第47話 反撃の狼煙を上げたんですが。

 ガギッ


 金属と金属がぶつかり合う音がする。

 私の腕から生えた馬鹿でかくて重たい盾が、天雲アマクモ紫苑シオンの刀をすんでの所で止めていた。


 ホントにギリギリだった。

 上から振り下ろされた刀は盾を半分近くまで切り裂き、突き出された刀は貫通して私の頬をかすめていた。

 ……能力の再現率が良くないと言っていた朱鷺トキさんの言葉が脳裏に蘇る。

 多分、ルリさんだったら完全に弾き返せてたかもしれないけど、私ではこれが限界っぽい。

 でも良かった……またまた間一髪。

「これはっ……ルリのイージス?!」

「これも借り物っ!!」

 私は盾を消してヤツの腹に思いっきり前蹴りを叩き込む。増強された筋力が、ヤツの体を後ろへと吹き飛ばした。


 私の能力──他人の能力を借りる事が出来る能力。しかも、借りた能力が私が持つ能力と混ざる事がない。

 それはつまり、という事を示していた。

 これが、弱い私の唯一の強み。

 ルリさんと織部オリベさん二人から能力を借り受けた。私が、天雲アマクモ紫苑シオンから蘇芳スオウさんの能力を取り返す事が出来るようにだ。

 その為、今二人は能力無しで戦ってくれている。ライブラリが使えるとはいえかなりの苦戦を強いられている筈だ。

 命を優先する事──そう言われてるのに、二人は命がけで戦ってくれている。


 だから、私も逃げるわけにはいかない。

 死力を尽くす!!!


 後ろに吹き飛ばされた天雲アマクモ紫苑シオンは、それでも踏み止まって窓ガラスへの激突は避けた。

「まさかっ……他人に能力を預けるなんてっ……」

 彼は信じられないといった顔で私の事を見ている。

「それはっ! ルリさんも織部オリベさんも、私を信じてくれたから!! 嘘にまみれたアンタなんかには、絶対出来ない事だろうけどね!!」

「ッ……」

 ヤツがたじろいだのが分かった。

 そのスキに、私は左手首についたライブラリのスイッチを押す。そして──

限界解除ブレイク!!」

 私は全力でそう叫んだ。

 すると、私がスイッチを押したライブラリのがカチリと外れる。

増幅ブースト!!」

 続けざまの私の言葉に、一つのライブラリの出力水晶がそのエネルギーの出力量に耐え切れずに弾け飛んだ。

 その瞬間、織部オリベさんの針で強化された身体に更に力がみなぎる。しかし、全身の筋肉がビキビキと悲鳴を上げるとともに鋭い痛みが走った。

 本来なら人の身体を壊さないレベルにまで下げられた出力を、を通らないようにして出力限界値を超えさせたのだ。


 暫くマトモに動けなくなってもいい!

 今この瞬間を逃すワケにはいかない!!


「ライブラリ程度の武器しか持たないキミは、いくら強化したって俺は倒せないよ!」

 床に片手をついて構えた私に対し、両手の刀を構え直す天雲アマクモ紫苑シオン

「倒す気なんてない!!」

 そう、目的は倒す事じゃない。

 能力を取り返す事──つまり、天雲アマクモ紫苑シオンを捕まえる事!

 私は足元のベッドではなく、後ろにあった壁を蹴る。

 自分でも信じられないぐらいの速度で突進した私は、刀を振りかざそうとした天雲アマクモ紫苑シオンの両手首を掴む。

 そして、全力で彼の体を前へと押し出した。


 部屋の窓ガラスを突き破り、私と天雲アマクモ紫苑シオンの身体が空中へと投げ出された。

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