第8話

どうやらいつの間にか寝てしまっていたようです。


あんなものを間近で見てしまった後だというのに。


バスが山の中を走ったという記憶がまったくありません。


ボタンを押すと表示に「次、停まります」。機械女が「次、停まります」。


バスを降りて家までの道すがら、普段なら今日会社であった事などを考えるのですが、その日は違っていました。


私は当然のことながら、あの血にまみれた老婆のことを考えていたのです。



次の日も、私はバスに乗って仕事に行きました。


昨夜のことなど何事もなかったかのように。


会社で血まみれ老婆のことを誰かに話そうかとも考えましたが、やめておきました。


どう考えてみても、誰一人信じてくれるとは思えなかったからです。


そのうちに就業時間が終わりました。


今から家に帰るのです。


行きは問題がありません。


問題があるのは帰りです。


それを解決する方法が一つあります。


眠らないこと。

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