第3話死神

 微睡まどろみ さとるは無感動に人を殺す。

ついでに言えば、彼は食人鬼と呼ばれることも有ったのだが、それは、

彼自身の能力そのものに関係するもので、彼が生きていくために必要なことである。

好きで食べているわけでは、決してない。

彼の能力に関しては、後述するとして。


それで、彼の、今考えていることは次のとおりである。


♢♦♢

「こっちだ、走れ」

悟は、あそびに犠牲になってもらうつもりでいる。

風が読めるいうのは、本当のことではあるが、

出口があるなんてことは分かっていない。


あると分かっているのなら、面倒くさそうなガキ一人なんて置いて出ている。

だが、どうにかしないといけない問題が待ち構えているのだから、仕方ない。

もう一人、自分と人間を連れて行かないといけないのだ。


走りながら、遊は悟の右腕を見る。

「どうして、手錠を付けてるの?」

「趣味だ」

「趣味!? 趣味でそんなのつける人いたの!?」

「いるにはいるだろ」

「そんなの変態じゃない! 嫌!!」

「……いや、変態じゃ、」

「人殺しで、その上変態だなんて最悪じゃない!!」

「……」

反論、できない。

いや、しないだけなのだが。


「っていうか、あとどれくらいかかる? いい加減疲れたんだけど」

「……もう少しだ」


事実、彼の目的の場所のすぐそこまで来ていた。

だが、


“ギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラギャラッ!!”


「何!?」

地面そのものが大きく揺れている感覚。


「……ちと、早い」

横を見ると、男は臍を噛むような顔をして親指を噛んでいた。

「早いって何が!?」


「ちょっと黙ってろ!」

おかしい、と悟は考えていた。

まさかがあの部屋を出るとは思えない。そんなことは不可能だ。

だとしたら、他の何か? 自分たち以外の能力者がいる?

だとしても、この揺れ方……? 


……まあ、いい。止まっていても仕方がない。進むか―


「ねえ、お兄さん?」

急に、体を触られた悟はびく、として、

「何だ?」

「お兄さんが腰に下げてる飾りの写真? が映ってるの?」

こんな時に、この女は一体何を言っているんだ。と言ったような感情を、

思考を途切れさせないように、抑え込む。


「……誰でもない、、、これはただの……」


実際。

彼にも、それが誰なのかわからなかった。


ただの?

これは、誰だ?


「お兄さんッ!! 前!!」


思考に気を取られていると、アソビが大声を出した。

前?


「!」

見ると、前方から巨大な空気の塊が飛んできていた。

「!?」

動揺しているアソビを抱いて、悟は左に体をスライドさせる。


自分のいた場所が、衝撃波を受けたように破壊される。

「誰だ……!」

悟が、不意打ちに怒りを感じ、それを行った人物を見る。



「どうもー、お久しぶりでーす」

赤いドレスを身に纏った長身の女が微笑んで立っていた。

長い金髪が腰ほどまでに伸びて、傍目からは相当に美人ではあるのだが、

それと相反するように、彼女が持っている長く歪な鎌が彼女自身のイメージを台無しにしていた。


「ッ!! お前、なんでここに!!?」

「うーん?? なんでってそれはー、捕まっちゃったからじゃないですかー?」

「『』、は、もう死んだって聞いてたが?」 

「あらー? まだまだ存命ですよー。それと、私のことをその馬鹿げた通り名で呼ばないでくださります? 前に言ったじゃないですかー私のことは、」


一拍置いてから、


って呼んでくれないとぉ」


そう言った。

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