第5話 五

 「よっしゃー!やってやるぞ!」

俺の体の中はアドレナリンで充満している―と言ったらオーバーかもしれないが、俺は試合当日の朝、やる気でみなぎっていた。そしてその時の俺は信じられないかもしれないが、悪魔と取引をしたこと、試合結果によっては明日にも俺の魂が悪魔に奪われることなど、頭の中にはすっかりなかった。

 そしていつもより早い集合時間に俺たち野球部員は呼ばれる。

 「今からスタメンを発表する。

 ただ1つ言っておくが、スタメンになれなかったからと言って試合に出られないというわけではないぞ。私がいつでも起用できるように準備をしておくこと。あと、応援をしっかりすること。いいな!」

「はい、監督!」

 監督の号令に部員全員が威勢良く返事をする。

『そうだ!この試合はスタメン、控えを含めた全員、いや俺が今までいたベンチ外の部員、また応援団も含めてみんなの力で勝利するんだ!』

 俺の体の中のアドレナリンは、やはり体全体を駆け巡っていた。

 そしてスタメン発表である。俺の名前は―、残念ながらなかったが、そんなことはもはやどうでも良かった。


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