倒れてからでは遅い。

鯖信者

第1話 「最後は孤独に死を迎えるんだからさ」

 あーあ、テスト勉強のあとにサバてんどんダイレクト見ちゃったよ。そのせいで、昨日のテスト95点で発狂するわ。あと一問とか悔しすぎる。


 その上、今日は寝坊して、ご飯の炊き忘れ、急ぎすぎて転倒、そして遅刻…と思いきやまさかの休講。確認してなかった自分も悪いけど、ほんとついてない。


 だいぶ遅いけど、朝ごはんにたべっ子どうぶつでも食べようか…そう思い袋に手を伸ばしたその時であった。




ブォンブォンブォンジシンデス ブォンブォンブォンジシンデス


 


 その衝撃が僕に走ったのは、部屋にそんな警告音が鳴り響いたのとほぼ同時のことであった。今の地震で寮の壁が崩れたのか…どうやら俺はそれの下敷きになっているらしい。


 助けを呼ぼうと未だ物々しい音を発するスマホに手を伸ばす。

 しかし焦ったのか、自分の電話番号にかけるっていう…。


 ああ、だんだんと意識が遠のいてゆく…。




痛い。胃が痛い、頭が痛い、泣くほどには痛い――。



 



 



 次に目が覚めたのは、同級生や先輩方が協力して僕を助けてくれた後だった。

どうやら2週間と4日もの間放置されていたらしい…精神的にくるものがある。


こうして奇跡の生還を果たしたというのに、周囲の様子がおかしい。どうやら生きている人には見えない体になっていたらしい。


気を紛らせようと、ピアノの前に座る。しかし、いつもみたいにうまく弾けない。おいおい…ピアノまで自分を見捨てて行くのか。

なんかもう何もやりたくない。好きなものも嫌いになっていく。


「そのうち自分の誕生日も名前も、さらには存在すらも忘れてしまうのではないか。」みたいな文章をなんかの小説で見た気がするが、僕は今まさにそんな気分だ。

 


 誰にも見えないなんてそんなはずはない。辛うじて生きていたスマホを手にとりLINEを開く。友達宛の送信欄に『僕は生きているよ』と打ち込む。




 頼む!届いてくれー!



 

 そう叫びながら送信ボタンを押した。


 

 そのメッセージの横には“既読”とついた。












あなたが笑えば、私は泣きます。あなたが天国にいるのならば、私は地獄へ行きます。あなたと私は違う。だって私は…人間じゃないもの。

でもそうだな…あなたと桜が見たかった。


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倒れてからでは遅い。 鯖信者 @saba_lun

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