第2話 初恋の亡くなった幼馴染と、裏切られた恋

「.....ななちゃんとやらは帰ったのか?」


「.....そうだね。帰ったよ」


流星がリビングに居た。

コンビニから帰ってくると、ななちゃんとやらは帰っていたのだ。

俺は.....そうか、と言って流星にコンビニ袋を差し出す。

そして柔和な顔で言う。


「.....プリン、食うか?」


「あ、有難う。.....その前に.....」


流星が俺に紙を渡してくる。

その紙にはアドレスと電話番号が記載されている。

そして最後に.....神谷奈々(カミヤナナ)と記載されていた。


神谷さんと言うんだなあの子。

俺は.....思いながら、紙を受け取った。


「.....お兄ちゃんの事、気になるって。不本意だけどね」


「.....俺.....の事が、か」


「うん。好きかもって」


「.....正直言って.....俺は恋愛したく無いんだが」


だよね、と俺に苦笑気味に言う流星。

俺は.....それを見ながら紙を四つ折りにする。

そしてポケットに突っ込んだ。

俺は溜息を吐く。


「.....でもあの子がくれたんなら.....携帯に.....このアドレス入れとくよ」


「有難う。でも.....お兄ちゃん。無理はしないでね」


「分かってる」


そして俺達は見合って、柔和な顔をした。

すると流星がプリンを取り出して俺に向いてくる。

台所に向いた。


「.....これ.....用意するから。食べる?」


「そうだな。食べようか」


プリンの中身を出しながら話す、流星。

その日は.....特に何も起こらなかった。

俺は.....まぁこんなもんだろと思っていたが。

翌日から更に変化した。



その日の真夜中の事だ。

俺は夕食も食べて流星から受け取った四つ折りの紙を机に頬を付けて見ていた。

この紙に.....記載されている.....電話番号。

そしてアドレス。


女の子からこんな物を貰うなんてな。

一体、俺はどうしたもんか。

と思いながら。

取り敢えずと思って登録した。


「.....アドレスと電話番号.....」


こんな作業をするのは.....数年ぶりだな。

俺は思いながら、苦笑した。

ここ最近は.....知り合いになる人間とか全く居ないから。

俺は.....思いながら画面を見る。


「.....」


親指が.....アドレスを押した。

だけどそれ以上は進まずだ。

俺は.....少し複雑な思いを抱きながらベッドに横になる。


「.....」


俺には.....本当の初恋の幼馴染も居た。

だけどその幼馴染は幼稚園の頃に死んだ。

何故死んだかって?

そうだな.....原因はインフルエンザ脳症だった。


それが.....俺の生まれて初の初恋だ。

だけど俺は.....それで女性恐怖症になった訳じゃ無い。

問題は小学生の頃の話だ。


心が傷付いていた中で2回目の恋の際に好きだった女の子を関連して皆んなから無視されて.....俺は.....更に傷付いた。

それで.....塞ぎ込み、そして俺は恋愛感情が死んだ。


「.....もう二度と」


俺は恋愛はしないと誓った瞬間だった。

何故かって.....皆んな.....居なくなったり、裏切ったりしたから。

俺はもう嫌だったのだ。

失うのは。


「.....ごめんな。神谷さん」


俺はアドレスを.....閉じた。

メッセージも送らずにそのまま。

俺の心も閉じる様に画面の全てを閉じた。



「.....?」


朝になった様だ。

俺は.....目を覚まして目覚ましを見た。

どうも.....あのまま寝てしまった様で有る。


「.....」


夢も無かった。

せめて.....夢の中でも幼馴染に会いたかったが。

それも叶わない。

この世界は.....俺に理不尽だな。


「.....よし。今日も頑張ろう」


そして立ち上がる。

それから.....下に降りてから顔を洗って。

制服を着て、リビング.....に.....入った。

のだが。


「.....なっ!?」


「お兄さん♪」


「.....お前.....」


神谷さんが手を振って制服姿で居た。

俺は驚愕して見開く。


何で神谷さんが居るのだ?

と思いながら、聡子さんと.....流星と。

そして父さんを見る。


「うふふ。この子.....とっても可愛いですね。翔太さん」


「聡子さん.....」


「そうだな。大切にしろよ」


「いや、父さん.....」


何でだよ。

俺の事を知っての事か?

盛大に溜息を吐いた。

すると、流星が俺に向いて言う。


「お兄ちゃん。早く座らないと.....遅刻するよ」


「.....あ、ああ」


「.....あ、お兄さん。因みに卵焼きは私の特製です」


「.....」


冷や汗が出るのだが。

俺は思いながら、息を整えて。

そして腰掛けた。


八重歯を見せてニコニコしている神谷さんを見て。

俺は青ざめるのを何とか堪えた。

うーむ。


「.....何故、君が?」


「.....うーん。そうですね。.....私にメッセージをくれなかったからですかね?」


「.....」


神谷さんは意地悪くその様に言った。

俺は頭に手を添える。


そして.....箸を取って困惑しながら焼き魚を食べて、卵焼き.....を見た。

よく出来ているが.....何だろうな。

手を付けられない。


「.....食べて下さい。身体の素ですからね」


「.....ハァ.....」


この子.....かなり可愛いけど.....色々と積極的過ぎる。

頭が痛くなってきた。

直ぐに食べてから俺は立ち上がる。

そして.....鞄を持って出ようとした。


「お兄さん.....まだあまり食べて無いですよ!」


「.....ああ.....その.....もう良いんだ」


「じゃあ、せめてお弁当持って行って下さい.....!頑張りました!私の手作りです!」


「.....」


八重歯を見せてニコッとする、神谷さんを見ながら。

ため息混じりでお手製とやらの弁当を受け取った。

そして家族を見てから俺は歩く。

何故なのだろうか.....。


俺は.....俺は愛されたらいけないんだ。

その様に思うのに。

神谷さんが.....悪いんだ。

俺は思いつつ、玄関を飛び出した。


『約束してね。翔ちゃん。私が死んでも.....笑顔で居てね』


インフルエンザ脳症で亡くなってしまった。

この世界から居なくなってしまった幼馴染、鈴谷鍵(スズヤカギ)を.....思いながら、考えながら。


どうしたら良いんだろう。

と、そう考えた。


俺にはもう笑顔は.....共に笑いあえる伴侶は.....もう要らないんだ。

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