第43話 戦いを前に緊張してるんですが。
ゲンさんが運転してくれる車の中で、私は左掌に残った
上手く行くか分からない。
でも、上手くいかないと後がなくなる。
なんとしてもやらなくちゃ。なりふり構ってられない。
震える手に、そっと細い指が重ねられた。ルリさんだ。
「大丈夫ですよー。私がついてますー。一応、
「一応って何ですか……」
「
もし危険だと感じたら退いて下さいー。貴女の命の方が大切ですー」
珍しく毒を含んでいない優しい物言いでルリさんが私の手をポンポンと叩いた。
「オラ、そこにワイヤレスイヤホン入ってる。付けとけ。仲間内で話が出来るように繋いどくからよ」
運転しながら、ゲンさんが後ろ手で後部座席に置いてあった箱を指し示す。
「なので、助けが必要ならすぐ声をかけて下さいねー。
「特攻したら僕が助からないじゃないですか……」
「骨は拾ってあげますよー」
「死ぬ前提ヤメでもらえます……? この状況だと笑えません……」
「じゃあ、
「ッ……」
そんなルリさんのズルイ言い方に、
「あんまりイジメないであげなよルリさん」
そう助け舟を出してあげると、
すると、残念そうに頬を膨らませるルリさん。
「えー。だって面白いんだもんー」
「好きなの?」
「えッ?!」
「そうですねー。大好きですねー」
「ええッ?!」
「イジるのがー」
「……」
私とルリさんに手玉に取られ、
「遊んでるトコ悪ィけどな。そろそろ着くぞ」
道を左折しながらゲンさんが厳しい声を上げた。
その言葉に、三人に一気に緊張の空気が走る。
私は気持ちを切り替えてルリさんと
「さて。じゃあ今後の作戦なんだけど」
「当たって砕けろ大さくせーん」
「……酷い名前ですね……」
ルリさんはルンルンの笑顔、
作戦は単純。
先程
全ての扉をノックして何処に宿泊しているのかを確認するのだ。
「不幸中の幸いで、今は普通のビジネスホテルであれば部屋清掃の時間ですー。清掃時はドアを開けてますので中が見えますー。
アイツらは恐らくほとぼりが冷めるまで連泊してるでしょうから、清掃は入ってないと思われますー。これは予想なので、それに反して外出してる可能性もありますがー。
兎に角、ドアが閉まってる所があったらノックして中に居る人を確認しますー。
監視カメラは全ての階に仕掛けるので監視は可能ですー」
その言葉とともに、ルリさんが段ボール箱を開けると、中には三センチ四方の小さなカメラがゴロゴロ入っていた。
「これは
「つまり、コレって盗聴──」
「手段は選びませんー」
途中の
「見つけたら他のメンバーに声をかけて下さいねー。
私は作業をイメージして、ふと
「でも、ホテル内をウロついてドアをノックしまくってたら怪しまれるんじゃ……」
「堂々としてればそれほど怪しまれませんー。もし危ないなと思ったらその階の残りは飛ばして別の階へ行ってくださいー」
うわ。それ一番難しい……
「……胃が痛い……」
「根性で我慢して下さいー」
鬼だ。
「アレだ。俺は近くに駐車して全階の動画を確認しとく。必要に応じて指示を飛ばすからイヤホンは外すなよ」
ゲンさんが車を減速させ、適当な場所に駐車する。後部座席のドアを開いて外に出た。
駅前から少し外れている為人通りはそれほどでもない。しかし、全く人がいないというワケでもなかった。
「恐らく、ビジネスホテルの社員は
ただし、いざとなったら命の方が優先ですー。
辺りを爆破してでも逃げて下さいー」
「爆破って……」
「命の方が優先ですー」
ルリさんは二度言って
「
……そうだ。相手は
「……じゃ、行きますか」
私は、両頬をパチンと叩き気合いを入れる。
ルリさんと
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