第42話 計画を実行するんですが。
支局の部屋には、沈黙の時間が流れていた。
これから、計画を実行する。
緊張で胃がキリキリしてきた。
上手く行くといいな……じゃないと。
ルリさんは楽しげに鼻歌でも歌い出しそうな感じて席についてるけれど、
あれ、ヤバイよね。
壁にかかった時計が十時を示した。
それを合図に、
そして、
「もしもし、ごめんなさいね。ちょっと確認したいことがあってご連絡しましたの。先日そちらの営業の
言葉を途切れさせずに、流れるように適当な事を
勿論嘘だ。
電話が始まってから、ルリさんはパソコンモニターを凝視している。
私はルリさんの後ろに立ち、同じくモニターを見ていた。
「部署名? えーとなんだったかしら……手元にお名刺がないのよねー。ごめんなさいねー。最近物覚えが悪くってオホホホ」
物腰柔らかい感じでいてゴリ押し感がある。
さすが
「あら! 調べてくださるの? ありがとうー。助かるわー」
こうやって、会社にかけてそこに
アイツの名前が、漫画の主人公みたいに珍しい名前だから出来る作戦だ。
私の『
「あら、そうなの? まぁ! では会社を間違えてしまったのね、申し訳ないわー。
ごめんなさいねお手数をおかけしてしまって。
それでは、ごめんください。失礼します」
ガチャン。
「一軒目は外れ」
受話器を置いて、
それ以上に盛大な
「残念ー。次いきましょ次ー」
全然気にしていない風のルリさんは、モニターから視線を外さずウキウキした口調でそう催促した。
しかし、そこも空振りだった。
「ルリ、いいかい?」
「もっちろーん」
「
「……無理です……」
一度そんなやり取りを行ってから、
最初のやり取りは先の二軒と同じだったが──
「そうそう! そうだったわ! お繋ぎ頂ける? 少し急ぎなの。私これから出張で飛行機に間に合わなくなりそうで。急かせてごめんなさいね」
……来た。
この会社で当たりだ。
さて。ここからだ。
「あら、課長さん? どうもお世話になっておりますー。
「あら、お休みなの? そう。ご病気? あらあらそうなのー。それは困ったわー」
……ここまでは想定内。
もし会社に出勤してるなら会社の入り口を監視すればいい。
もしいないなら──
「この間発注をかけさせていただいたのだけれど、そのメールを早く確認していただきたくて個人携帯の方へ送ったの。
でも、送った内容に一部間違いがあったような気がして確認していただきたくて。でもねーこの間私のパソコンが壊れてしまって送ったメールが私の方でも確認できなくなってしまったのよ。
申し訳ないけれど確認して頂くようにお願いしていただけるかしら? じゃ、お願いね。それではごめんくださいね、失礼しますー」
ガチャン。
凄い。
相手に口を挟む時間を与えず立て板に水状態。
しかも、意図的にこちらの名前を伝えてない。
発注確認──つまりお金に関わる事で信用にも繋がる。
確認しないワケにはいかない……筈。
ルリさんはモニターを凝視している。
表示しているのはとあるツールの地図──GPSと連動したもの。
今は地図だけで他に何も表示されてはいない。
痛いほどの緊張が部屋に充満する。
私も緊張で息苦しくなってきた。
「来ましたー!」
ルリさんが叫ぶ。
モニターの地図に赤いマークが表示された。
GPSによる位置情報──
ヤツがスマホの電源を入れたのだ。──
ちなみに、何でそんな盗聴アプリ
「場所は……墨田区ですねー。近くにいたんだなー。あ、ビジネスホテルだー。
その言葉で顔色が復活した
「……あ、このビジネスホテル、
GPSの信号はまだ途切れていない。まだバレてない。
私たちはバタバタと準備をする。
バレて逃げられる前に動かなければ。
ルリさんと
「では、行ってきます」
私は、
その背中に
「派手にブチかましといで」
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