君がいない、はじめての夏

@shinzeki

夏 

 夏がきた。

 いや、夏なんて毎年来る。僕が経験する夏なんて、これで18回目だ。もうあまり夏を経験したくはない。この国の夏なんて、暑くて湿っていて、ただひたすらに不快な時期なのだから。


 僕は夏が好きではない。散歩をしに外に出ると地獄を見る。前脚の裏が焼けるほど熱されたアスファルト。上から熱が浴びせられる熱。こんな時期は家の涼しい場所を君と一緒に陣取って、ニンゲンを困らせるに限る。大体のニンゲンは僕たちの種族を可愛がり、涼しい場所を陣取っても、どかそうとはしない。……例外はいるが。


 家で一番涼しいところを陣取って、君と一緒に寝転がる。これが、僕が夏で唯一好きな瞬間だ。僕よりも長い毛皮で覆われている君は、涼しい風を受けるとほんと幸せそうに笑う。僕もその顔を見て、いつも幸せになった。

 今日もまた、家の涼しいところを陣取る。外とは違いひんやりとしたフローリング、上からくる冷たい風にさらされる毛皮。最高の瞬間なはずなのに何かが物足りなく感じている。閉じていた金糸雀色の瞳を開けど、隣に君の姿はいない。

 そして毎度毎度自覚させられる。


 もう君のいる夏は二度と来ないんだと。

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