夕陽を浴びる

kobune

第1話  理由

 1

また新しいブログを書き始めようかと登録してみた。でもやっぱり違う気がする

とりあえず部屋から出るときは多少なりとも身なりを整えるように、ブログを書くときもやはり何かを纏う。知人が読むと周知していれば尚更だ

 20年くらい前からブログは書いてきた。書くことが好きで気持ちを整理するためには良い手段だった。やがて読者が増え誰かと繋がる。嘘はひとつも書かないというのが自分なりのポリシーだった。小説を書くよりもそのまま出来事を書くほうがラクだからだ。嘘は書かない。でも赤裸々に日常を記したりしない。

 読者が求める作者というウエアは身につけなければならない。それはべつに楽しくも窮屈でもなくアクセス数にもさほど関心が無かった。ただ書きたいときに書きたいことを書くだけでジャンルに分けたりもしないしハッシュタグをつけたりもしない。たぶんそれは「じぶんは書く人である」という矜持なのかもしれない。

 プライドは大事である。もうこの歳になったのでそういえる。


  2 

 なぜ新規のブログをやめて「カクヨム」にしたか。ひとつは時間ができたこと。

もうひとつは小説を書く自信はないが手記なら書けるし、手記に虚偽を混ぜるつもりはないけれど何かのとき「いいえあれは全部ウソですよ」ととぼけて逃げることができる。ありのままの日々は日記に書いているしパソコン内のワードには「あたらしいあたし」というファイルがある。どちらにも鍵がかかっている。

私も歳をとってきたので鍵を開けるのが面倒になったり、いずれ鍵の開け方も忘れるかもしれない。ひょっこり死ぬかもしれない。そのときにここがあれば面白いのではないか。暇つぶしにしては案外良いのではないか、と思った。とりあえずこれは自分のパソコンで書いている。パソコンの開け方やスマホの操作に難儀するのは

当分先だと思っている。それまでに完成するか、未完成か、それもまた余禄。


  3

 手記を小説っぽくしてコンテストに応募したことがある。一次予選を通り、二次予選を通過し最終選考で戻ってきた。自信はあったのだろうか。わたしは「書く人」であるという自覚はそのときもあったけれど小説だけは「読む人」だった。でもそのときも時間があったのである。仕事もして家事もしていたけれど突然の別離を経験していた。ぽっかりとした空白。空白を埋めるために書いた。枚数と締め切りがあるという制限が目標になった。

 自費出版で一冊だけ詩集をだしたことがある。ある詩人が後押しをしてくれて

詩誌に掲載させてもらっていたときも「読者がいる」ということは励みだった。

読んでくれる人がいてしかも応援してくれる人が存在するなら、それはとても幸せな作品といえる。自己満足ではないか?と逡巡しても作品は生まれたのだからそれでいい。一人でもそこに寄り添ってくれる人がいるならそれでいいと思う。


  4

 たぶんいずれ公開するだろう。読者を意識したほうがモチベーションもあがるだろうし、もしも前述のように興味をもってくれる人がいたなら嬉しいと思う。

反感や批判の攻撃を受けることもあるかもしれない。そういう覚悟はしたくない。

「それが何か?」とゆるりとかわしていきたい。マジメに書くけれどムキにならない。何とまあ長い言い訳のような1から4までの前書き。

 今日は2019年8月6日。あの広島の日。広島へは何度行っただろう。高校生だった日「反戦列車」に乗った。わたしは活動してたわけじゃない。何も知らない15歳の少女だった。深夜放送で北山修が「反戦列車」と口にした。北山修が好きだった。翌日には主催者の「クラルテ」へ連絡していた。行くと決めたら行く。

あの行動力の源はなんだったろうと今考える。もしかしたら孤立感だったかもしれない。家族、ということを後々考えた時、じぶんの「無鉄砲」みたいな自棄的行動へとゆるやかに流れてつながる何かを感じる。


5

ふと検索してみたらやはりここにいるのは若いひとたち。シニアならシニアのサイトで綴ればよいのだろう。以前見かけたシニアのサイトには波乱万丈の半生を書いたものや、恋多き人生を告白した手記もあり、それなりに面白かった。

ただ枠内におさまることが何となくイヤなのである。ひとくくりにされたくないのである。シニア?そう、いくらすこしは若く見えるとはいっても年齢には逆らえない。鏡を見ればよくわかる。そういうことであるから、たぶんここを公開しても誰も読まないだろう。

 そこに気がついたらふと気楽になった。好きなように書けばよい。書かなくてもよい。暇にまかせてぽちぽち書いていくうちに「何か」が見えるかもしれない。

たぶん「理由」。今はそれがわからなくても、分かるときがくるかもしれない。

分からないうちにやめるかもしれない。理由もなく書き進めるのはいくらヒマで書くことが好きだからと言って面白みに欠ける。

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