第3話 三

 『えっ、これはもしかして…、

 俺の努力が実ったのか?』

俺は一瞬そう考え、嬉しい気持ちになった。

 しかし次の瞬間、俺はあることを思い出す。

 『そういえば、今朝俺は変な夢を見たような…。

 そうだ、悪魔の夢だ!

 俺は確か悪魔に取引を持ちかけられたんだ。それで…ダメだ最後の所は覚えてない。』

 するとこの「レギュラー組で練習」というのは悪魔との取引の産物なのだろうか?でもそんなことはあり得るのか―。俺は一瞬迷う。

 しかしそんな迷いは少しのうちに消え去った。

 『―俺の実力からして、レギュラーというのはあり得ない。

 ということは俺は悪魔に魂を売ったことになる。

 俺の魂は、夏の大会が終わった後、悪魔に取り上げられてしまうのか―。』

 何てバカなことをしたんだろう、俺はそう思う。こんなの、俺の実力じゃない。実力でレギュラーを獲った人にこれでは申し訳が立たない。俺は、自分の記憶しない「選択」を後悔した。

 ―しかし、今さら悪魔に「取引は中止だ。」と言っても相手にしてもらえないだろう。と言うかそもそも悪魔がどこにいるのかさえ分からない。なら―。

 『俺はこの夏が終われば死ぬ。

 なら思いっきり、レギュラーとして迎える大会を頑張って、楽しむしかない!』

 俺は、迎える死の恐怖に打ち克ち、また申し訳ないという気持ちを抑えて何とか気持ちを切り替えようとした。


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