第7話 六ー二

 「ストライク!」

初球の相手ピッチャーの球は―、インハイのストレート。そしてその球は今まで見たことのないものであった。

 『は、速い―!』

これが「レギュラー」のボールの威力なのか―。俺はそのことをまざまざと思い知らされる。

 「ストライク2!」

次に来たのは緩いカーブ。その球速差に俺は腰が引けてしまった。

 『これは―、打てない。』

俺は一旦タイムをとり、ダッグアウト付近を見る。

 するとそこには監督、またチームメイトがいてこっちを見つめている。

 また俺は一瞬のうちにスタンドの方を見る。そこには今までの俺のポジション、必死に応援する部員たちの姿があった。

 そして俺は不思議な感覚にとらわれる。

 『この状況―、絶体絶命だけど―、楽しい!』

そうそれは初めてボールを打ち、野球をプレーした時の感覚に似たものか。

『ごちゃごちゃ考えず、この状況を―、楽しもう!』

 一般的にはこのような心境を「開き直り」と言うのであろう。

 そう思えた俺は、次の瞬間無心になった。

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