第1章
1.一人目
「いらっしゃいませ。”異世界屋 りべるた”っス!」
「あっ、すいません。ここが精巧なVRゲームを体験できるっていうゲーム屋さんですか?」
「うぅ~ん、ゲーム屋とはちょっと違うっスけど大体そんな感じっス!ささ、どうぞこちらにお座ってくださいっス~!」
いそいそとパソコンを再起動する那美と、席についてからもソワソワと辺りを見渡す背広の男性。
「あの~、他のお客さんって...」
「お客さんが初めてのお客さんっスよ~!あ、この登録用紙と利用規約を記入して目を通しておいて欲しいっス!」
「あ、はい、わかりました...。」
左胸のネームプレートに那美、と書かれた店員に手渡された2枚の紙に目を通す。
住所、氏名、生年月日、好きなゲームなど。
基本的なプロフィールとゲームに関することを記入し、利用規約をナナメ読みで読み終え、署名欄を埋める。
「あ、あのっ、書けました。」
「ありがとうございますっス~!利用規約は読んでくれたっスか?」
「あっ、読みました。印鑑が手元にないんですが...。」
「大丈夫っスよ~!...朱肉...あったっス!拇印お願いしても大丈夫っスか?」
「あっ、はい、大丈夫です。」
「ありがとうございますっス~!
少し大きめのタブレットに手形のマークが表示されている。手形のマーク手を重ねると手形の上部にシークバーが表示され、滑らかな動きで右端までシークバーが満たされ、手を放すと手形のマークは無く晴斗の顔にそっくりな3Dのアバターが表示される。
「うわっ!」
「それびっくりするっスよね~!初期設定でわからないことがあれば言ってくださいっス!」
四つの選択肢が表示された画面が3Dアバターの横に出てくる。
「あ、チラシ、持ってきたんですけど...。」
「ありがとうございますっス~!あ、タブレット借りてもいいっスか?
...ここを追加して...OKっス!5ポイント追加しておきましたっス!」
「5...ポイント...?5万円分のポイントって...。」
「あー...すいませんっス。1ポイント1万円なんスよね、うちの店。まま、基本無料なんでプラスでポイント反映できるってだけで結構なアドバンテージになるんスよ!」
「っ...まぁ貰えるなら、貰っておきます...。」
高くないか...?やっぱりこの店入ったの間違えだったかもしれないな...。
5ポイントってなにに使うポイントなんだろうか。
5万円分の買い物...にしては値が小さすぎるよな。
「じゃあアバターとかステータス振り分けとか、やっちゃってくださいっス!
あ、ジャンルはMMO RPGでよかったっスよね?アクションとかのほうがイイっスか?」
なるほど。登録用紙欄に好きなゲームの欄があったのはそのせいか、と納得する。
「あ、はい。MMOでお願いします。」
・PN
・アバター編集
・性別
・種族
・顔
・体系
・初期装備
・ステータス割り振り
・取得可能ジョブ
・ジョブ派生
・スキル取得
・一般スキル
・ジョブ専用スキル
・ショップ
・装備
・消耗アイテム
・ガチャ
・買取
・両替
ガチャ要素とかあるのかよ...。提供割合の表示ないとか今時詐欺だって言われるでしょ...一回無料だし引くけどさぁ...。
『R:根性のふんどし』
VIT+1
LUK+7
HPが50%以上の時HPが0になる攻撃を受けたときにごく稀にHPを1で耐えることができる。確率はLUKを反映。
「うわっいらな...」
「あ!レア装備出てるじゃないっスか!おめでとうございますっス!」
「え...?当たり、なんですか...?」
「大当たりっスよ!凪なんか100連だ~って言ってレア一個も出てなかったっスからね~!あ、凪っていうのはもう一人の店員で~」
やっぱこのガチャクソだったか...。
そもそも1回千円ってまぁまぁ暴利だと思うんだけど?
まぁいいや、とりあえずステータスを振って...チラシでのポイントはステータスポイントか。
ふぅん...ステータスに応じて
梅谷晴斗
PN:スプリム
性別:M
種族:
職業:長剣使い
装備
右手:石のロングソード(STR+3)
左手:なし
頭:革のヘルメット(VIT+2)
胴:革のハーフプレートメイル(VIT+3)
腕:革の手袋(VIT+1DEX+2)
腰:革のホルスターベルト(VIT+1)
脚:革のズボン(VIT+2)
靴:革のロングブーツ(VIT+1AGI+2)
アクセ:なし
ステータス
Lv.1
HP:30(+25)
MP:5(-35)
STR:10(+8)
VIT:5(+6)
AGI:5(+3)
INT:1(-10)
DEX:6(+4)
LUK:1(±0)
スキル:
スイング
装備している武器を振り下ろす。
ダメージ量はSTRを反映。
パリィ
装備している武器を敵の攻撃に合わせて弾く。
ダメージ軽減率はSTRを反映。
ダメージ量は1より小さくならない。
こんなものでいいんじゃないか...?
一度ポイントが余った状態でステ振り終わろうとして余剰ポイントが消えますがよろしいですか?のダイアログが出たときは焦ったな...。
あとなんでINTとMPがこんなに高かったのか、心当たりが少しあるのが社会の歯車として自覚したくない部分だな...。
というかステータスポイント1ポイントで1万円...高すぎるだろおい、アバターの変更も金取るのかよ...性別の変更なんか20万だったぞ...装備が高すぎてもうショップは見たくない...。
那美?とかいう店員はずっとパソコンとにらめっこしてるし。
「あのっ...入力終わりましたんです、けど...。」
「おわったっスか?ありがとうございますっス~!あ、追加購入とかはされてないみたいっスね~、じゃあ完了押してもらってイイっスよ~!」
晴斗が完了を押すと机の右側からガコンと音がした。
「お、できたっスね!これが異世界へのキーになるっス、こっちまでどうぞっス~!」
ファ〇コンのカセットのようなものに『シキクエスト』と書かれた”それ”を持って言われるがままに付いていく。
清潔感のある廊下に等間隔で並んだ扉はさながら個室のネカフェのようだった。
「時間どんぐらいにするっスか?何時間でもタダっスけど。」
屈託なく笑う”推定”少女、時計の針は9時45分頃を指していた。
「じゃあ、二時間でお願いします。」
「了解したっスよ~!時間の15分前のアラートウィンドウが出るまでは帰還ゲートが開かないのでご注意っス!じゃあ、いってらっしゃいっス!」
ネカフェ風のドアを開けるとやはりといえばいいのだろうかファ〇コン様が鎮座していた。
「挿すんだよな...」
『シキクエスト』をファ〇コン(正式名称はファンタジー・ダイブ・アナライズ 通称ファダイズ)に差し込む。
ド〇クエ丸パクりの画面が表示される。
「んじゃ、はじめから、と。」
・
・
・
「あ、ゲートの位置の条件伝え忘れたっス。まぁ、大丈夫だとは思うっスけど。てんちょー!お客さん一人、
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