第2話 二
「あなたは、佐山宏樹(さやまひろき)様ですね?」
「は、はい…。」
夢の中で俺は、黒いマントのような服を着た何やら怪しげな風貌の男性に声をかけられる。
「そしてあなたは、今高校の野球部の補欠でいらっしゃる。」
「あ、あなたは…?」
「すみません申し遅れました。私は『悪魔』です。」
「あ、悪魔!?」
そこまで俺は聞き、そういえば俺はさっき眠りについたことを思い出す。
『ということは、これは夢の中なのか…?』
そう思った俺はとりあえずその『悪魔』の話を聞くことにした。
「それで悪魔さん、要件は?」
「気になりますよね、佐山様。
実は私は今日、佐山様にある取引の依頼をしに参りました。」
「取引…ですか?」
「はい。
突然ですが佐山様、今悩んでいることはございませんか?」
さっき「野球部の補欠」と言われたからか、またはそもそも俺の頭の中にはそれしかないせいか、俺はそう悪魔に訊かれた瞬間、頭の中に「レギュラーになりたい。」という願望、悩みが出てきてしまう。
「そう、まさにそれです。私が持ちかけさせて頂きたい取引は、野球部に関することです。」
―どうやらこの悪魔は、俺の思考回路を読めるようだ。
「それで?取引って?」
俺は敬語も忘れてそう悪魔に訊く。
「では本題と参りましょう。
私の力で、あなたを野球部のレギュラーにして差し上げます。
その代わり、夏の大会が終わりましたら、『あなたの魂』を私にお譲りください。」
※ ※ ※ ※
次の瞬間、俺は目が覚めた。
『何だ、やっぱり夢か…。』
それにしても嫌な夢だったな、と俺はさっきまで見ていた夢を思い返す。
また、「取引」の途中で目が覚めたため、結局取引をしたのかしていないのか中途半端なまま、俺はその夢を終えたことになる。
『ま、いっか…。』
そしてその日も俺は登校し、また夕方になりいつものように野球部の練習に向かう。
しかし、そんな俺を待っていたのは異変だった。
「佐山!」
「はい!」
レギュラー陣の監督に俺は呼ばれ、
「お前は今日から、レギュラーの方で練習しろ!」
俺はそう言われた。
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