第18話私に幸せをください

 『残念だ。』

 「……」今更か。


 『口が減らないのは相変わらずのようだ。

 やっと再会できたかと思えば、こんな不完全な状態で生き返ったとは流石に想像していなかったよ。お前は、そんな下らないお遊びやらないものだと思っていたが。』


 「……」余計なお世話だ。


 人間の物真似のつもりか? 笑わせる。

 何が共感性の化け物だ。お前は心を読む、それだけだろう?

 お前が、人間に共感したことなど一度たりとありはしないくせに。


「……」いい加減にしてくれないかな。わざわざ意思を飛ばさないでくれる?

 

 『何を偉そうに。この私に指図するつもりか?

 私がいなければ、お前は初めから存在すらしていないのだぞ?』

 

「……」昔のことじゃないか。

 それに、別に生んでくれなんて頼んでないもの。

 

『……一体いつまでそのおままごとが続くか。見物だな。』


「あんたには関係ないだろッ!!」

「!? どうした?」

急に叫んだ悪戯に対して、悟は走りながら問いかける。


「……ああ、いえ、の話です」

「?」

疑問を浮かべる彼に対し、悪戯は何も答えなかった。


さて、どうしたものか。

現状を変えられる人材は今のところここにはいない。

あいつは帰れと言って、帰るような奴では無い……。


そんな思考を巡らせている時のことだった。


カミがその手を三人に向ける。

『……どこに向かうつもりなのだろうな、貴様らは。

生きることさえ、私に委ねた恥知らずが、その恩も忘れてッ!!!』

大地が、大気が揺れる。

単純なる振動が三人を


「があッ!!?」

体表の一面を過度なプレッシャーが襲った。

成す術もなく、地面に叩きつけられる。

「ぐ……!!」


何だ、これは。

「いつから、、お前は、、!! こんな、、!!」

『お前が寝ている間にだよ』

ニヤ、と笑う表情が、何も見えないはずの真っ暗な顔面に映し出された気がした。


ここで殺す気か…! 

飛ばした志向には答えず、カミは一向に力を止めない。


一体、何がしたいんだ。

『……それはお前が一番知っていることじゃないか』


『全て、無かったことにしたいんだ』


悟と日和は、先に気を失っていた。

血管の一部を無理やり縮められたか…?


無抵抗。

何もできないか。

そう?

何もできないのか。

……。

…………。


それなら、やりようがないわけでもない、か。

無理矢理、微笑む。


『往生際が悪いな、お前はこの世界にいるべき存在では無いだろう』

「……あなたが私を語らないでよ。。」

気持ちの悪いと罵られてきた笑顔を浮かべ、悪戯は自分の中に呼びかけた。

起きているんでしょう? あなたの出番じゃないかな?

あとは、任せたよ。

あそびちゃん。



『何だ……?』

悪戯の体が、自然と持ち上げられていく。

かけている圧力に反抗するように起き上がっていく。

……あり得ない。


『貴様……』


身体を億劫そうに持ち上げた少女は、狂ったような笑みを浮かべ、

カミに向き合った。

その顔にはまるで恐怖が無かった。


『……私の力に対応出来るまでには回復していたか? なら先程までの気配は何だったのだ。明らかに消耗していたではないか』

状況がかの者にも読み取れなかった。

立ち上がれるはずがない。

それに……。

右手にナイフを握りしめ、その切っ先をこちらに向けてくる、

あれはいったい何なのだ?


ゆっくりとしているように見えて、速い動き。

ナイフが宙を泳ぐ。

ああ、神様。


もしも、願いが叶うのなら、叶えていただけませんか?



「私に、幸せをください」

狂った笑顔のまま、少女はそう呟くと、


血に濡れ、切れ味さえ失ったであろうナイフを、

空に向けて、

上から下へと、振り下げた。


『!?』

悪魔のごとき肉体から、腕が離れた。

いや、切られた。


『これは……』

物理攻撃、では無い。

自分に向かう殺傷能力は全て事前に消せるはずなのだ。

だとしたら、何故、私に攻撃が届いた?


いや、違う。そこじゃない。

あれはそもそも、のでは無いか。


『気配が、……?』


思考する前に、今度は脚が切り離された。

身体を裂かれ続けた。

『……』

少女を観察する。

傷口からは血が出ている。

人間。

そうか。アソビ、お前は。


『お前は、誰だ?』

ピタリと少女の動きが止まる。

胴体だけになったカミが語り掛ける。

『誰から、その能力を貰った?』


その質問に答えず、少女は、

「アッはハハハハハハハハはハハハハハハは!!!」


笑う。

嗤う。

哂う。


『理性もない、か……。』


それがお前の拾ったものなのか。

悪戯よ。


黒い炎が立ち昇る。

遊の右手からだった。


『……そうか、逆だったか』

殺意ではない、別の感情。

『裏は、、貴様だったのだな』


わらってわらってわらった挙句、

少女は、その体を、

真っ二つに、切った。


<to be continued>

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