第37話 能力を確認していたんですが。
「マジかー」
「マジですねー」
「ホントにマジかー」
「ホントにマジですねー」
「悪い夢かコレはー」
「残念ながら世知辛い現実ですねー」
私の愚痴に、ルリさんがイチイチ被せて来た。
稽古場の畳の上に胡座をかいて座り、前やったように水晶を両手で持って能力の習得練習をしていた。
「でも
「そう簡単に言うけどさー……こう、なんて言うの? 拒否感? 抵抗感? そんなもんがあるんだよねー」
「そんなー。
……はっ?! もしやまさか……
「違うよ?! ホラでもさ……」
「いいんですいいんですー。隠さなくてもいいんですよー。恥ずかしい事ではありませんー。むしろ、そのピュアさは貴重ですー。大切にしていきましょうー」
「だから違うって言って……」
喋りながらも、どうやら普通に流れを循環させる事は可能になったようだ。
先程から手にした水晶はキラキラと瞬いていた。
……これも、監禁されて精神的に追い詰められた状態での修行の賜物だと思うと、ちょっと複雑な気分になる。
「あー……循環出来てますねー。しかも、ちゃんと水晶が能力の存在を示してますー。
示してますねー。示しちゃってるなー……」
ルリさんが、私が持つ水晶の
「示しちゃダメなの?!」
「んー。ダメじゃないんですよー? ダメじゃないんですどもー……
ええとですねー。能力は生来のものなので基本的な性質は変わりませんー。見た目は変わる事はありますがねー。性質が変化するのは別の能力を引き継いだ時ですー。
能力を引き継いだ時には、その能力と生来自分が持つ能力が混ざってしまいますー。
混ざった結果、能力の性能が悪くなる事も良くなる事もあるんですよー」
「……能力が混ざる? って事は、私が引き継いだ
……ん? その状態でコア化して、相手に渡してしまったら、渡した後の私はどうなるの?」
「そこなんですよねー……」
今まで
「……普通、人に渡した能力は失われてしまいますー。そして、混ざった能力は分離する事は出来ませんー」
「この手の文様は?」
「能力保持者の証は、能力を譲渡しても何故か消えないんですよー。でも、それは問題じゃなくてー……
本来であればコア化し渡した時に、
「なんですが?」
「それがー……先程の水晶の反応を見る限りだとー……失われてないっぽいんですよねー。
なんでだろー?」
「ええっ?! ルリさんにも分からない事あんの?!」
「失礼ですねありますよー。私だって普通のそこら辺にゴロゴロいる無知なOLの一人ですよー?」
「……今何気に周りのたくさんの人をディスったね……」
「んー……そうだなぁ……それを確かめる為には
「それが……なんだけど……」
今度は私が言い
「私、
「えー。じゃあ、その時と同じように『出ろ』って思ってみてくださいよー」
「うーん……」
私は言われた通りに、
……しかし、何も出てこなかった。
「んー? 何かオカシイですねー。あー、それじゃあ、水晶を使ってコアを出してみてくださいー」
言われるがまま、今度は前にやった時のように水晶を持って極限まで集中する。
最初は白く光っていた水晶が、段々色付いてきて──
「
その様子を見ていたルリさんが、突然ガバリと立ち上がり、猛烈な勢いで稽古場を出て行ってしまった。
え……あの……コレ、どうすりゃいいの? 消していいの? 維持してなきゃいけないの?
私は、どうしたらいいのか分からずに、そのままルリさんが消えて行った扉を呆然と見ることしか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます