺は盛大に溜息を吐きながら通学路を歩く。

すると、背後から声を掛けられた。


「おっす」


「.....ああ。安藤か」


「.....どうしたよ?お前、疲れ切った顔してんぞ?」


安藤智彦(アンドウトモヒコ)。

俺の数少ない友人だ。

容姿としては.....眼鏡になよっとはしている。

だが.....やる時にはやる奴。


黒の短髪。

そして青年風の顔立ち、容姿が良いとは言えないがそれでも頼りになる奴だ。

身長171センチ、中肉。


「.....ああ。そのな。色々有るんだ」


「.....そうか?何だろうな。とにかくお疲れ」


「そうだな」


俺と安藤はその様に話しながら、歩く。

そして通学路を越えて、学校まで来てから。

教室に入って。


「んじゃ、また後で」


「そうだな」


安藤と別れた。

席に座る安藤を見送ってから.....俺は席に腰掛けて生徒手帳を開く。

と言うか.....開いてしまった。


そして生徒手帳の間に有る幼馴染の写真、鍵を見る。

優しい幼い笑顔が有る。

俺は.....涙が浮かんでしまった。

だから普段は開かないのに。


「.....何でだろうな。俺は.....何でこんなにも.....」


俺は.....お前に生きてほしかった。

そう思うんだ。

代われるもんなら代わってやりたかった。

それだけ.....愛していたのだ。


「.....でも何時迄もこんなんじゃ駄目だよな。な。鍵」


鍵は決して何も言わない。

だけど、静かに俺に.....助言をしている様な気がした。

俺は.....涙を拭ってそして。

生徒手帳を仕舞った。


「.....翼。表現するならお前はそんな感じかな」


鍵の事を思いながら、俺は目の前を見る。

間も無く、始業のチャイムが鳴ろうとしていた。

俺は慌てて準備をして。

そして.....先生を待った。



「おーう。飯食おうぜ」


「そうだな」


四時限目になった。

俺は.....弁当を取り出そうとし.....動きを止める。

そういや.....今日は神谷さんが、と思った。

安藤が?を浮かべる。


「.....どうした?」


「.....いや.....何でも無い」


「弁当.....食わないのか?」


「.....いや.....」


どうしたものか。

俺はその様に考えた。

だけど、神谷さんが折角作ったのだ。

食べない訳にはいかない。


「.....よし」


そして弁当箱を開けた。

それから見てみる。

綺麗な弁当がそこには有った。

所謂.....海苔巻きのキュウリとか卵焼きとかハンバーグとか。


「.....何だ?谷川。何時もの弁当と違うくね?」


「.....あ?ああ.....」


「.....さてはお前.....義妹に作ってもらったな?殺すぞ?」


「違う」


安藤は本当か?とジト目だ。

俺は盛大に溜息を吐いた。

そして食べようとした、その時だ。

スマホにメッセージが入った様だった。


「.....?.....え?」


(待てずに此方からメッセージを送ります。私のお弁当、食べて下さいね)


神谷さんからのメッセージだ。

流星め教えたな。

俺はその様に思いながら頭に手を添え、呟いた。


「.....神谷さん.....」


「ん?神谷さん.....おい。神谷さんって誰だ」


「あ」


安藤が立ち上がった。

そして俺のスマホを奪い取る。

ちょ、お前!?


「お前!返せ!」


「神谷さん.....のアドレスだ!?どういうこった!?」


「あのな.....」


「教えないと携帯へし折るぞ」


安藤は更にジト目で俺を見てくる。

コイツという.....。

まぁ良いか、コイツなら。

俺は頭をボリボリ掻いて思い、教えた。


「.....神谷さんってのは.....俺の義妹の友達だ。その子の事だ」


「おーい!みんな!谷川、浮気してるぞ!女の子に弁当を作ってもらってんぞ!」


「殺すぞコラァ!!!」


クラス中にバラすんじゃねぇよ!

俺はその様に思いながら安藤のせいで教室中からの殺意を感じつつ。

また盛大に溜息を吐いた。


「ハァ!?谷川、お前殺すぞ!」


「ファッ○が!」


「愛妻かコラ!同居してんのか!?」


クラスの男どもの目から血涙が流れ出した。

見ろ、収拾がつかなくなっただろ。

安藤を睨んで、俺は頭をボリボリ掻いた。

すると、クラスメイトの男子が外を指差す。


「ってか、愛妻ってあれじゃ無いのか?」


「.....は?」


驚愕して外を見ると。

確かに.....神谷さんだ.....が。

何故.....この時間に来てんだ?


その様に思っていると、クラスの男子が一人。

驚いた様に声を上げる。

それからその男子は.....こう言った。


「ん?あの子.....確か.....この近くの大学病院に入院している子だ。癌治療病棟の。俺、見た事有るぞ?可愛い子だったから.....。サッカーで足怪我した時に」


その言葉に俺は。

動きを止めた。

何だって?


「.....おい!どういう事だ!」


俺は慌てて。

気が付くと俺はそのクラスメイトの肩を掴んでいた。

そして.....マジな顔をしながら聞く。

クラスメイトは驚愕しつつも話してくれた。


「い、いや。偶然だけどよ。見たんだわ」


「.....そんな.....馬鹿な」


思いっきりフラついた。

これ以上.....何を失えば良いんだ?俺は。

その様に思ったから、だ。

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