第24話 なんだかとってもイライラするんですが。
イライラする。ああイライラする!!
風呂は今
シャワーでストレス発散ができないのなら……料理だ!!
冷蔵庫を開けて作り置き惣菜を確認する。
私のささやかな趣味──料理。
ただし。料理全般は別に好きでも嫌いでもない。ぶっちゃけ面倒くさい。作らずに済むなら作りたくはない。
好きなのは……うどんのタネを全力で
ただし、今日はそんな事を悠長にやっている時間はない。……アイツもいるし。
それをやってる姿は誰にも見せたくない。
憤怒の形相で生地を殴り踏む姿なんて……誰にも見せられない!!
仕方ないので、兎に角全力でフライパンを振り回せる野菜炒めを作る事に。
家の中に残ってる野菜を片っ端からザクザク刻む。キャベツ、ちょっとシナってきた人参、玉ねぎは切らしていたので長ネギを。肉は小分けに冷凍していたものを古いものから選んで解凍してぶち込んだ。
あとは……賞味期限が切れそうなチクワがあったからそれも。あ、ジャガイモ芽が出始めてる。これも使ってしまおう。
うーん、野菜炒めじゃなくて
全ての嫌な事を一旦忘れて料理に没頭する。
フライパンを振り回してジャカジャカ炒めている間に、付け合わせは何がいいかと考えた。
作り置きの中にほうれん草の煮浸しがあるからそれにしよう。味も被らないし。
あとは……漬物か。あ、しまった! ぬか床にカブ漬けっぱなしだ!
「何してんの?!」
食器棚に腕組みしつつもたれ掛かって、笑顔でこちらを眺めていた。肩にタオルを掛けてラフなトレーナーの上下。髪は濡れて下されていた為、普段より幼く見えた。
「見てる」
「だろうよ! いつからそこに?!」
「さっきから。何やら独り言を呟きながらやってたから声かけなかった。……楽しませてもらったよ」
「何を?!」
ついツッコミを入れてしまったが、
勝手に食器棚の戸を開けて大皿を取り出し、私に渡してくる。
「ビールがあるのは知ってる。……さっき確認した」
ニヤリと笑って私に皿を受け渡した後、箸立ての中から適当に箸を何膳か引き抜く。冷蔵庫の中から缶ビールを二缶取り出して、楽しそうにリビングへと戻って行った。
なんなんだ……?
なんか……ちょっといつもと違う?
その間に煮浸しを冷蔵庫の中から取り出して小鉢によそう。
テーブルに持って行こうとしたら、キッチンに戻ってきた
切ってお皿に並べている間も、ヤツは鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で私の後ろを行ったり来たりしている。
「ご飯は?」
「そこ、炊けてる。そっちにお茶碗。しゃもじはそこの引き出し。炊飯器スイッチ切っちゃって。残りは冷まして冷凍するから」
「うん」
「もし小皿が必要なら茶碗の奥ね」
「分かった」
なんか……なんだろ。
違和感があるというか、逆にないというか。
使ったものを洗って片付けて、最後に味噌汁を出して席に着くと、ニコニコした
「……護衛中でしょ? 酒、マズくない?」
「一本だけなら大丈夫だよ」
ホントかよ。
……しかし。物凄い誘惑である。
ここしばらくはビールなんて飲めていない。
怒涛の十六連勤の時は食事すらままならなかったし、その後はそれどころじゃない事が起こって飲んでない。
今は風呂上がりで喉も渇いている。
缶から水滴がツーっと流れ落ちた。
風呂上がりの一杯の美味しさなんて、言われなくても知ってる!
一本ぐらい……なんて、怖い誘惑! ダメな大人の第一歩!
しかしっ……
「はい、どうぞ」
そして自分の分のも開けてゴクリと一口飲んだ。
ぐぅッ!! 喉鳴らすなよ! CMかっ!!
「くっ……今日だけだからな!」
相手に言ったのか自分に言ったのか。ほぼ後者である叫びを上げ、私は缶ビールを
喉を通る炭酸の強い刺激と舌に残るホップの苦味。キレがよく後味が残らないが、鼻を抜けるビール特有の香りが……もう!!
好きッ!!!
「ヨシ。じゃあいただきます!」
先程から恐ろしく上機嫌の
湯気の立つご飯に
最初の一口を
「幸せだ」
そうポツリと漏らした。
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