第39話 必要機材を確認してたんですが。
「──で、『
ただし、入力部の後に抵抗を通るようになってて、通すエネルギーは制限させてる。あまりに強ェエネルギーを通すと出力部が耐え切れずにブッ壊れっからだ。
だから全力で使っても威力の最大値は変わらねェ。
いいか。この出力用水晶は高ェんだ。壊したら弁償してもらっからな。
他の『
ただし、ここをこうやってからブレ──」
「ゲンさーん!」
稽古場でゲンさんにライブラリの仕組みから使い方を聞いていると、扉付近から明るい女の子の声が掛けられた。
ピョンピョンとジャンプして、着ている猫耳フードについた長いシッポを揺らした、
「ん? だーれ?」
ゲンさんに駆け寄りながら、
「私は
私は出来るだけ朗らかに笑い、小首を傾げて
「なるー!」
私の身体をぎゅーっと抱きしめてくる彼女の背中をポンポンと叩き、少しだけ複雑な気持ちになった。
今見ている
この間見た
彼女は以前私と会って、私に色々な事を教えてくれたのを覚えてないのだ。
私が立膝になって彼女の身体を離すと、八重歯を見せてニッコリと笑う
──もう、私が怖がっていない事を、
「ゲンさん今何してるの?」
私の身体から離れた
「ライブラリの説明だよ。こっから使ったりもすっから危ねェぞ」
ゲンさんが
「ふーん。ストームかぁ」
ゲンさんが出力部だと説明した部分に付いている水晶が高音を発しながら振動し、緑色に激しく輝いた。
「あ──」
ゲンさんが危険を叫ぶ前に、その出力部から猛烈な風が巻き起こる。
運悪く目の前に立膝をついていた私の身体に、圧縮した空気が叩きつけられた。
見えない分厚い布団のようなものに斜め下から殴られたかのような衝撃を全身に受ける。
瞬間的に、驚くゲンさんと
背中に物凄い衝撃を受けて息が止まった。
「
ゲンさんが叫んでいる。
「
あまりの痛さに声が出ない。
目も開けられない。
バタバタとした足音と共に、誰かが近くに駆け寄ってきたのが分かる。
「ルリ! 救急車呼べ!」
「ゲンさん、何があっ──
ああ……
「
「ええと、ええと……まずは動かさずに……
ゲンさんと
「背中……」
辛うじて出来る呼吸と共に、そう吐き出した。
「ッ……」
「
「脊椎損傷の可能性がありますね……救急車をっ……」
「ルリに頼んだ」
……救急車……
私は震える手を床につき、なんとか上体を起こそうとする。
「
私の身体に触らないようにそう制する
「……ここから早く移動しないと……」
「何で?!」
「ビルの地下に……入られたくないでしょ……見られちゃマズイものとか……ありそうだし……」
「そんな事気にしてる場合かッ!!」
ゲンさんの怒鳴り声。これは怒ってるんじゃない……心配してるんだ。
次いで
「そうですよ! それより、下手に動いたら悪化して、最悪──」
「気にしてる場合だよ……もう、私のせいでこの支局に迷惑を掛けたくない……」
「ッ……」
「階段から落ちた事にしましょう……二階から……一階に降りようとして足を滑らせた事に……」
私がそう呟き、なんとか立ち上がろうとすると、
「
「行きましょう
「はーい……」
私と
「ああもう! どいつもこいつも!!」
そう、
そこから出る前に私はふと思い出して、ゆっくり振り返って棒立ちになっている
「大丈夫だよ……ちょっと病院行って……また元気に戻ってくるからね……また明日。
……あ、日記に書いちゃダメだよ? 明日の
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