第3話 三

 次の日、三木は午前中学校を休み、警察へと向かった。しかし、

「これだけでは事件性があるとはいえないですね。」

「で、でも、僕にとっては切実な問題なんです!」

「でもそれだけで命が狙われているわけではないでしょう?

 脅迫として扱うのは―ね。」

「分かりました。もういいです!」

そう言って三木は警察を後にし、午後の授業、また野球部の練習に向かった。

 「三木、お前大丈夫なのか?」

案の定三木は野球部の監督に声をかけられる。

「はい、大丈夫です。」

また三木は同じ野球部員からも声をかけられる。

「ああ、大丈夫だよ。」

しかし三木の頭の中にはある懸念があった。

『俺のクセを知っている人間、俺にメッセージを送った人間は、この野球部の中にいるかもしれない―。』

確かにチームメイトは同じ志を持つ仲間だ。しかし時としてそれはライバルにもなりうる。

『俺のレギュラーの座を狙ってる奴がわざと俺にメッセージを送った、って可能性も捨てきれないな―。』

 本当は同じ野球部員を疑うのは良くないことなのかもしれない。しかし三木はその可能性に思い当たり、どんどん疑心暗鬼になる。

 そしてそんな状態では―、とても練習に集中できない。

 「おい三木、何やってんだよ。大丈夫か?」

それはノックをしている時のこと。普段なら守備練習でエラーなど出さない三木が、何回も何回もエラーする。

 そんな明らかに様子がおかしい三木に、監督が声をかける。

「三木、体調が悪いなら今日は上がっていいぞ。」

「いえ監督、すみません。体調なら大丈夫です。」

そしてチームメイトも、

「三木、体調悪いなら休めよ。」

と声をかけるが、

「だから大丈夫だって言ってるだろ!」

三木はそれには大声で怒鳴り返す。

 「もしかしたらこの中に犯人がいる。」と考えている三木にとって、本来なら味方であるはずのチームメイトは今は敵でしかなかった。

 そのような流れでその日の練習を終えた三木は、

『とりあえず犯人が誰なのか分からない以上、自分でクセを見つけて修正するしかない。』

そう思い家で入念に素振りをすることにした。

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