第28話 監禁されたんですが。

 金属製の扉がガツンと蹴られた音で目を覚ます。


 ゆるゆると目を開けると、扉の向こうから微かな光が射し込んで来るのが目に入った。

 光はあれだけだ。

 ここには明かりがない。壁にある窓も外側から打ち付けられていて塞がれている。

 私は置かれたマットレスの上に転がり、その光をジッと見つめる事しか出来なかった。


 足首には鎖。

 こんなの何処で売ってるんだか。ホームセンターか?

 なんて、毒づく気力ももうない。

 今が何時で、どれぐらいここに閉じ込められているのかも分からない。


 ここは多分、打ち捨てられた古くて狭いワンルームマンション。

 幸い、足に付けられた鎖は長めで部屋に備え付けられたトイレには行けた。

 でも、それしか出来ない。

 この部屋には、マットレスと私が飲んで空になった水のペットボトル、時々差し入れられるチョコレートの空袋しか転がってない。

 腕につけていたライブラリと時計は取り上げられてしまい、勿論荷物もない。

 部屋には家電類が一切なく、太陽光も射して来ないし、マトモな食事も摂っていない為、本当に時間の感覚が失われてしまった。

 当初、逃げ出せないものかと試してみた。

 童子切どうじぎり具現化インカネして、鎖を斬れないかと試してみたけど、いくら擦っても嫌な音を立てるだけで効果なし。

 扉に向かって振り下ろしてみたけれど、ただ弾かれて終わった。

 しかも、振り下ろした腕が衝撃で途轍とてつもなく痛かった……


 拉致られてから、どれぐらい経ってるんだろう。

 天雲アマクモ紫苑シオンは……大丈夫なのかな……


 車に詰め込まれて、黒レースの・ランと筋肉ダルマ・テツに拉致られた後。

 頭に袋をかぶせられ、ここに連れて来られて監禁された。

 天雲アマクモ紫苑シオンは別の部屋に閉じ込められているのだろう。

 時々叫ぶ声が聞こえたけれど、姿は見ていない。

 私を監禁なんかしてどうするつもりなんだろうといぶかしんだけど、ヤツらの狙いは簡単だった。


 私に、蘇芳スオウさんの能力のコアを出させる為。


 時々、袋をかぶせられてこの部屋を連れ出される事がある。

 そんな時は決まって、別の部屋に詰め込まれてとある人物と二人きりにされた。


 黒レース女・ランでも、筋肉ダルマ・テツでもない人間──


 黒いパーカーを着込んだ──男。

 部屋が薄暗いせいもあるけれど、フードを目深に被って顔は見えなかった。


 そいつは決まって、部屋の真ん中に私を転がすと、掌大てのひらだいの水晶を投げてきた。

 そして、自分は部屋の隅に置いた椅子にドッカリと腰を下ろし、こちらをジッと見る。


 ここで──能力の練習をしろという事だ。


 能力を練習しつつ監禁衰弱させて、ギリギリの状態にして能力のコアを出させるのだと分かった。

 最初は抵抗の為に童子切どうじぎりで斬りかかったが、呆気なく避けられ転ばされ、ついでに腹を蹴られた。

 しばらく呼吸が出来なくて、その場でのたうち回った……


 仕方なく相手を倒す事は諦めたけれど、練習せずにコアを出せないでいれば、命は繋げられるかと思った。

 しかし、私が水晶を使って練習しなければ、黒パーカー男は手加減なく私の顔を殴りつけてきた。

 エネルギーを通すと水晶が光る為、手を抜いていても一目瞭然。

 最初は何度か反抗してみたりしたけれど、食事も取れず睡眠もランダムにしか取らせてもらえない、反抗する度に殴られる為気持ちが萎えてしまい、そのうち真面目に能力の練習をするようになった。


 何度目の練習だったか──


 いつも通り水晶にを通していると、いつもは白く光る水晶が突然激しく赤い光を放つようになった。

 その瞬間、黒パーカー男は私から水晶を取り上げる。そして乱暴に私の腕を掴み上げて立たせると、袋をかぶせてまた元の部屋へとぶち込んだ。


 なんだったんだろうか、あの光は……


 まともに寝てないせいか頭が働かない。

 私は、次に叩き起こされるまではとマットレスの上に寝転んで、気絶するかのように眠りについた。

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