第3話
結局俺は小心者なのだ。小心者なら小心者らしく地味に生きていればよかったものの、普通の道を外れるようなことをしてしまった。それが原因で関係のない若い女を巻き込んでいる。しかし全て自分のせいだとわかってはいても、無理難題を突き付ける春美への恨みは湧いて来る。
痛い目にあって、反省どころか逆切れのような態度を取ってしまうのは自分の過ちを正当化しているからではない。夫婦の問題に他人を巻き込もうとするやり方が気に入らないのだ。他人を巻き込むことで俺に罪の意識をより苛ませることが目的なのだということはわかるが、あまりにエグいやり口だと思う。
春美がこんなことをする女だとは思わなかった。こんな女だと知りたくなかった。だが春美を変えてしまったのは俺だ。俺が浮気などしなければ交際当初からの変わらない平凡な女であり続けることができたのだろう。それを俺が鬼に変えてしまった。俺の罪は重い。その罪とは浮気と妻の人生に暗い影を落としてしまったことの二つだ。そしてさらに彩音の人生にも影を落とすようなことをしようとしているのだから、正しくは三つの罪を犯したことになる。
女たちほどのものではないが俺自身の人生にも影は落ちている。陰鬱な日々を生きている今よりももっと色の濃い影が彩音を巻き込んだあとに俺の人生を覆い隠すような気がする。それはあまりにも現実的で救いがなく、想像すると静かな衝撃が俺の中を通り抜け、少し吐き気を催した。
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