第29話 追いつめられたんですが。
その日はいつもと違った。
監禁された部屋から連れ出したのは、筋肉ダルマ・
袋をかぶせられていつも通りに部屋から出されたが、連れて来られた先はいつも能力を練習する部屋ではなかった。
袋を頭から外されて見えたのは、いつもより広いおそらくファミリータイプの部屋。
部屋の中に何もないのは私がいた部屋と同じだったが、今回違ったのは部屋だけではなかった。
私より先に、
私と異なり後ろ手に縛られた状態で床に転がされている。
「
彼は憔悴した顔で私を見上げると、少しだけ笑顔になる。が、私の頬に痣が出来ているのを見つけたのか、途端に険しい表情になった。
「お前らっ……
立ち上がろうともがいて、黒レース・女に顔を殴られ再度床に転がった。
「アンタに関係ないでしょうが。黙ってそこで見てなさいよ」
ついでと言わんばかりに
「さぁて。お前、コアが出せるようになったんだって?」
私の後ろにいた筋肉ダルマが私の背中を小突く。食べてなくて体力が落ちていた私は、その勢いに負けて床に這いつくばった。
コアが出せるように……? コイツ、何の事を言ってるんだろう。
「
コア……
コア?
もしかして、あの水晶が赤く光ったのは……
「オラ。早くしねぇと、コイツがどうなるか分かんねェぞ?」
下卑た笑いをしつつ、
何を──そう思っている間に、
「ッ……!!」
最初何をされてるのか分からなかったが、すぐに予想がついた。
あれでは呼吸が出来ない!
「やめなさいよ筋肉ダルマっ!!」
立ち上がってそちらに駆け寄ろうとするが、私の足に付けられた鎖を
その間にも、その拷問は何度となく繰り返された。
「やめなさいよ! やめて!!」
今度は
それでも何とか手を伸ばしたが、
「お前を殺せないから代わりにコイツだ。
早くしねェと死んじまうぜ? コアを出しな」
一度手を止めて、酷く残酷な笑顔で私を見据える
「大丈夫だ
そんな強がりを言う
「ほら早く」
「ッ……」
コアの出し方は分からない。
でも、多分あの練習の通りなんだ。
私は水晶を持ってるかのように両手を合わせ、いつもやるように流れをイメージする。
強く、強く、ジッと手の中心を見つめて集中した。
すると、普段水晶がある空間に白い光が現れ始める。その光はだんだんと強くなり、赤みを帯びていった。
「コアが出たわっ……」
私は、集中を切らないように無視した。
前にルリさんが言っていたように、それほど長い間安定はさせられない。
「さぁ、それを渡しなさい!」
「早く!」
焦れた
「
ビクリとしてそちらを見ると、タックルでもしたのか
それを見た瞬間、集中が切れて赤い光は消失した。
「ちょっと!」
その隙をついて、
すかさずこちらへ駆け寄って来て、立ち上がり掛けた
「逃げるぞ!」
手にした刀で私の足を繋いでいた鎖を断ち切る。
そして二の腕を掴んで私を立たせ、扉の方へと走った。
「行け!」
途中、
追いかけて来た
私は扉の鍵を開けて部屋の外へと飛び出す。
マンションの廊下らしき場所に出たが、電灯が外されているのか非常灯しかついておらず、内廊下であった為暗くてよく見えなかった。
しかし、迷っている暇はない。
私は廊下を駆け出す。
階段を駆け降りようと角を曲がったが、防火シャッターが降りていて通る事が出来なかった。
左右を見回すが防火扉はない。
どうしよう、ここは通れない……
振り返ると、
「無理! ここ通れない!」
「
彼のその言葉にハタと気付いて刀を
思いっきり振りかぶって防火シャッターを斬りつけた傷がついただけで切れなかった。腕に反動が返ってきて思わず刀を取り落としてしまう。
代わりに
「くっ……こうなったら……」
「
彼のその言葉に、身体がギクリと硬直した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます