天衣 凱斗 ORIGIN middle phase 03

日本支部に来てからまた数年の月日が流れる

プロジェクトアダムカドモン計画に、プランナーのFHからの離反のゼノス設立……そして、コードウェルの帰還……様々な事が起こって僕……いや、私は地方の支部へと異動することになった

なんでもその支部で私の話を聞いて強く、きて欲しいと希望したそうだ。

車で数時間ほどかけてたどり着いたのは冴塚市の冴塚支部だ……外観は探偵事務所にしか見えないがふと、思い立ってトランクから万年筆と罫線のないB5紙の防水ノートを取り出し描き出す。

筆先が走る音と紙がめくられる音が数分したかと思うとピタリと止まり確認する

外観と描き出したものを比較すると歴然だった、見た目は2階建の屋上のある灰色のコンクリートで作られた施設、しかし外観と違いこの探偵事務所には地下も存在してる事がわかった。

描き出した地図を元に階段を上り支部長室へと辿り着く。


中に入ると茶色のコートに身を包んだ30代前後と思しき女性だった。

彼女はこちらを見ると嬉しそうな興奮したような笑顔で風のように詰め寄り、ガシッと私の両手を掴み早口でまくしたてる。

驚き戸惑い言葉を失っていると、教育係の老人が間に割って入り宥めると彼女は我に返り咳払いをした。


「し、失礼……私は冴塚支部の支部長、錙衣 直羽しぬい すぐはと申します。」


どうやら彼女によれば私の事を伝聞や英文記事を見て知り、有名な探偵、ホームズの一族ということもあり今回の異動の際に日本支部に対し是非にと強く要請したらしい。

私にとっては少年探偵時代の事はもう過去の事として捉えていたのもあったが届いてるとは思わなかった……


支部の説明を聴いてると視線を感じた、それも右斜め後ろからだ。

この部屋の構造を考えると、隠し扉や部屋の類はない、ならば何かしらのシンドロームの能力だろう、視線だけを動かして見やるが視線の主はいない、隠れたようだ

オルクスの領域操作かバロールのディメンジョンゲート……いくつかの可能性を推測する


そんな事をしてると支部長に声をかけられ見れば、何があったのだろう?と心配そうに見ていた。

視線を感じたから見てたと伝えると何か納得というよりまたか、というような表情をした。

理由を聞くとすぐにわかると思うわよ、とだけ言った。

いったい何が……


────────────────────



しばらくしてUGNに用意された家へと向かいたどり着く。

支部からはおよそ数分程度の距離だったが利便性の高い一軒家だ。

途中途中で犬や猫、カラスなどの動物達と触れ合いつつも会話して楽しんで獣臭くなったが……シャワーを浴びてしまえば問題ないだろう、と家の中に入ると誰もいないはずの家に人の気配を感じた。


足音を立てないように、気配を殺し寝室のドアを開ける。

中はベッドや机に、窓と本棚といった小さいが一般的な部屋だ……異様に人の形に盛り上がってる布団を除けば、だが。


扉を閉めずに近づき布団を一気に剥ぎ取ると、あ、やべという顔をした少年がいた。

何をしてるんだこいつは


「あー、早かったね?疲れてるだろうなーと思って布団を温めておいたんだー。」


お前は猿か何かか、と布団をぶつけて背もたれ付きの椅子に座りトランクから洋書を取り出し、その少年を無視して読み始めた。


これが、初対面での██ █との出会いだった。

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