第2話 快活少女と謎の留守電

「「こいつが悪いんです」」

「君たち…それ言うの何回目?」


 入学式で寝ていた女子に声をかけたのだが、その眠れる女子が大きな声を出したせいで絶賛職員室でお説教をくらっていた。


「というかこいつじゃなくて私は月野綾乃つきのあやの

「そういうなら俺だって乙部優おとべゆうっていう名前があるよ」


 月野…?どこかで聞いたことある気が…。


「ていうかお菓子は~?」


 こいつ…さっきはあんなにテンション高かったのにお菓子の話題がないとこんな眠たげな顔と声になるのか…。


「だから…後でって言っただろ?」

「君たち話聞く気ある?」

「「こいつが悪いんです」」

「うん、まったく聞く気がないね」

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 職員室でのお説教が終わり、この1年B組で最初のホームルームが行われているのだが…。


「うにゅ…」


 あの眠れる女子こと月野と同じクラスであるという妙な偶然を受け入れられずにいた。


「マジかよ…どんな確立だよ…」


 俺が通うこの時波高校は一つの学年にA~Fまであり、実に6クラスある。6クラスもあるんだぞ…?普通同じクラスになるか?

 なんて、偶然に頭を抱えていたとき。


「大丈夫かーい?問題児くーん?」

「誰が問題児だ…」


 茶髪ショートの快活そうな少女が左の席から話しかけてきた。

 ていうか誰が問題児だって?問題児はあっちで眠ってる月野だろ。


「だれが問題児だー、って顔してるね…。僕は咲音凪さくねなぎっていうんだー。よろしくね!」

「俺は乙部優。よろしくな」


 ていうかさらっと聞き流したけど僕って一人称珍しいな…。


「じゃあ一つ聞くけどさ乙部君、君ってあの月野さんの彼氏?」

「ぶっ…!なんだそれ⁉」


 なんで月野と付き合ってるなんて事になってんだ⁉そんな誤解されるようなことあった覚えは…


「またまた~、入学式であんなにイチャイチャしてたじゃん~」


 …あったわ、バリバリ覚えあったわ。確かにあれは見る人からすれば恋人に見えなくもないのか…。


「違う違う!あれは全然そういうのじゃないから!」

「え~なんだ~。てっきり恋人同士なのかと」


 まあ…見た目だけなら超美少女だもんな…。頭はお菓子とお眠りしかないんだけど。

 なんて咲音と話してるうちにホームルームが終わり、今日は入学式で3時間のため早々に帰宅することとなった。

 家に帰ると妹が先に中学校から帰ってきていて出迎えてくれた。


「おかえり!兄さん!」

「お、奈月。ただいま」


 こいつは妹の奈月なつき、今年の春で中学2年生になったツインテールの可愛い妹だ。俺の家は両親が先に他界してしまい、今ではこの一軒家で妹と俺だけで暮らしている。


「兄さん!高校はどうだった?」

「んー…大変そうだなって思ったよ…」


 本当に、大変になりそうだった。今日だけでここまで疲れるとはまったく想像してなかったからな…。


「大変そうだね…。あっ!そういえば兄さん宛に留守電届いてたよ」

「俺宛に留守電…?わかった、ありがとな」


 と言って妹の頭をゆっくりとなでる。…こいつ本当に俺と同じシャンプー使ってるよな?髪さらさらなんだけど…。


「えへへ…」


 まあ、当人が嬉しそうにしてるのでいいかな。

 あと、俺は断じてシスコンではない、と思う。




 



 


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