　「もう一度、あんたが悪者になって女から金を巻き上げてきなさい。私が家の中での悪者なら、あんたは外で悪者になるがいいわ。あなたを被害者なんかにさせない。私と同じ悪者でいなさい‼」

　夫は苦笑してこちらを見た。完全に私を馬鹿にしている目で。

　「お前はどこまで強欲なんだよ。俺はもう他の女には関わらない。さっきも言っただろ？決めたんだよ、やり直すって」

　「馬鹿じゃないの、あなた一人でどうやり直す気？私がいてこそこの家庭は成り立っているのよ？私がその気にならなければ何も変わらないわ。あなたが一人二役して夫婦ごっこでもするつもりなの？」

　「やり直すっていうのにどうしてまた女と・・・」

　「あなたが反省していないから。私を傷つけたことの重さを認識していないから。そこがわかるまで私は一生許さない」

　夫は頭を抱えて唸っている。

　「職場にいるでしょ？軽く引っ掛けられそうな女。適当に見つけて関係を持ちなさい。そして前と同じように脅して金を取ってきて。できないならあなたが浮気したこと、お義母さんたちにも話すから」

　ずっと俯いていた夫はお義母さんという言葉に過敏に反応した。

　「なんでおふくろに言う必要があるんだよ！ふざけるなよ‼」

　「ずっとふざけたことしてきた人が何言っているの？あなたばかりずるい。私にもふざけさせて」

　はぁーという深いため息をついてまた夫は頭を抱えた。最高に気持ちのいい瞬間だった。今までの不平や不満、恨みを全部ぶつけることができた気がした。

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