料理人の若者の話

 ええ、私は裏切られたんです。

 料理学校をでたばかりで、世間を知らなくて。

 スーツきたAっていう人に、彼はカリスマだ、仕事を手伝えることは名誉なことだと言われ、胸躍らせて私は彼の料理人になりました。

 しかし彼は私にきつく当たりました。

 その最たるものが、慣れない河豚料理の強要。

 不祥事が起こっても守ってやると言われたのに、謝罪会見ではあっさり切り捨てられちゃいました。

 そこで私は気づいたんです。

 この人は私をはじめから人気とりのために捨てる気だったんだ、って。

 思えばそんなカリスマが、私みたいな青臭い若者を、名指しで指名したりしないですよね。

(自嘲気味の笑い)

 彼のお陰で私の人生は終わりました。本当に感謝してますよ、彼には……。


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