第13話 命の危険を感じてるんですが。
「え?」
黒レース女・
ルリさんはというと、手を口元に当てて肩を震わせて笑っている。
今この状況でそんな風に何故笑える?!
「私たちが何の策もなく、狙われているというのに外に出てくるワケないじゃないですかー」
え?! そうなの?! ただ単純にルリさんのワガママじゃなかったの?!
私も一緒に
「馬鹿ですねー。馬鹿過ぎて救いが見えないですねー」
コイツらと
「お前達は俺達をここに
二本の日本刀を持った腕をダラリと下に垂らしたまま、眼光鋭く睨め付けつつそう笑う
「
そして、
心底楽しそうにそう笑うルリさんの言葉に、ちょっと引っかかった。
ん? それってつまり……
「私、
私がそう零すと、
それにより、それが事実なのだと認識する。
その瞬間、心臓が何かに鷲掴みにされたかのような、痛みと勘違いしそうなほど大きく脈動したのを感じた。
ボケツッコミしてて、なんかつい気を許してしまっていたけれど……
この三人も──やっぱり味方ではないんだ。
ルリさんの言う通り、ホントに馬鹿だな、私。
そうだよ。さっき出会った人達が、私を理由なく守るワケないじゃないか。
この三人は、私を守っているワケではないんだ。
私があの人から預かった能力、この日本刀・
私が死んだら
逆に言えば、私が死ななきゃそれでいいんだ。
私個人の事なんて、なんとも思ってない。
私には犯人を
私にも言う必要はないとでも思ってたのか。
そうなのだろう。
──そうか。
だからあの時、あの人は謝ってたのか。
『こんな目に遭わせしまい……すまない』
その時は、私がその場に居合わせて巻き込まれてしまった事を言ってるのだと思った。
でも違う。
あれは、能力を預ける事によって、これから散々危険な目に遭うであろう事を謝っていたんだ。
あの人は、あの後負うであろう私の苦労の事を憂いてたのか……
自分の死に際だったというのに──
それだというのに、この場にいるヤツらといえば……
かたや他人を巻き込んでも『運が悪かっただけ』とか言い放ち、かたや他人を囮にしてる事を黙ってるとか。
そして
そんな事にも気づかない馬鹿とか。
「あー。無駄に歳だけ食ったなー。ホントに馬鹿だよねー。ごめんごめん、忘れてた忘れてたー。
そうだよねー。他人が自分に無料奉仕してくれるワケないじゃんねー。
会社は社員の生活を守ってはくれないしー。
無料会員登録は個人情報目当てだしー?
確かに奉仕精神に溢れた人もいるよー? でも友達でもない人に何かしてくれる人なんてそうそういないよねー?
ホント、何回同じ目に遭えば懲りるのかね? 馬鹿みたい」
半ば自暴自棄めにそんな言葉を吐き捨てた。
私の正面にいる黒レース女・
周りを目だけで見渡せば、ルリさんも
「どうすればいい? こうすればいい? 何が正しいの? とか……聞いて良いのは可愛げのある年齢までだったね。
助けてよ、守ってよなんて甘えていいのは……子供だけだよね。
そうだよ。私はもう
降りかかる火の粉は……自力で振り払わないとね」
自然と口角が上がる。
なんだかとっても笑えてきた。
でも多分。目は
だって、ちっとも楽しくない。
「汚ねェ手でいつまでも私に触ってんじゃねェよッ!!」
全力でそう叫び、私は右足の膝をお腹の位置まで持ち上げる。
そして、某刑事ドラマで知った知識をもとに、全力で筋肉ダルマ・
「がァッ!!」
私の身体を抱えていた
その隙を逃さず
「うらァ!!」
そして、思いっきり女の頭にヘッドバッドを食らわせた。
ゴンっという鈍い音と共に、自分の目にも火花が飛んだけど気にしない。
私はよろめく二人からすかさず離れた。
すぐ側にボーゼンと立つ
「あっ……」
「心配しなくても、この能力は後継者以外には渡さないわよ」
そう吐き捨て、私は路地を走って抜け出した。
振り返らなかった。
兎に角走って、誰もいない場所へと行きたかった。
駅前を抜けて、住宅街の方へとがむしゃらに走る。
そのうち、私の左腕に再びあの猛烈な痛みが復活した。
どんなに逃げても、コレからは逃げられないんだ。
そう。逃げられない。
逃げるべきじゃない。
だって、あの人と約束したから──
でも今は。
こんな惨めな顔を、誰にも見せたくなかった。
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