第20話 猫耳パーカー女子が現れたんですが。
「ごめんね
猫耳パーカーの袖をパタパタ振りながら、女の子がゲッソリした
「ははっ……誤解が解けて良かったです……」
……同情する。今回のルリさんの毒舌はまた一層キツかった。
会社の応接室にて。
猫耳パーカー娘の横には
ルリさんはパーティションの向こうでパソコンに向かっているが、耳は完全にこっちの会話をキャッチしており、事あるごとに毒をブチ込んで来ていた。
「さて。じゃあ改めて紹介しようかね。
この子は
「はーい! ボクは
元気いっぱい挨拶してくる彼女──
「で、
「はーい!
「はい。
「やだ堅い! ボクの事は
「あ、ハイ」
そのあまりのテンションに、若干ついていけてないんだけど……
それよりも、さっきの
このビルに住み込み?
今日聞いた話なんだけれど、この雑居ビル一棟が
個人として会社に貸与しているというテイだと言っていた。
で、
じゃあ、
私が
「
「それはねっ! 私が一日しか物事を記憶してられないからなんだ! 生活するのが大変だから、
あっけらと明るく爆弾発言で、
……え? 一日しか物事を記憶してられない?
「
起きたら全てが知らない世界だ。普通の生活は出来ないからね」
前向性健忘……? なんか、テレビで見た事がある気がする。
そんな
確か、自分が誰かも覚えてない事もあるとか。そんな生活……想像もできない。大変どころの話ではないだろう。
でも、目の前に座る彼女には、その苦労や悲壮感は一切なかった。
私と目が合った
「大丈夫だよ! ボク日記書いてるし! そこにちゃんと大切な事は書いてあるんだ!
そうひたすら明るく喋る
「ああ
「えー。残念」
「さ、
「はーい!」
まるで嵐の後。
突然静かになったような気がして気が抜ける。
「……
こちらを向いてはいなかったが、その眼光が鋭い事が見て取れた。
「隠していても仕方がない。
私はね、
その、静かな声にゾクリとする。
ゆっくり振り返った
「……多分、詳細は覚えてないだろう? よっぽどの事だった筈だ。
でも、
普段の上品な物腰とは裏腹のその声の厳しさに、思わず
「でも……思い出そうとしても……」
「分かってる。自分の力では無理だろう。その為の、
私の言葉を遮り、
一つ大きく呼吸をし、言葉と一緒に吐き出した。
「
すぐにとは思ってないけれど……そんなに悠長に構えているつもりもない。
大丈夫。思い出して詳細を聞いた後は、その辛い記憶を忘れさせてあげるつもりだよ。
……それに」
一度言葉を切り、
私を見下ろしながら──それはまるで、死刑宣告のように冷たく言い放たれた。
「
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