第12話隠し事
アソビは『イノセント・クライ』の顛末を聞くと、
目を見開いて、サトルに詰め寄った。
誰もいない町の中、二人の声だけが辺りに反響する。
「そのあと、どうなったんですか。」
「……あ? どうなったって……、それから、世界中からそいつと似たことができる奴が現れだしたんだよ。」
そいつ。
イノセントクライの、原因となった人間。
「……?」
少女は首を傾げる。
「本当に、いたんでしょうか? そんな化け物が。」
「どういう意味だ?」
「いえ、何かが引っ掛るんですケド。まあ、いいでしょう、うん。」
殺傷能力そのものを具現化したような、人間。
思考もまともな、人間。
なぜ、そんな人間に殺傷能力が……?
いや、それならば、どうして。
自分の能力で自分を殺すことができた?
殺傷能力って言うのは、うまく言えないけど、そう言うのじゃないはずだ。
私たちが持っているこの力は、他人に対して成り立つものだ。
他人への憎しみ、悲しみ、そういったどうにもならない感情の発現で、
能力は、その到着。
つまり、他人を殺すための力のはずなのに。
「……なあ、お前」
「ん? なんでしょうか?」
サトルはその瞳の中に、少しだけ探るような色を含めている。
何を考えているのだろうか?
その口が開くと、予想もしていなかった言葉が私に突き付けられた。
「共感性の化け物って言葉に聞き覚えはあるか」
サトルの前で歩くアソビの足がピク、と止まる。
どうしてその名前が出てくる?
私は、一言だってこの人に話していないはずだぞ?
「……いいえ? 知りませんね、そういうの。いや~、私ってそういう物語チックなネーミングあんまり好きじゃなくて♪」
アソビは無理やり作った笑顔で、サトルに切り返す。
自然と、右手が左手の火傷に伸びる。
「……そうか」
そして、
それが演技だということは、彼にはばれていた。
♦♢♦♢♦♢
殺人鬼隔離施設 国家機関 ネーム『不完全』
通称 『敵対軍』
とあるビルの天井で、双眼鏡を覗く女性が一人。
「メーデー、私の声が聞こえますか」
敵対軍「参謀」役
青みがかった髪の毛を頭の後ろでまとめている、少しばかり小柄な体躯。
世間一般からすれば、中学生ほどだと間違える子供のような外見。
そんな彼女は、ビルの屋上のフェンスに腰を掛けながら、冷静な、
面倒くさそうな声を発していた。
「出てきました。……報告の通り、『スマイル』を発見。……いえ、
一人ではなく、男が隣にいます。あそこから出てきたということは彼も殺人鬼ですかね?」
少しでもバランスを崩せば地面に落ちてしまう危険を、まったくと言っていいほど気にしていない。
「……ええ、分かってます。あとはこちらにお任せください。
……あの人にも、よろしく。」
トランシーバーを切り、ふーっ、とため息をついて立ち上がる。
「全く、今日は一体何なんですか!!」
持っていたトランシーバーを握りしめる。
「さっきの金髪女といい、一体どれだけ私に仕事を押し付ければきがすむんでしょうか!」
手に持っていた精密機器からみしみしと音がし始めた。
だが、支給されている機械はこれしか持っていないので、間違っても壊すような真似はしないつもりである。
「まあいいや……まあいいですよ。貴方たちが、本当に所長いうところの『望み』なんてものになるかどうか、見させてもらおうじゃないですか!」
あの『タマシイ喰』を消滅させた力。
その正体を!
息を深く吸って、懐から拳銃を二丁取り出す。
「セット、オン……照準『心臓』」
拳銃を空に向ける。
「『追憶』」
二つの弾丸が、彼女の声と同時に、
曲線を描いて、
<be continued>
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